フロッグラボ of 茶房・風雲庵

木城ツトム「フロッグラボ」挑戦記
〜2002年8月14日吉日〜
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「フロッグラボ」とは、ゼリーとゴム製内臓・プラスティック製骨格を使った
疑似「カエルの解剖」キットである!アメリカ製。

●イントロダクション●

珍奇なモノを人にプレゼントする……この限りない自己満足行為は私の得意技であったのだが、最近は兄者ゆきと先生も得意としつつある。すでに「きまぐれゆきと帳」に書かれているように、今年の私の誕生日プレゼントは「スミソニアン・フロッグラボ」という珍奇と怪奇の入り交じった学習教材(?)であった。これは試さねばなるまい……怪奇に挑むのが私の使命なれば。

[1]フロッグラボ・パッケージ正面

赤・青・黄・緑のケバケバしい配色おどろおどろしいイラスト。トップに「SMITHSONIAN(スミソニアン)」の大文字がまぶしく光るも「学習教材」などといった趣は微塵も感じられない、実に素晴らしいパッケージである(笑)。
最初スミソニアン博物館の企画による製品なのかと思ってしまったが、実際は米NSI(ナチュラル・サイエンス・インダストリーズ)というおもちゃメーカーによる「スミソニアン博物館・メガラボシリーズ」というもの。ちなみに値段は5200円、アメリカでは26ドル(約3200円)程度の模様。

[2]フロッグラボ・パッケージ裏面

作業工程の大まかな流れを示したイラストと、10歳前後とおぼしき男の子と女の子が楽しそうにカエルの解剖にいそしむ写真が添えられている。また「NO SHARP EDGES!」と書かれているように、このシリーズは小学生ぐらいの少年少女を対象にしているようだ。まぁ確かにこんなものが目の前にあったならば、子供たちの好奇心は釘付けである(笑)。
その下には同シリーズの他の製品の紹介がある。「アナトミーラボ(人体模型)」「クリスタル・グローイング(水晶生成キット)」「マイクロケム(化学実験セット)」などがあるのだが、傑作なのは「ジャイアント・ボルケーノ(火山噴火シミュレーション)」。これは火山の模型の中にチューブを通して手動ポンプで赤いジェルを噴出し、溶岩の流れをシミュレートするというもの(もちろん噴煙は出ない)。こんなんで勉強になるのだろうか…?(笑)

[3]パッケージ大きさ比較

銃夢LO単行本との比較。かなり大きい箱であることがわかると思う。

[4]セット内容

しかし箱の中身は全部でこれだけだ。中スカスカ。カップ大小2種、フロッグジェルパウダー、カエル型2種、厚紙パッキン3枚、撹拌用木製スティック、解説書、カスタマーサポート連絡書、カエル臓器と骨格・解剖用具パック。

[5]カエル臓器と骨格

臓器はゴム製で骨はプラスチック。このゴム臓器がプニプニベタベタしていて実に気持ち悪くイイ感触。質感には相当のこだわりが感じられる。このカエルは「食用ガエル」として日本でもおなじみの「ウシガエル(英名:North American Bullfrog)」である。

[6]カエル臓器・骨格の組み立て

いよいよ作業開始である。まず始めにカエルの臓器と骨格を組み立てる。解剖しやすいようにとの配慮からか、骨格はかなり外れやすいようになっていて組み立てがやっかいである。特にこの腕の骨が外れやすい。

[7]カエル骨格正面

意図的に作られているのか、骨格は頭やアゴが可動する(笑)。

[8]カエル臓器・骨格完成

組み上がったカエルの臓器・骨格と並べられた手術用具。格子状のパーツは、フロッグジェルを型に流し込む時の濾過に使う。

[9]カエル型に装着

組み上がった骨格をカエル型のへこみに入れ、厚紙のパッキンを設置する。骨格は表と裏を間違わないようにしないと後で悲惨なことに…。この後もう一方のカエル型を装着、頭を下にして立て、足元に開いたところからフロッグジェルを流し込む寸法である。

[10]カエル型装着完成

型に骨格を入れて装着が完成した状態。フロッグジェル注ぎ口に格子状パーツを設置する。この状態ですでにかなりシュールな雰囲気を漂わせている(笑)。解剖が目的であるはずのこのキットだが、実は「骨になったカエルをよみがえらせる」この行程の方がエキサイティングなのはなんとも皮肉な話である。気分はプチフランケン博士だ。

