クロムエクセル・ヒップバッグ of 茶房・風雲庵

レザークラフト作品ギャラリー

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このコーナーでは管理人が手作りした革小物を公開しています。

#0047 クロムエクセル・ヒップバッグ


01.jpg2018.10.08今をさかのぼること9年前の2009年。初の大型バイク、ハーレー・ダイナファットボブの納車と同時に購入したウエストバッグを今までずっと愛用してきたのだが、ついにファスナーの布部分に穴が開いてバリバリに破れてしまい、閉めることができなくなってしまった。バイク用アパレルメーカーのデグナー社製『ヒップバッグ W-27-BR』というバッグで、長財布と携帯電話、メガネなどを入れておくのにちょうど良い、小ぶりで実に使いやすい革のウエストバッグだった。

デザインもかっこいいし素晴らしいバッグだったのだが、私にはひとつ悩みどころがあった。私のレザークラフト趣味を知っている人がこのバッグを見て「このバッグも自分で作ったの!?」と訊いてくることである。

この度重なる屈辱の経験(相手に悪気はまったくないけど)から、いずれウエストバッグを自作せねばなるまいと考えていた。しかしデグナーのバッグの使い勝手が良すぎて、自作する機会がなかなかやってこない。そうこうするうちに9年が経ち、ついにファスナー部分が破れてしまったので、いよいよ新しいウエストバッグの自作に乗り出したのだった。

00.jpgデグナーのヒップバッグW-27-BR
当初、使う素材は単純にオイルレザーにしようと考えていたが、昨年購入したスローウエアライオンの『プレーンMIDブーツ』の素材である「クロムエクセル」が非常に気に入ったので、この革を使ってバッグを作ることに決定。

クロムエクセル」はアメリカ・ホーウィン社が100年前から作っているコンビなめし(クロムなめしとタンニンなめしを両方行うなめし方)のオイルレザーで、普通のオイルレザーより含まれた油分が多く、重くどっしりとしていて、さわると手に吸い付くようなシットリ感。厚みがあっても柔らかく、引っ張るとその部分の色が変わる(プルアップ)という特徴がある。また表面がしっとりしていて柔らかいので非常にキズつきやすい反面、油分が多いのでブラシや布でこするだけでキズが消えるという特性も。とにかく表面が繊細でキズつきやすい革なので、細かいキズは気にせずワイルドに使うのに向いている革だ。

さて新しいウエストバッグは、ファスナーを使わないシンプルデザインで作ることに。構造は単純に、バイクに取り付けるサドルバッグのようなカブセ式のデザインとした。カブセの留め具はベルト式のように見えて、手元のホックでワンタッチで開くようにする。ここのホックは「ドイツホック」という特殊なものを使うつもりだったが、諸事情により同じ構造のワンタッチホック「ユーロホック」を使うことにした。いずれにせよいちいちベルトを外すことなく、カブセの開閉ができる。金具類は真鍮パーツを使用。バッグに対して水平にベルトがついていること以外は、ごくオーソドックスな造りで薄マチのスリムなバッグになっている。今回、胴体部分のパイピングには、ワイルドさを出すため切りっぱなしの厚い革をそのまま挟み込んだ。

完成したバッグは、デグナーのものとほぼ同じ大きさということもあり、すぐ体になじむバッグとなった。やはり素材に使ったクロムエクセルは正解で、革を張り合わせた部分は厚さ8mmに達するものの、柔らかく体にフィットする。今後バリバリ使い込んで、クロムエクセルの特性を見てゆきたい。

02.jpg厚さ4mmのベルトパーツ。断面をミツロウで仕上げ、バックルを装着03.jpgカブセと前胴、カブセ留めのベルトパーツ。留め具にユーロホックを使用04.jpgベルトをつなぐ根革と胴体の左右マチ・底マチ。このパーツの厚みは2mm05.jpg内縫いで前胴を縫ってから、ひっくり返す。マチのヘリは薄くすいてある
06.jpg前胴とカブセまで縫ったところ。このあと周囲を縫えばほとんど完成07.jpg周囲を縫い、コバ(革の断面)に溶かしたミツロウを塗って仕上げる08.jpg本体が完成。胴体のパイピングには、3mmの切りっぱなし革を使っている09.jpg右の根革にDカンを取り付ける。このあと根革にベルト金具を通して留める
10.jpgカブセを開いたところ。中はポケットがひとつだけで、本体は非常にスリム11.jpgカブセはベルト留めのように見えるが、丸いホックを引っ張るだけで開く12.jpg本体の裏面はスッキリとしてシンプル。ポケットを付けても良かったかも13.jpg財布を入れる目的のバッグなので、本体のマチはごくごく薄め。スリムな作り

本 体・ベルト  …… クロムエクセル(ブラウン) 2mm、3.5mm、4mm
ユーロホック、真鍮バックル、Dカン、だ円カン、カシメ、ハトメ、ビニモ0番・5番