ミニボストン・クロコスペシャル of 茶房・風雲庵

レザークラフト作品ギャラリー

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このコーナーでは管理人が手作りした革小物を公開しています。

#0026 ミニボストン・クロコスペシャル


00.jpg2011.09.20
私によく怪談話を提供してくれる知人女性(怪トモ?)が結婚したと言うので、それではぜひお祝いの品を贈らねば!と気合いを入れて作り上げたボストン型ハンドバッグ。8月末から作り始めて9月18日に出来上がったので、実質20日も制作に費やした久々の大作。

今回、どんなバッグを作ろうかと考えた時まっさきに「ワニ革にしよう!」と思ったのだが、本物のワニ革は値段が超高いし、爬虫類革を仕立てる技量がない私にはいくらなんでも無謀すぎる。そこで無難にワニ革を模した型押し牛革を使うことにした。色はワニ革というとジジ臭い地味な色(黒や茶)が多いので、ここは一発ドハデな赤でいきたい。

しかし全部を赤いワニ型押しだけで作るのもクドい気がするので、さんざん迷った末、茶色(赤茶)の牛革を組み合わせた赤×茶ツートンカラーに決めた。実はこの組み合わせはキーファー・ノイというブランドのバッグを参考にしている。はじめは赤×黒でいくつもりだったのだが、どう考えてもやらなくて正解だった。赤×黒なんてやったら、今ごろ呪いのバッグが誕生していたことだろう。我ながらカラーリングセンスのなさに絶望する。( ̄▽ ̄;

本体デザインの方は、口はファスナーで開け閉め、フニャフニャではなくある程度形がしっかりしていて丸っこい……と詰めていくうちに自然とちっちゃいボストンタイプに決定した。そして金具類はゴールドでそろえ、下品にならない範囲でできるだけゴージャスに。さらにもうひとつ、長さを調節してハンドバッグ←→ショルダーバッグと2wayで変えられるベルト式の持ち手。特にこの持ち手は胴体表と裏で計4つもバックルがつくことになるので、デザイン的にも重要なポイントとなる。
26.jpg写真右からシャプトン砥石(中砥、仕上げ砥)、コバインク、玉フチネン細・太

さて今回は道具類もいろいろと秘密兵器を用意した。

まず革包丁を研ぐための砥石。これまではホームセンターで買った安物のコンビ砥石を使っていたのだが、研ぐといつも刃先を押さえる中指まで削ってしまって痛い思いをしていた。研ぎ方のウマイヘタもあるだろうが、研いでもすぐに切れなくなってしまう。そこでネットで調べ、その高機能ぶりにファンまでいるという「シャプトン」という国産メーカーの『刃の黒幕』シリーズを奮発して購入。シャプトン・オレンジ(中砥 #1000)、シャプトン・エンジ(仕上げ砥 #5000)でそれぞれ3〜4千円もする高級品だが、実際研いでみると刃がスルスルと気持ちよくすべり、しかも中指が削れない!(笑)研いだ後はピカピカの鏡面仕上げ状態で、切れ味も体感で3割ぐらいアップ!包丁自体は安物なのにとてつもない切れ味。こうなると研ぐのも楽しくなって、常に革包丁の性能をフルに使えるようになった。

続いてコバインク。通常革のコバ(切断面)はヤスリ掛け染色→(ジェル状の仕上げ薬を塗って)磨きという行程を繰り返して仕上げるのだが、このコバインクは染色と仕上げを同時に行なえるベンリな一品。もともとは靴用品で、ソールのコバの色がはげてしまった時などに使うもの。今回初めて使ってみたのだが、すこぶる使い勝手がいい。ただしやはり値段がちょっと高め。

