ハーフムーンバッグ of 茶房・風雲庵

レザークラフト作品ギャラリー

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このコーナーでは管理人が手作りした革小物を公開しています。

#0037 ハーフムーンバッグ


012.jpg2013.6.28

母の日」プレゼントとして(遅過ぎだが)母親用に製作。前回のオヤジ用バングルウォッチ完成直後から始めて、6月28日にやっと完成。完成まで3ヶ月ぐらいかかっているが、実際は4月の仕事がキツ過ぎて、オフにはほとんど作業が進まなかったという事情がある。実質的な作業時間は2週間ちょいといったところ。

以前作った羊革スウェードショルダーボックス型だったので、次に作るバッグは丸っこい形にしようと決めていた。しかし実は、昨年末に作っていたクロコ型押しバッグがまさかの大失敗。精神的ダメージを負うも、2月にはうちの先生のドクターマスク、3月にはオヤジ用バングルウオッチを作っていたため、リベンジできないまま半年も経ってしまったのだった。

014.jpg比較的大きめな三日月型ショルダーバッグ
今回は以前の失敗の反省点を踏まえ、薄くソフトな革をチョイス。メインの胴体部分はペイズリー柄に型押しされた(なんか型押しばっかり…)ゴート(ヤギ)革。柄に加えアンティークなモスグリーン色に一目ぼれして購入。しかしゴート革は小さくてバッグひとつは作れないので、マチ部分にはコゲ茶のバングラキップ(コブ牛)を選択。コゲ茶はいろんな色に合うベンリな色なのでついついチョイスしてしまうが(ファスナーなどの副資材もコゲ茶なら入手しやすく、合わせやすい)、モスグリーン×コゲ茶はちょっと見た目が地味過ぎたか。もう少し明るい色の組み合わせができるようになりたい。

肩がけベルトは市販のナイロン製で、カジュアル感と同時に軽量化を図った。完成したバッグは幅35cm×高18cm×厚11cmの大きさでベルト込み446gという軽さに仕上がったので、この点には大満足。それと今回の初チャレンジはファスナー引き手のふさふさなタッセル。ファスナーの引き手というのは意外なクセモノで、(目につく部分なので)デザイン性と(力がかかるので)丈夫さを兼ね備えてなければならない。今回作ったタッセルはガッツリと大きめに作ったので、今まで作った引き手の中ではもっとも丈夫だと思う。

015.jpg中は明るめのタータンチェック柄。ミシン縫いに四苦八苦した
バッグの内張りはTRタータンという厚地のタータンチェック生地を使った。ちなみにタータンチェックというのはスコットランドのハイランダー(ハイランド人)が使っていた柄だそうで、さらにペイズリー柄は古代インドやペルシャが発祥のデザインだが、後にスコットランドで生産される織物に使われるようになったとのこと。まったくの偶然だが、今回のバッグはスコットランドがテーマとなっていた。

中のポケットは普通のとファスナーポケットのふたつ。内装はすべてミシン縫いだが、慣れてないこともあって手縫いよりはるかに神経を使うこととなった。チェック柄というのは、縫い目が曲がったりナナメだったりするとひと目でバレてしまうので気が抜けない。初心者には厳しい材料だったが、なんとかがんばって縫いあげた。ファスナーをミシンで縫ったのも初めて。たまにしかミシンを使わないので、なかなかコツを覚えられない。


01.jpg最新型・手動革漉き機「シャーフィックス」のハードケース
さて今回製作に導入し大活躍した新兵器が、この手動革漉き機「シャーフィックス」である。

レザークラフト愛好者の最大の難問といえるのが、革を薄く削る「革漉き」というテクニック。革の端っこなら革包丁を使って手作業でできるのだが、革全体を一定の薄さにする「ベタ漉き」はまずムリ。プロは電動の革漉き機というのを使うのだが、これは機械も大きいし値段は軽く10万円以上してしまう。アマチュアは業者に頼んで有料で漉いてもらうのが一般的だが、それも手間や費用がバカにならない。

02.jpgセット内容は本体、替刃、漉き幅ローラー4種、レンチ、説明書など
この問題には私も頭を悩ませていたのだが、1年ほど前、スウェーデン製(現在はドイツ製)のこの手動革漉き機のことを知って目をつけていた。それでも価格が4万円ほどするので様子見していたのだが、便利そうなので4月についに購入に踏み切った。

写真で見た感じでは万力のように重くて、1度設置したら2度と動かさないようなモノかと思っていたのだが、実物はすこぶる軽い。アルミ合金製なのか非常に軽く、またタテヨコ20cmないほど小さく、設置も取り外しもラクラク。セット内容に半分漉いた革があらかじめ入っていて、使い方も複雑そうに見えてごくごく簡単。漉きたい幅のローラーをセットし、厚みと角度をネジで調節すればOK。ローラーと刃ではさんだ革を、手で引っ張ることで薄く削るという仕組みである。

03.jpg半分漉いた革があらかじめセットされている粋な演出
基本的には革のヘリをななめ漉きするためのものだが、一定の厚みにベタ漉きできるのもミソ。本体が小さいためあまり幅広なベタ漉きは無理だが、10cm幅くらいなら可能だ。しかもあっという間!革包丁ではきれいなベタ漉きがまず無理だし、ヘリ漉きも時間がかかるし手が痛くなるしで大変なので、この手動革漉き機の手軽さはちょっと感動モノだ。意味もなく革漉きしたくなる(笑)。

気になったマイナス点としては、革を引っ張るので2cmほどつまむ部分が必要、どうしても革が伸びる、幅の広いベタ漉きでは革が波打って切れてしまうことがある、など。あとはサドルレザーのような堅い革では歯が立たない、やはり刃の切れ味がすぐ悪くなる…などがあるが、マイナス点を考慮した上で使えば実用性は充分だ。

「シャーフィックス」日本語版サイトによると、この手動革漉き機は第二次大戦後に製本用革漉き機として誕生し、当時からニッチな職人用工具として細々と作られていたらしい。現在の日本でも、こんな職人工具を手に入れられるのはありがたいことだ。

本 体  …… ペイズリー型押しゴート 1.0mm バングラキップ 1.2mm
裏 地  …… TRタータン 綿ブロード
ナイロンベルト30mm ラミー糸(細) スライサー薄 布ワッペン アイロン接着芯
Dカン 角カン ナスカン 線コキ カシメ 金属ファスナー ナイロンファスナー

000.jpgペイズリー柄にアンティークなモスグリーンのゴート革。重厚な雰囲気001.jpgナイロンベルト。金具留めの部分はミシン縫いだが、正確に縫うのにひと苦労002.jpgバングラキップのマチ、底マチやパイピングのパーツ。革漉き機が大活躍003.jpg肩がけベルトの根革パーツ。革漉き機を使って1mm以下にベタ漉きしたもの
004.jpg内張り胴部分にポケットを縫いつける。曲がらないように縫うのに神経を使う005.jpg内張りを袋状に縫い上げたところ。シワにならないよう縫うが難しい006.jpgバッグの胴にパイピングを貼りつけたところ。ダーツ(下の切れ目)も入れてみた007.jpgバングラキップのマチを胴パーツに中表に貼りつけたら、周囲をぐるりと縫う
008.jpg外袋に中袋を入れるのを「落とし」というが、底が上がらないよう角を縫っておく009.jpg外袋を表裏ひっくり返し、胴体が完成。口にファスナーを貼って縫い上げる010.jpgファスナー引き手のタッセル。革漉き機で薄くした革に5mm幅の切れ込みを入れる013.jpgタッセルをファスナーに取り付け、ベルトの根革をカシメで留めたらバッグ完成