書類バッグ of 茶房・風雲庵

レザークラフト作品ギャラリー

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このコーナーでは管理人が手作りした革小物を公開しています。

#0018 イタリアンレザーの書類バッグ


00.jpg2010.08.24

B4サイズの薄い紙を30枚ほど持ち運ぶという、特殊な用途の書類入れとして製作。2010年8月24日完成。

7月初頭に行った北海道旅行のおみやげを持って、大ベテラン漫画家・やまさき拓味先生の仕事場に遊びに行った。私はここで一時期仕事をしていたことがあり、ユキトプロに移った今でも、ちょくちょくと遊びに行っては仕事のジャマをしたり夕食をご馳走になったりとハタ迷惑なことを繰り返している。

さておみやげを持って7月末に行った時、ふとしたことから私のレザークラフト趣味の話になった。特に隠していたわけではなかったのだが、私が外見に似合わずバッグなどを作っていたことに相当インパクトがあったようで、先生や仕事場のスタッフから「じゃあこういうの作って!」という話で盛り上がってしまった。まあ自分のものばっかり作り続けるのも限界があるし、こういうチャンスに腕を磨くのも悪くない。とりあえず材料費だけいたたくという約束でオーダーを受けることとなったわけである。

01.jpgベルト留めのデザイン的ワンポイント

材料調達時間などの諸事情で、記念すべきオーダー第1号はやまさき先生に決定。やまさき先生の要望は、ネーム(漫画で言う絵コンテ)用紙を入れる薄いカバン。大きさはB4サイズで、厚みは3cmぐらい。肩掛けできるベルトがついてて、色はジーンズに合う暗めの緑か紺色。できるだけシンプルなものがいいとのこと。

正直なところ、この要望に特に難しいところは何もないと思われた。マチのあるカバンだと薄いのは作りづらいから、要するにマチのない、ちょっとふっくらした袋状のカバンを作ればいいわけだ。と、この時は楽勝に思えていたのだが、まったく甘かったことを後に思い知らされることになる。

02.jpg内張りは鮮やかなオレンジが美しいソフトアメ豚

これは余談だが、やまさき先生の容ぼうはアップルCEOスティーブ・ジョブズに似ている。髪を伸ばしたジョブズといった感じの、非常にダンディーな方なのだ。そんな大人の男にふさわしいレザーとして、高級なイタリア製牛革『ブルガノ』の緑色をチョイス。しっとりとした手触りと深みのあるグリーンがより大人のダンディーさを演出するはずだ。

……しかしいざ作り始めてみると、とにかく革の表面にキズがつきやすい。形が四角く面積が大きいこともあるが、『ブルガノ』自体が非常に傷つきやすい革なのだ。キズにヒヤヒヤしながらの慎重な作業を要求される。裏革としてオレンジ色が鮮やかなソフトアメ豚を貼り付け、表側を内にして袋状に縫い、ひっくり返せば完成……のはずだったが、ひっくり返した際にあちこちに深いシワが入ってしまい、どうにも見苦しい見た目になってしまった。キズはオイルを塗ればある程度直せるのだが、シワが強く入ってしまうともう元には戻せない。

03.jpgどうしてもところどころにシワが入ってしまう

8月のお盆のころにはこの「書類バッグ第1号」は出来上がっていた。だが個人的にどーしても納得がいかず、悩んだ末にこれは「試作品第1号」ということにして、新たに作り直すことに決定。『ブルガノ』は革の厚みが2mm以上あったので、これがひっくり返した時のシワの原因と考え、今度はもうちょっと薄いイタリア製牛革の『ポラリス・ブッテーロ』に変更。こちらも手触りや深い色合いは遜色ない。

リファインついでに細かい箇所も設計し直し、肩掛けベルトは幅15mm→20mmに、ベルトを本体に留める部分も、耐久性とデザイン的ワンポイントを考えた形に変更。コゲ茶とダークグリーンのツートンをより強調するようにした。

04.jpgこっちが『ブルガノ』を使った試作品第1号

ソフトアメ豚を貼り付け、内表に縫いつけたらひっくり返す。今回は革が薄いのでスパッと行ったが、それでもところどころシワになってしまった。何かこういう時のノウハウというものがあるのかも知れない。今回はこれでヨシとしたけれども、今後の課題のひとつである。

また今回苦労した点としてファスナーの縫いつけがあった。長さ40cmちょっとのファスナーだが、これを手縫いでヨレないようまっすぐに縫いつけるというのが至難の技だ。また長さの調節もきっちりとはいかず、ファスナー部分はもっともシロウト臭い仕上がりになってしまった。これも今後の課題のひとつ。

05.jpgバッグの厚みは先生の希望により3cm以下におさえた

完成したものを見るに、これで先生に満足してもらえるだろうかという一抹の不安が頭をよぎった。だがこれが今の自分の限界と素直に認めるほかない。第1号の試作品もいっしょに持っていって、何か言われた時のイイワケにしよう……と姑息なことを考えてやまさき先生の仕事場に行ったが、いざ渡してみたら「これはもうプロの製品じゃん!」「ミシンで縫ったんじゃないのこれ!?」「ツトム君これ仕事にできるよ!」などなど身に余るお褒めの言葉をいただけたので、内心ほっとした(笑)。

無論プロを語るなんて10年早いのは周知の事実。しかし今回は先生によろこんでもらえたので、終わり良ければすべてヨシ、ということにしておこう(笑)。次回は同仕事場のスタッフKさんのオーダーで「ショルダーバッグ」を作る予定。

本体……ポラリス・ブッテーロ 1.4mm
裏革……ソフトアメ豚
ベルト……オイルレース 幅20mm
その他……ブルガノ 2mm
ファスナー真ちゅう4号 50cm
ビニモ0番黄土 ナイロン糸16番コゲチャ Dカン ナスカン バックル20mm カシメ特大・大