ゆ き と の 書 斎

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作品について

2009年01月22日 「不幸」について


この前終わった金星編でもそうですが、僕の作品では繰り返し「恋人と死別する」というモチーフが描かれます。
これは僕の精神の奥深いところからの強い衝動から出てきていて、実際にそういう体験があるわけでもないのに、なぜ取り憑かれたように繰り返し同じモチーフを描くのか自分自身謎でした。
最近内省していて、有力な仮説が思いついたのでここに書き記します。

結論から言うと、この死別のモチーフは、僕の死への恐怖を表現しているのではないか…という仮説です。

幼少のころ、僕が自分の死というものを意識したとき、何がいやだといって、自分が親しんでいるものから引き離されるのがいやだった。
家族や友人、家や自分のおもちゃ、見知った近所の風景、太陽の暖かさや雨のにおい、そうしたものから引き離されると考えたとき、どうしようもない恐怖が襲った。
ぜんぜん知らない土地で迷子になってしまったときの心細さを数百倍にしたような感覚です。
歳を重ねて小賢しくなっていっても、この死への恐怖(死別の恐怖)はなにも解消しなかった。
結局の所、チキンな僕の人生は、いずれ直面するこの恐怖にどう対処するか…ということに費やしてきたような気がする。
現在、僕は自分の死そのものは怖くない…といったらたぶんウソになるけど、「そのとき」がこなければ実感がわかない。
しかし肉親が死ぬ可能性を考えると、どうしようもないほどうろたえる。
マンガのストーリーではロマンチックにするために対象が異性の恋人になったりするだけで、結局のところ死別の体験を様々なシチュエーションで追体験し、シミュレーションしているのではないか…というのが仮説の要旨です。
僕のマンガの中では、「死別」に直面したとき、ある者は雄々しく立ち直り、ある者は発狂して暴走し、ある者は最初で最後の勝負に出、ある者は強迫観念から世界を造りかえた。
さて、僕自身はどうなるのだろうか…。