ゆ き と の 書 斎

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レビュー(映画)

2007年07月26日
『怪談新耳袋絶叫編 左 黒い男たち』

絶叫編・その二。
こちらは「牛おんな」に比べシナリオで勝負している分、観ることが出来た。

「黒い男たち」は原作では新耳第4夜の同タイトルの話がベースになっている。
「黒い男たち」といっても黒人のことではなく、「メン・イン・ザ・ブラック」略してMIBと呼ばれる、UFO目撃者を脅迫したりして事件の隠蔽をはかろうと暗躍する謎の黒服の男たちのことだ。
(コメディSF映画にもなったので名前だけは有名だと思う。)

ある日、女性主人公の元に差出人不明の封筒が届けられる。
封筒には小学生時代、故郷の山の頂上で友達と二人で撮った写真が入っていた。
そして写真の裏には肉筆で「たすけて」と記されていた。
記憶をひも解き、友達の消息を尋ね歩いていくうち、不気味な「黒い男たち」の影がちらつきはじめる。
バイト先のコーヒーショップの常連客のオカルトおたく連中の助けも借り、記憶の中の真相に肉薄しようとする主人公だったが…。

オリジナルのMIBは黒いスーツに黒いネクタイ、黒い帽子に黒いサングラス、黒い50年代のキャデラックに乗って現れるらしいが、ドラマの「黒い男たち」は帽子やサングラスはしていない。
そのため単に葬式帰りの「喪服の男たち」に見えてしまうのは愛嬌。
現代日本では黒い帽子にサングラスはあまりに滑稽に見えてしまうため、演出的に外したと思われる。

原作にあった、「UFOを偶然撮影したために行方不明になってしまう少年の話」がドラマ中でオカルトおたくの口から語られる。
いわゆる「神隠し」ものであり、神隠しに会わずに生き残ってしまった主人公の葛藤と和解が裏のテーマとして語られる。

MIB伝説発祥の地・アメリカでは脅迫・事故に見せかけた暗殺など政府陰謀説と結びつきやすいMIBが、日本では子供を神隠しする異界の存在になるということが興味深い。
昔だったら天狗の役割だ。
天狗も山のものであり、空を飛ぶというUFOとの類似性があるところを見ると、「黒い男たち」は天狗の現代的に零落した姿なのだろうか。