ゆ き と の 書 斎

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2006年12月11日 ダーク・エンジェル情報リーク事件

けっこう昔の話になりますが。(90年代後半)

その頃、銃夢の実写映画化の契約交渉に名乗りを挙げていた二つの有力グループがありました。
ひとつは、銃夢実写映画化にもっとも早くから名乗りを挙げていたキットマン・ホーのグループ。
もうひとつが、新参となるキャメロンと20世紀フォックスのグループ。

(実写映画化したい、という申し込みだけならほかにも大量の有名・無名のプロデューサー・監督・プロダクションからの話があった。その中にはポール・アンダーソンのプロダクションからのものもあった。しかし、実際の契約を前提に交渉したのは上記二者だけ)

強力な交渉上のライバルとなるキャメロン-フォックス連合の登場に危機感を抱いたキットマン・ホーの代理人(日本人)は、ある情報をリークして僕に揺さぶりをかけてきた。

その情報とは「キャメロンは現在「ダーク・エンジェル」というTV実写ドラマ・シリーズを準備しているが、これは「銃夢」の丸パクリである」というもの。

僕の交渉代理人である電通はいろいろなルートを使って情報を収集、たしかにキャメロンが「ダーク・エンジェル」の製作準備をしている事実を突き止めた。
その上でキャメロン-フォックス陣営に「ダーク・エンジェルは銃夢の丸パクリである」という告発が事実なのかどうかを問うた。

その結果、キャメロン本人の釈明文(タイプ打ち)がFAXで届いた。
要旨は「ダーク・エンジェルは銃夢をパクっていません。私は銃夢のファンです…」というもの。

この返答に対し、業界に詳しい弁護士や電通の方々と会議を重ね、考えられる様々なケースを検討した。
結局、原作者である僕が、キャメロンのこの釈明を信じるかどうか、という一点に絞られた。

それで、僕はキャメロンの言葉を信じる事にした。

一方、キットマン・ホーの代理人のこの手口にいささか僕は頭に来ていた。
リーク情報を交渉窓口である電通ではなく、集英社-トミタさん経由で送ってきたという事に僕は腹を立てた。
(この日本人代理人は「僕は電通を信用していない!」と公言していた。)
一歩間違えれば、僕と集英社-トミタさんの間に不和の種を撒きかねない。
リーク情報そのものは正しかったにせよ、もう映画交渉とは関係のない出版社や編集者を巻き込んだ心理戦の材料に使うというやり口に、キットマン・ホーの代理人に対し僕は不信感を持った。

「ダーク・エンジェル情報リーク事件」はキットマン・ホー陣営にとって裏目に出て、釈明文という形で誠意を見せたキャメロン-フォックス陣営の好感度を上げた。
以後、キットマン・ホー陣営とは没交渉となり、キャメロン-フォックス陣営との契約交渉が続くこととなる。
(フォックスとの交渉も難航するのですが…数年後契約締結し、現在にいたります。)

その後、「ダーク・エンジェル」はオンエアされ、日本でもリリースされた。
僕は「ダーク・エンジェル」は観ていません。観て頭にくるといやなので…。
(^-^;)
キャメロンの「パクってない」という言葉を信じてます。

あとは無事「銃夢」の映画を完成させて、言ったことを証明して見せてほしいですね。

2006年12月12日

>ツトム@管理人
>先生けっこうしゃべっちゃってますね。(^^;

うん。
「ダーク・エンジェル情報リーク事件」はキャメロン-フォックスと交渉のテーブルにつく前のエピソードだから、守秘義務違反には当たらないと判断した。
契約交渉中はこういう話も書けないけど、契約締結して何年もたっていて、契約した事自体は秘密じゃないからね。


>サイフォンさん
>ゆきと帳、見させていただきました♪そっそく先生ご本人
>から細部に渡ってご説明していただき感動しましたm(__)mと
>言うか、あまり思い出したくない事を思い出させたようで、
>大変申し訳無く感じています・・・

いえいえ。
キャメロン本人が「パクってない」と言っていて、僕がそれを「信じている」と言うことを知らしめたかっただけです。
いやな思い出と言う意味では、こんなのはぜんぜんましな方ですね~。
今思い出しても、ひたいに青筋がピシッ!!と浮き出るようなことが、この後の契約交渉で何度もありましたからね~。
もちろんキャメロン-フォックスとの契約交渉中のエピソードは守秘義務に抵触するので今はお話できませんが。
映画が無事完成して公開されたら、お話できるかもしれません。