ゆ き と の 書 斎

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2002年01月27日 漫画家は版下原稿を描くもの。

銃夢BBSで「デジタル化によって原画がないのに原画展とは呼べないのではないか」という投稿がありましたが。
そんなことを非難されるいわれはないですな。
そもそも漫画家は版下原稿を描くもの。デザイナーなどと同様に。
版下原稿とは製版され印刷されることを前提にした原稿で、画家などが描く一枚絵などとは違い、肉眼で鑑賞することを前提に描かれたものではありません。
したがって、時間とともに劣化・変化していく現物の版下原稿より、複製に優れたデジタルデータに移行するのは当然のなりゆき(アナログに比べて品質の劣化が許容範囲内ならば、という前提条件つきですが)。

原画展で入場にお代金を取っていたのなら「なんだこれ、原画じゃねーじゃねーか。看板に偽りありだぜ!」と怒るのも納得いきます。
しかし僕の絵が展示された会場で入場料を取ったりはしていないはず。
原画展の企画自体、僕の方から言いだしたものは一件もありません。すべてトミタさんとか、漫画専門店さんから「原画展をやりたいので原画を貸してくれませんか」という申し込みを受けて、無償で貸し出しています。
また、デジタル作画になってからの作品の時は原画が存在しないことを事前に念押しします(デジタルデータの場合、編集部にコピーがあるので原画を貸し出して紛失する危険はないのですが…かわりにデータが外部に流出すると簡単に完全なコピーが作れるので、そのへんのセキュリティはちゃんとしてもらうように言ってあります)。

実は現在も、某漫画専門店から原画を展示したいという申し込みがあります。まだ詳細は聞いていないのですが、このような観客からの不満があることも考慮に入れて、申し込みを受けるかどうか考えなければなりませんね。
スキャン素材としての未完成な線画原稿や、プリントアウトした現物のないカラーイラストを展示することが木城ゆきとの評価を下げることがあるのなら、原画展は一切やらない方がいいかもしれません。

このアナログの現物性/一回性とデジタル情報の複製可能性の対立は銃夢LOのテーマのひとつでもあります。
なかなか興味深いので、いろんな方の意見を聞いてみたいですね。