ゆ き と の 書 斎

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レビュー(映画)

2003年03月24日
「妖婆 死棺の呪い」「バッド・テイスト」「ジェイソンX」他

 
*以下ネタばれあり*
 
・「妖婆 死棺の呪い」1967年 ロシア映画
 
ロシア民話から題材を取ったN・ゴーゴリ原作の映画化。
DVDの予約までして手に入れた期待の1本だったんだけど、ちょっと期待外れ。
笑わせようとしているのか、怖がらせようとしているのか、演出意図がよく分からない。
ロシア革命以前の田舎が舞台なのを強調しているのか、とにかく家畜が多い。教会の中以外のシーンにはすべて、牛さん馬さんヤギさん鶏さんガチョウさん犬さんのいずれかが映りこみ、しかも家畜の顔のアップも人間のアップの場面の3分の1ぐらいある。
少し緊張感のあるシーンでも、いきなり咀嚼する牛さんの顔のアップが映し出されるとほのぼのと和んでしまう。それともこれはロシア人には恐い演出なのだろうか?
クライマックスの、妖怪がわらわら湧いてきて神学生を襲うシーンはなかなかすばらしい。ここだけ見たら子供が夢にうなされそうな出来映え。
 

・「ハロウィン」1978年 アメリカ映画
 
J・カーペンター監督。「13金」等のスラッシュ・ムービーの先駆けとなった作品。
スプラッター物の古典だが、未だ見たことがなかったので1~3作セットのDVDボックスで購入した。
つまんなかった。(-_-)
考古学的な価値はあると思う。
あと2と3を見なきゃ。
 

・「バッド・テイスト」1987年 ニュージーランド映画
 
P・ジャクソン監督がアマチュア時代に4年かけて作った自主制作映画。
この作品のことは銃夢の連載はじめる前から知っていて、「いつか見なきゃな~」とか思っているうちにはや10数年。ジャクソン監督はいつの間にか「ロード・オブ・ザ・リング」を撮るほどの大監督に成長。
「今さら」という感じがして心苦しいが、「バッド・テイスト」見ました。
すばらしい!!グロ・莫迦・ユーモアの花ざかり。
ラスト、「鋼鉄スピン攻撃!!」チェンソーでエイリアンのボスの脳天にダイブ、ケツから出てくる徹底ぶりに感動。
 
自主制作映画ということで、多少の絵づくりの雑さを覚悟していたんですが、カメラワークやショットの切り替えも堂に入ったもの。
特典のメイキングを見てさらに口があんぐり。
劇中に出てきた銃器類はすべて鉄パイプや紙粘土で作った手作り。全然気付かなかった。
クレーンはもとより、ステディカム(カメラをカメラマンの腰にハーネスとバネで固定して、走りながら撮影しても手ぶれが起きないようにする装置)まで手作り!
 
もっと早くに見ていれば銃夢のスプラッター描写も影響受けただろう。見るのが遅すぎたなぁ~。(後悔)
 

・「ブレインデッド」1992年 ニュージーランド映画
 
同じくP・ジャクソン監督によるメジャー作品。
これもまたすばらし~作品。深刻さのかけらもないグロ・ユーモアは健在。
ゾンビ化した不良グループに遭遇した神父さん、少しも動揺することなく「神に代わって成敗する!」「私の蹴りを受けてみろ!」と叫んで襲いかかり、見事な蹴りの連打でゾンビの体をバラバラにしてしまうし(その後、神父さんもあえなくゾンビの仲間入りしてしまうのですが)。
チャプターや解説には「クンフー神父」と書かれてますが、僕が見たところ中国拳法ではなく、西洋人の格闘家がよく使う、カラテやテコンドー風味のマーシャルアーツのようです(代表的なところでチャック・ノリス)。
伝説的に語られているラストのゾンビ50人斬りは噂に違わぬ徹底ぶり。もーやるところまでやったという感じ。
それでいて、よくあるゾンビものと違ってラストはハッピーエンドなので、後味良いです。
 

・「ジェイソンX」2002年 アメリカ映画
 
「13日の金曜日」シリーズ第10作。
僕は「13金」シリーズは全部見ている(と思う)のですが、はっきり言って好きなシリーズではなかった。同時期のポップ・スプラッターとしては「エルム街の悪夢」シリーズの方がひねりがあって好きでした。
さて、「ジェイソンX」。過度な期待をしないで見たので逆に楽しめました。
いかにも「低予算映画~」という感じだった以前までのシリーズとは違い、SFXや宇宙船のセット等もかなりちゃんとしています(逆に「こんなきれいな映像は13金じゃねえ~」と言う反応もあるかも)。
特に美術のデザインは個性的でなかなかいい。銃なども現用銃の使い回しでなく、ちゃんとデザインされているのも○。
 
2455年の宇宙船内で冷凍保存から復活したジェイソンは、予定調和のごとく乗員を殺しまくる。(このへんは「エイリアン」ぽい。脳天気な演出によるエイリアン)
しかし戦闘仕様に改造された女アンドロイドの反撃に会い、手足頭をふっ飛ばされて死亡。ところが死亡場所が手術室だったため、誤動作したナノマシン肉体再生装置により、「メカジェイソン」として復活。
弾丸を跳ね返し、真空をものともしないメカジェイソンに女アンドロイドもやられ、生き残りのクルーも追いつめられていく。
ラスト、宇宙服の軍曹が廬山亢龍覇(by聖闘士星矢)のごとくジェイソンを羽交い締めにして大気圏突入!それを地上から「きれいな流れ星ね」などと言って見つめるカップル……。
 
冒頭の研究所のシーンで、政府高官役でD・クローネンバーグが出演しているのもその手のファンには見物。しっかりジェイソンに串刺しにされます。(しかしクローネンバーグも年とったなぁ~。最初分からなかったよ)
「メカジェイソン」はかっこいいので、ぜひともロボコップかターミネーターかプレデターと対決してほしいです。
 

「火を噴く惑星」1961年 ロシア映画
 
総天然色・大空想科学映画。
今回最大の掘り出し物。全然知らない映画だったのですが、店頭で発見、即購入。
 
前人未到の金星にソ連の科学探検隊がおもむき、数々の困難や脅威を乗り越え、帰還するまでの物語。
金星の厚い雲の下には肉食植物や恐竜が闊歩するとんでもない世界が広がる。海底には知的生物が残したものらしき彫刻も見つかる。
しかしあくまで描写は大まじめ。小型恐竜や翼竜とのちょっとした銃撃戦はあるものの、ハリウッド的なアクションはほとんどなし。劇中の宇宙飛行士達は高度に進化した知的生命が惑星を渡り、宇宙に生命の種子を広げていく仮説の議論に熱中する。
これがかえって新鮮。
ロボットや宇宙服、エアカー等のデザインや造りは、クラシックながらすばらしくよくできています。とくにロボット・ジョンの足の関節の造りと動きには感動!
溶岩流の中にのみこまれていくジョンの最後には、設計者の博士とともに涙。
アメリカの「禁断の惑星」と並び立つ、古典SF映画の名作といえるでしょう。