[11]フロッグジェル行程1

いよいよカエルに命を吹き込むかりそめの肉体、フロッグジェルの行程に取りかかる。小さいカップ2杯分のパウダーと冷たすぎない水道水を用意。しかしこの大カップ、ヨレヨレなのだが大丈夫だろうか…。

[12]フロッグジェル行程2

パウダーに13オンス(小カップ2と3/5)の水を加え、撹拌スティックでかき混ぜる。しかし予想以上に水の量が多く、大カップからあふれそうになりビビり上がる。混ぜてるうちになんとかカップ内で収まったものの、今度はカップがフニャフニャしていてかき混ぜにくい。

[13]フロッグジェル行程3

英文解説書に「パウダーは固まりやすいから気をつけろ!」「1分以内に型に注ぎ込め!」などと書いてあるのである程度は覚悟していたのだが、パウダーが片栗粉状で水となじみにくく、どうしても固まりが出来てしまうのである。丁寧に時間をかけて混ぜればいいのだが、そんな時間はない。悪戦苦闘するうちに数分が過ぎてジェルが粘っこくなってきてしまったので、あわてて型に流し込んだ。がしかし…。

[14]失敗

型に流し込んではみたものの、ジェルの粘度がかなりの堅さになってしまい、いくら注いでもカエルの太ももぐらいまでしか流れ込まない。あれこれと手を尽くしたものの、結局一回目は無念の失敗である。後には固まったジェルが大量の生ゴミとして残った。

[15]フロッグジェル流し込み成功

気を取り直して型と骨格を水で洗い、再度挑戦する。厚紙パッキンが3枚あるところを見ると、3回分は作れるセットのようだ。パウダーの量もまだ余裕がある。今度は粉を少なく水を多めにしたジェルを作り、型を組み上げる前にあらかじめ少量のジェルを片方の型に流す。そこに骨格を沈め、型を組み上げて残ったジェルを流し込むという段階的作戦に出た。いわばたい焼き製作の行程をたどった「たい焼き作戦」である。この作戦が功を奏し、型全体ににジェルを流し込むことに成功する。

ジェルの粘度はよほど低くないと、解説書のようにサラリと型に流し込むなんてことははっきり言って不可能である。どうもそういうところにアメリカ製品のおおざっぱさが出ている感じがするのだが、だからこそ創意工夫が生まれるとも言えなくもないのか。教えてくれスミソニアン

[16]カエル型取り外し

ジェルを型に流し込んでから30分が経過(解説には15分で固まると書いてある)、ジェルは見事に半ナマ状に固まった。写真はハミ出した余計なジェルを取り除いた完成状態。ところどころ気泡の穴ができてしまっているが、全体としては成功と言っていいだろう。水分を含んだジェルのプルプルヌラヌラとした感触は絶品(笑)。まさに本物のカエル並である。

[17]カエル誕生

型から出したところ。体を水平に走るモールドが「たい焼き」感を醸し出す。あまりのプルプル感に、つい口に運んでしまいそうになる(笑)。

[18]手乗りカエル

口の先から足先まで約20cm。ほぼ実物大のウシガエル相当の大きさである。また水をタップリ含んだ重量感も本物のカエル並だ。素晴らしい。

[19]解剖手術

正直言って解剖するのがもったいなかったのだが(笑)そのまま置いておくわけにもいかないので、いよいよフロッグラボのハイライト「解剖手術」に望むことに。

ところが───英文の解説書にはフロッグラボ作業行程、またカエルの歴史や内臓組織についての解説は細かく書かれているものの、「解剖のしかた」についての説明が一切ないのである。これが恐らく人生最初のオペになるであろう(私もこれが初めてだ)少年少女たちにとっては、いささか不親切であると言えまいか。というか、このキットはどうも「カエルの解剖」は二の次になっているような気がしないでもない(笑)。

[20]手術中

腕と胸の骨を取り外し、心臓を露出させたところ。プラスチックのメスでサクサク切れる感触が気持ち悪い(笑)。質感と感触は多少似ていても、当然本物のカエルはこんなんではないわけで……本当に解剖のシミュレーションになっているのかどうかイマイチ怪しいところである(笑)。

[21]解剖オペレーション

さらにアゴの骨や心臓を取り外し、ももを裂いて足の骨を露出させたところ。作り物だとわかっていてもかわいそうになってくる(笑)。

[22]オペ終了

全ての筋肉組織を取り除き、骨と臓器だけの状態に戻ったカエル。死から誕生、そしてまた死と、フロッグラボは生命の回帰を体験させてくれる(解剖が目的のはずだが)。しかし結局何が「スミソニアン博物館」なのかは最後まで謎であった(笑)。