コンチョキャップ of 茶房・風雲庵

レザークラフト作品ギャラリー

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このコーナーでは管理人が手作りした革小物を公開しています。

#0025 コンチョキャップ


01.jpg2011.05.06
「母の日」用のショルダーバッグの次は、立て続けに「父の日」用のレザーキャップを制作。これも予想より手間がかかって5日ほど費やし、5月6日に完成。結局ゴールデンウィークを帽子制作に費やしてしまった。orz

さて親父用のプレゼント、これがすこぶる難問である。母親はまだバッグや小物を使うから、革で何かを作るにしてもそんなに悩まずにすむ。しかしウチの親父となると、バッグはおろかマトモなサイフさえ持ち歩かない。基本的に「手ブラ人間」なのだ。

そんな親父ではあるが、革製品とまったく無縁というわけでもない。思いつくのはベルトや革靴だろう。しかし2003年にクモ膜下出血で倒れてからは、足が悪くなって革靴など履かなくなってしまったし、その上太ってしまってベルトもしなくなってしまった(笑)。こうなってくるといよいよ手詰まりだが、靴とともに親父が大好きな物に帽子がある。ずっと屋外で働いてきた親父にとって特に野球帽は必需品で、隠居した今でも出かける時には必ず帽子をかぶっている。親父用プレゼントといったらこの野球帽しかあるまい。
02.jpg帽子の後ろ半分にパンチング加工を施し、夏でもかぶれるような帽子に。
…というわけで、今回のプレゼントには帽子に決定。基本的には以前作った「羊革スウェードキャップ」と同じものだが、これから暑くなろうという時期にスウェードの帽子はマズかろう。なんとか夏用の帽子を作らねばならない。

そこで今回、衣料にも使われる「ピッグスーパーナッパ」という革を用意した。これは名前の通りブタの革なのだが、ギン面(革の表面)に細かいシワ加工がされていて、豚革の特徴である「」という3つセットの毛穴が目立たない。牛革に比べて軽くしなやかでハリもあり、トコ面(裏面)は手触りの良いベルベット状で、仕立てなくてもそのままで充分使える。しかも豚革は国内で自給できるため、すこぶる値段が安い。今回初めて使ってみたのだが、これは使わない手はない。
04.jpg前半分の内張りには、カバン用アイロン接着芯を使ってパッツンパッツンに仕上げた。
ただすべてをピッグスーパーナッパで作ってしまうのも味気ないと思い、クラウン(頭にかぶる部分)前部3分の1とブリム(つば)上面は、前回のショルダーバッグでも使った薄い牛革「ビジュ」を使うことにした。黒×茶なので色合い的にずいぶん地味だが、やはり牛革の質感、革っぽさは他のものには代えられない。といってすべて牛革だけで作ってしまうとズッシリと重くなってしまうので、豚革と合わせることで実用的な軽さに仕上げることを狙っている。

さてピッグスーパーナッパでクラウン後ろ3分の2のパーツを切り出したら、夏用の帽子にするためのパンチング加工を行なう。要するに穴をたくさん開けて網目状にするわけだが、やみくもに穴を開けても汚いだけだし、強度も考えなくてはならない。そこで、そもそもこの帽子の型はMacのイラストレーターで作ったものなので、それをフォトショップで開き、網目状のドットパターンで指定範囲を塗りつぶす。その画像をプリントアウトし、革と重ね、紙上の点に合わせてポンチでひとつひとつ穴を開けていく方法を取ることにした。手間はかかるが、この方が強度的にも確実だ。

cap01.jpgフォトショップで開いた型。解像度は350dpi、アンチエイリアスはオフにしてある。

cap02.jpgモードをグレースケールに変換、内側を新規レイヤーにして7%グレーで塗りつぶす。

cap03.jpgフィルタ→カラーハーフトーンで半径90pixel、チャンネル1を45にして適用。
cap04.jpg網目状のドットができるので、縫い代の折り返しにかかる余計な点を消しておく。05.jpgプリントアウトしたものを革に重ね合わせ、ポンチで穴を開けていく。06.jpgパンチング加工の完成。これをクラウン後ろ2/3の4枚分行なう。

03.jpg後ろの調整用ベルトは、牛革ビジュを使い、折り返してギボシで留める方式に。
それと以前から気になっていたことがひとつ。市販の野球帽のクラウン前部3分の1の裏には、ものすごく堅い芯が貼り付けてある(手元に野球帽があれば確認してもらいたい)。すごく太いナイロン糸をガーゼのように織り込んだようなもので、帽子作りのテキストにも載っていないので何なんだろうと思っていたのだが、ホームセンターで不意に見つけた「カバン用接着芯ハードタイプ」というのがそのものズバリではないか。なるほどこんなものがあったのかと感心しつつ、今回牛革部分に使ってみた。そこそこ高温のアイロンを押し当てて接着すると、押しても曲げてもパッツンパッツン。これで型くずれの心配もなくなった。

ブリムの部分にはアンティーク調カシメを8個打ってハードに仕上げてみたのだが、ブリムの裏に金具があると、かぶった時に目に付いてうるさく感じる。なので表はアンティーク色裏はツヤ消し黒にして目に付きにくくしてみた。カシメにもオスとメスがあるのでこういう混ぜ方をするとハンパが出てしまいそうだが、アンティークオス2×ツヤ消し黒メス2アンティークメス2×ツヤ消し黒オス2にして数を合わせてある。

もうひとつ今回工夫を凝らしたのが、後頭部のサイズ調整用ベルト。前に作ったスウェードキャップではギボシをたくさん使って留めるタイプ(こういうのをアメリカンアジャスターと言うらしい)にしたが、ムクの金属製ギボシだと3つも使うとやはり重たい。ということで、カンにベルトを通して折り返し、ひとつのギボシで留める方法にしてみた。他にもちっちゃいバックルやふたつのリングを使う方法などが考えられるが、実用度や見た目でどれがベストなのか見極めるのが難しい。

07.jpgつばにカシメを打ってハードなイメージに。ワンポイントにデザインコンチョ。

最後に仕上げとしてデザインコンチョをワンポイントとして装着。本当はスタッズ(鋲)なんかをバシバシ打って派手にしようかとも思ったのだが、せっかくの牛革の質感を台無しにしたくもなかったので、コンチョのワンポイントに留めた。親父ももう老人なので、あまり派手なのもキツかろう。

今回は実用度を重視して市販の帽子に近い形のものに仕上げたが、いつかは総タンニンなめし革の、金属パーツを使わない帽子なんかも作ってみたい。カウボーイハットの野球帽版みたいな…その場合は、どれだけ軽く仕上げられるかがポイントになるだろう。

本体 …… ビッグスーパーナッパ 0.5mm 牛ビジュ 1.2mm
芯  …… カバン用接着芯ハードタイプ ポリ芯 1.5mm スライサー厚
カシメ特大 ハトメ カン ギボシ デザインコンチョ
レザー用ミシン糸#20、#30