最後はやっと入手に成功した玉(たま)フチネン。捻(ネン)というのは筋を入れる道具のことで、「念を押す」という言葉はこれが由来なのだとか。玉フチネンはアルコールランプで軽く熱して使うことで、革の端に丸い膨らみと線を入れて端の装飾と強度アップを同時に行なえる道具。これがなかなか売ってなくて、ネットでようやく見つけて手に入れたというわけだ。あまりに売られていないので、真ちゅう棒などで自作してしまうレザークラフターも多い。
title.jpgワニ型押し革は今回初めて使った。ウロコのすき間で折れ曲がりやすいなど、扱いが難しい。

今回は製作に当たり、コバのていねいな仕上げと、目立ちすぎないステッチを要点とした。ステッチは今まで使っていたナイロン糸「ビニモ」の0番から、より細い5番に変更。パーツが多く縫う距離が長くなって大変だったが、仕上がりは適度な見た目に収まって満足。

夢中で作業を続けてあっという間の20日間、反省点は全体の丸いフォルムが少しゆがんでしまったことと、裏返す時にシワができてしまったことぐらい。自己採点では70点といったところか。現時点での技術力は出し切ったつもりだが、完成に近づくにつれ集中力が切れてきて手順を間違えたり(笑)する悪いクセを今後は改めなければ。

本体 …… 牛キップ・ワニ型押し 1.0mm 牛ミラノ 1.0mm/2.0mm
内張り…… 羊スウェード
芯  …… スライサー厚 布ワッペン 伸び止めテープ 牛床革 ヒモ芯・太 ナイロンコード
ビニモ5番 ファスナーYKKエクセラ5号/3号 丸バックル 底鋲 ハトメ#300 カシメ大・小  玉カシメ デザイン丸カン コーラルハートコンチョ

02.jpgデザインを決めたら、まずは型紙の製作。紙は図工で使うマス目が入った工作用紙。01.jpg牛ヌメ革の「ミラノ」に、キズ・汚れ防止のためホースオイルを塗っておく。001.jpgパーツごとに切り出した革。ワニ革は模様をよく見て切り出す必要がある。03.jpg胴パーツのワニ革の周囲を革包丁で漉く。これが1番面倒な作業。
002.jpgベルト式の持ち手。芯は太いヒモ芯を使い、握り心地とファニー感を出した。04.jpg持ち手接続部のベルト、ファスナーの引き手、外付けポケットの各パーツ。05.jpg内張りの羊スウェードに内ポケットを縫いつけたところ。地味に大変。06.jpgバッグ口部分のファスナーを縫いつける。40cm以上×4列もチマチマと縫う。
13.jpgファスナーを縫いつけたら、天マチと底マチをつなげて輪っかにする。10.jpg仕上がった前胴と後胴。前胴には外ポケット、後胴には内ポケットがつく。12.jpg下半分にだけパイピングをはさみ込む。強度プラス装飾的な意味合い。14.jpg胴とマチを中表で貼り合わせ、周囲を縫っていく。製作の最後の山場。
15.jpg縫い終えたら、気合いで表裏をひっくり返す。今までの苦労が報われる瞬間。21.jpg持ち手のベルトを本体のバックルに通し、全体の形を整えたら完成。22.jpgよく見るとややデコボコになってしまったが、とりあえず狙い通りの形に。23.jpg後ろにはポケットはついてないが、中の内ポケットはこっちについている。
24.jpg横から見ると上側が細く、底に向かって膨らんだ形になっている。16.jpg気になる重さは約740g。心配だったがなんとか実用範囲内に収まった。17.jpg重点を置いたコバ仕上げ。使ったのはコバインクのみだがバッチリ。18.jpg持ち手には太いヒモ芯を入れ、フカフカな握り心地。持つと軽く感じる。
19.jpgポケットにつけたコーラル(サンゴ)のハート型コンチョ。お祝いの気持ち。20.jpgファスナーはYKKの最高級品「エクセラ」を使ったダブルファスナー。25.jpg幅36 × 高21 × 厚13 (cm)の小ぶりなボストン型ハンドバッグに仕上がった。