ゆ き と の 書 斎

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レビュー(映画)

2003年10月26日
「KILL BILL vol.1」

 
「KILL BILL vol.1」、観てきました。
 
まぁいろいろと見どころ&ツッコミどころの多い映画です。
冒頭の出だしからキッチンファイトの流れは鮮やかでしびれる。
途中挿入されるプロダクションI.G製作によるアニメーションも良かった。
クライマックスのヤクザ100人との死闘も「俺もこのぐらいぶった斬って大流血するシーン描きてぇなぁ。でもサイボーグは血が出ないからつまらん」とか思って観ました。
隣のカップルは気持ち悪くなったらしくて席立ってたな。
(-▽-)ケケっ
全体にわざと70年代風のセンスやチープなつくりをしていて、シリアスかと思えばギャグ、ギャクかと思えばシリアスと(いやもしかすると全編ギャグなのか?)、と文法的には昔の劇画を観ているみたい。
 
しかぁし!それらをすべてのみこんだ上でど~しても気に入らないところが一点!
それは「日本刀を鍛冶するシーン」がないこと!
「刀を打つには一ヵ月かかる」とかいうセリフの後「一ヵ月後」とかテロップが出てきてもう完成した刀を渡してしまう。工業製品じゃないっつーの。
「これはわしの最高傑作…」などと言ってもぜんぜん説得力ない。
この刀はクライマックスのオーレン・イシイとの決闘の時に重要なキーアイテムとなるだけに、いっそう鍛冶のシーンがないのは解せない。
編集でカットされたのかもしれないが、服部半蔵演ずる千葉真一と寿司屋で働く男演ずる大場健二の寒いかけあいは無意味に長く出てくるのに、まったく理解できないっす。
 
昔観たショウ・コスギのニンジャ映画(タイトルは忘れた)では、冒頭で妻子を殺され、復讐を誓ったショウ・コスギはタイトルバックでひたすら刀を打つ。
赤く熱した鋼を打ち、水に入れて焼き入れし、研ぎ、完成した復讐の剣にタイトルがオーバーラップする。
この間セリフはひとつもないが、実に雄弁に復讐の思いを語ってます。これ!これっすよぉ~!!
タランティーノは日本の心をわかってねぇ!
 
よってKILL BILL vol.1の僕の採点。
基本点+50点、冒頭の演出+10点、挿入アニメーション+50点、鍛冶シーンがない-90点
合計20点。
つーところですな。
ただまだ前編なので、評価は暫定的なものです。ちゃんと後編も観るつもりです。
 
しかしたいがいの映画を楽しんでしまう僕なのに、KILL BILLではやけに細かいところにこだわっているのはなぜなのか。
それはたぶん、KILL BILLが僕の「一足一刀の間合い」に入ってきてしまったからでしょう。
僕には「漫画家としての必殺の間合い」「SFの描き手としての必殺の間合い」「日本人としての必殺の間合い」があり、それぞれの間合いの外にあるものに対しては寛容なのですが、いざ間合いに踏み込んだ瞬間、バッサリ斬らずにはいられない習性を持ってます。
(^-^;)
KILL BILLの場合、文法が劇画っぽいためと日本文化をモチーフにしたために「漫画家としての必殺の間合い」「日本人としての必殺の間合い」の両方に踏み込んだみたいです。