トートバッグ of 茶房・風雲庵

レザークラフト作品ギャラリー

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このコーナーでは管理人が手作りした革小物を公開しています。

#0041 トートバッグ


title02.jpg2016.01.09知人のAさん夫妻へのお礼として、夫婦で使えるトートバッグを制作。2015年9月からデザインを考え始め、10月から制作を開始、年を越した2016年1月初めに完成。なんと実質的に制作に約1ヶ月もかけた、ひさびさの大作となった。

レトルトカレーやら鯨のジャーキーやら、去年1年はAさん夫妻にたくさんいろんななものをいただいた。さすがにいただいてばかりで申し訳ないと思い、ここはひとつ実用的な革バッグを作ってお返しに贈ろうと思ったのが昨年の夏。「実用的なバッグ」で、夫婦で使える「ユニセックスデザイン」という線で考えると、数あるバッグの中でもトートバッグが一番よかろうという結論に至った。

今まで私はトートバッグというものを使ったことがなかったので、どういうシーンで使うのか今ひとつピンと来ないのだが、バケツ型の胴体にハンドルをつけただけのシンプルなトートバッグは作るのも簡単だろうと少し甘く考えていた。

まずはデザインの参考にといろいろなトートバッグをネットで調べていると、ファイブウッズという日本のブランドの「アンティークビジネスバッグ」というのを見つけた。このバッグは内張りが2重構造になっていて、メインの荷室の前後に薄手の雑誌などを入れられるユニークな作りになっている。外観はビジネスマン向けに重厚でガチガチなバッグだが、内張りの2重構造や折りたたみ式のハンドルなど、デザインの根本部分はこのバッグを参考にすることにした。外見がシンプルなトートバッグだけに、中の構造が複雑になっているのがよいと考えて2重構造に決めたが、そのせいで制作行程が大幅に複雑になってしまうことに。(T_T)

021.jpg内袋が2重構造になっていて、荷物は中央に、薄手の雑誌などは両脇に入れられるデザインを決めたあとは、素材の選定。普段はなかなか使えない高級な革にしようと思い、イタリア・ブリターニャ社のタンニンなめし革「アリゾナ」のキャメル色をチョイス。「アリゾナ」と言われるとアメリカっぽいが、立派なイタリアンレザー。自然なシボとしっとりとした手触り、柔らかくもコシがあって使いやすさはピカイチ。軽く磨くだけでコバもツルッツルに。私が今まで使った革の中でも、もっとも使いやすく素性のいい革だ。

そして内張りの布地には一般的な綿ブロード、金具類は真鍮製のものに統一して高級感を演出。……ところが真鍮製の金具(カシメやカン類)はたくさん売ってるのに、真鍮製の底鋲(バッグの底につける足)があまり売ってないのが意外だった。今回は輸入雑貨屋さんにて購入。

001.jpgイタリアの高級ヌメ革「アリゾナ」はしっとりとした吸い付くような手触りが魅力025.jpg今回アマゾンで見つけて試しに買ってみた、カバン屋さんのコーナーカッター003.jpg芯材のバイリーンの角をカット。今回はこれだけだがなかなか使えそう004.jpg不覚にも何度も失敗して、革をムダにしてしまった折りたたみ式のハンドル
005.jpg分割してある底パーツ。底鋲をつけるための穴をあらかじめ開けてある006.jpgハンドルや肩ベルト用の根革。数があるので、これらを準備するのも大変007.jpg内袋の見付パーツにファスナーポケットを縫いつける。大ぶりで実用的に010.jpgファスナーポケットの反対側に、鍵を引っ掛けるためのDカンをつける
008.jpg内袋の中の内ポケット。革の縁取り、マチ付きとマチなしの2ポケット仕立て009.jpgメイン荷室のファスナー口。YKKの高級ファスナー「エクセラ」を使用002.jpg毎度レザークラフター泣かせの最難関、革スキ作業。これが難しくて大変011.jpg革スキを終えたパーツ。革の床面(裏)のヘリを半分くらいの厚みに削る

024.jpg革の風合いを存分に味わえる、シンプルな薄手のタテ型トートさていよいよ制作開始。パーツを型紙通りに切り出し、コバを磨いてヘリをすいて、細かいパーツを先に作り上げる。そして内張り用の布を切ってアイロン芯を張り付け、ミシンで縫う……と説明すれば簡単だが、今回は内袋の構造が複雑でミシン縫いする箇所が多く、ミシン慣れしていない私にはこれが大変。内袋の中につけるオープンポケットは今回マチ付きとマチなしの2ポケット、さらにふちを革で巻いたりしたのでさらに手間がかかった。

しかも手間がかかったのに加え、ハンドルやファスナーの仕立てでアホな失敗をしてしまい、作り直してかなり時間と革をムダにしてしまったのは痛かった。(>_< ; 内袋を完成させたら革の胴体を作り、口の部分で縫い合わせれば本体は出来上がり。肩ベルトも作ってすべて完成。

本体部分の大きさは高さ34.5cm × 幅32cm × 奥10cmとトートバッグとしては標準的。重さは1kg超のかなり重いバッグになったが、うまく重量が分散しているのか、持つとそれほど重たい感じはしない。ただバカ正直に内張りの布すべてにアイロン芯をつけてしまったので、それだけでも数100g増になってしまったかも。その点は今後の改善ポイントである。

それにしても、イタリアンレザー「アリゾナ」のしっとりとした手触りと作りやすさはホレボレする。今後も(予算が許せば)積極的に使っていきたい。

012.jpg胴体に折りたたみ式のハンドルと、ギボシ留めベルトの根革を取り付ける013.jpgハンドルの裏側は、芯材のバイリーンを一緒に縫いつけることで強化する014.jpg完成した内袋。2重構造の凝った内袋にしたので、かなりの手間がかかった016.jpg完成したバッグ本体。ミシン縫いの内袋と違い、ここはすべて手縫い仕上げ
017.jpg内袋を入れてない状態のバッグ本体の中。黒い底板は底鋲のネジで留めてある018.jpgクラフト社から発売されたユニークなアイテム、革に刻印できる樹脂製シート019.jpg革に打つとこんな感じ。シートが半透明なので、位置合わせがしやすいのが特徴022.jpg刻印した革のタグを見付に縫いつけ、本体と内袋を縫い合わせて完成させる
020.jpg綿ブロード製の内袋は、革のキャメル色を引き立てるモスグリーン色021.jpgファスナーポケットの中もモスグリーン。バッグの容量は約9.2リットル023.jpg完成した肩ベルト。色は、ファスナーのテープの色と合わせて茶色をチョイスtitle.jpg完成したバッグ。外観は非常にシンプルなので、革本来の質感が楽しめる

本 体  …… イタリア牛ヌメ革・アリゾナ 1.7mm 1.2mm
裏 地  …… 綿ブロード
布ワッペン アイロン接着芯 エスコードラミー生成 20/3 ビニモ1番(143) アクリルバンド 厚さ2mm 幅30mm
ファスナーYKKエクセラ5号 ファスナー3号 バイリーン 0.6mm ベルポーレン 2mm カシメ 底鋲 Dカン 角カン コキカン ナスカン