ゆ き と の 書 斎

気まぐれゆきと帳過去ログ一覧

近況 2007年

2007年02月24日 インスピレーションについて(その2)

2月3度目の書きこみです。

まずは時事ネタから。

>月刊少年ジャンプが6月で休刊、秋に新創刊
(リンク)

僕もこのニュースにはびっくりしました。まぁ、月刊ジャンプはもう20年以上読んでませんが…。
「けっこう仮面」とかにドキドキした少年時代が懐かしい…。(遠い目)

先ほどUJ担当のイトウさんに休刊の内情をメールで伺ったところ、
返事をいただきましたが、オフレコと念を押されてしまいました。
なので詳しいことは書けませんが、ライトノベル部門とタイアップした誌面の新雑誌になるようです。
(このぐらいなら書いてもだいじょうぶですよね!? >イトウさん)

僕が心配するのは、やはりウルジャンへの影響。
新雑誌の傾向がウルジャンとかぶったものになるのではないかという恐れがひとつ。
おそらく広告予算などは新雑誌の方がウルジャンよりも多いので、今までよりもさらにウルジャンが割を食うことになるかも。
解散する月刊ジャンプの作家や編集の尻拭いをウルジャンがさせられるのではないか、という懸念がもうひとつ。
どちらにしろウルジャンにはあまりいいことがないような気がするな~。
限られたパイを奪い合うのではなく、新しい市場を開拓するような方向性で新雑誌が成功してくれるといいですね~。


>6570万脱税、同人誌漫画家(リンク)

6千500万円て…。
ユキトプロダクツの2年分の年収と同じじゃん…。○| ̄|_


> お絵描き掲示板
> 山城うなぎさん
> 木星系連合歌

またまたいいですね~これ。(^o^)
準決勝の対木星戦か、あるいは来るべき銃夢LO木星編(そんなのあるのか!?)に出したいですね~。
歌を出す時はちゃんとクレジットします。


> 銃夢BBS
> バーサーカー佐藤さん
> 『ゆーちゃん』と呼んでみたいなぁ…ボソッ。

あう。
子供のころは親戚の叔母さんなんかに「ゆきちゃん」と呼ばれましたが、女の子みたいでいやだったな~。
一方、このあいだ亡くなった父方の伯父さんを僕の親父殿は今でも「せーちゃん」と呼んでます。
ツトムも高校入学の時に家庭内で「もうお兄さんなんだからつーちゃんと呼ぶのはやめよう」
みたいな話し合いがあったのですが、うやむやに。
名は体を現すというか、もう存在自体がつーちゃん以外の何ものでもないですからね~。
名前によって親愛の情をこめた愛称が作りやすいかどうかがありますね~。


> バーサーカー佐藤さん
> ゆきと先生は銃夢LOの最終回迄のストーリーっていうのは大体、決まっている
> んですか?

一応こういう形にしたいな~というものはあります。
でも長編連載というのはパラシュートをつけて高空から飛び降りるようなもので、
手足をばたつかせて多少の制御はできますが、あまり正確な着地点は決められないし、
決めても意味がないのです。


> Ivanさん
> ゆきとさんはLOをあと何年、あと何巻でおわる、というめどは立っているので
> しょうか。

ぜんぜん考えてないですね~。
ただ、旧銃夢のように禍根の残る終わり方は死んでもいやなので、
「もう銃夢で描くことはなくなった」と自分で納得できるようにして終わりたいです。
「文明復興編」を単行本2巻分かけて描いたことにいろいろ批判もあるでしょうけど、
後になって悔いるのはいやだったので、ああしました。


> オクテットさん
> たぶんtの中にはsinかcsin関数が混じってませんか?
> 付け足しですがAの中には収束する級数が混じっていないかと思います

前回の僕のインスピレーション方程式B=A×t(x)に対するご指摘ですね。
すいません!!
関数とか級数とかわかりません!!バカでごめんなさい。
オクテットさんなりの方程式の完成形を示してくださると、そこからまたおもしろい議論ができるかもしれませんね。


さて、毎回前置きが長くて申し訳ない。

マチュさんからいただいた質問
「作品を作る際のインスピレーションは何から受けるのか?」を前回
僕なりに回答してみたわけですが、アップした後になって、なんかぜんぜんズレたことを言ってしまったような気がしてきました。
質問の中に「作品」という単語があったので、「自分の作品作りのおおもとに関わることとはっ…!?」みたいに大げさに考えすぎて、回答に詰まって、あげく方程式を持ち出してみたりして。

前回のは深いレベルの話だったので難解になってしまいましたが、もっと浅いレベルの話を今回はしようと思います。


[例1]
・水死者を探索するダイバーのニュースをラジオで聴いた。これから短編「怪洋星」ができあがった。

「視界のきかない濁った水中を潜水して水死者を探すなんて、怖いだろうな~」というのが発想の発端。
これに深層心理の洞察や、"夢か現実かわからない"という現実感の喪失、生物から無機物へというサイボーグ思想、自分が狂うことへの恐怖などを絡めて作品化した。
短編は構造が単純なのでインスピレーションもシンプルなものが多い。
逆に長編作品は複雑な構造を持っていることが多いので、インスピレーションを一言で言い表せないことが多い。

[例2]
・布団の中で考えていて突然、軌道エレベーター/空中都市ザレム/クズ鉄町のイメージができた。

「天啓」という意味のインスピレーションの例。
辞書に載っているインスピレーションという言葉の定義"直感的なひらめき・霊感"に一番近い。
しかしこれは解説するのは困難である。
あえて解説するなら、「軌道エレベーター」「空中都市」「スクラップだらけの町」という個々のイメージは以前から広く知られていた。
それらを有機的に結びつけ、サイボーグの生息する架空世界の生態系として説得力のあるイメージにまとめ上げたというのがこのアイディアのミソである。
もうひとつの説明としては、島本和彦先生の提唱する仮説
「宇宙から降りそそぐアイディア線」を受信したという可能性がある。(笑)

[例3]
・タランティーノの映画「キル・ビルvol.1」の100人斬りを観て発奮し、銃夢LO-6巻の「虐殺通路」のシーンを作った。

陽子がイェールの通路で生身の警備兵約40人をミンチにするシーンである。
解説の必要もないほど分かりやすい影響である。
まぁ元々僕には暴力描写の渇望があるので、キル・ビルを観なくても似たようなシーンは描いたかもしれない。
「タランティーノがやりやがった!俺も負けていられねーっ!!」という感じである。

[例4]
・「ワンダーJAPAN」2号の「タコすべり台」の記事を見て「タコすべり台サイコー!」と思い、さっそくマンガの背景に出した。

「ワンダーJAPAN」とは三才ブックスが発行している奇想天外建築を扱った不定期刊行ムック。現在3号まで出ている。
問題のシーンは銃夢LO-9巻、PHASE:55の孤児院「ほうき星園」の中庭に鎮座するタコすべり台。
タコすべり台サイコー!!と声を大にして言いたい。
世界に誇る戦後日本の造形美である。
タコすべり台を題材にして一本作品を描きたいぐらいだ。
タコすべり台LOVE


どうでしょうか。下に行くほど卑近で分かりやすい例になっていますね。
(^-^;)

ふだん生活して見聞きしていることすべてがネタ元の情報源になりうるのですが、やはりあまりに日常的で当たり前のことはネタになりません。
非日常的なことやモノ、人間性/社会/自然の真実をかいま見るような出来事、に遭遇して想像力を刺激されるような時、「ひらめき」という意味のインスピレーションが訪れます。
そのためには、常に好奇心を持って驚く心、「なぜなんだ~?」と思う探求心、既定概念にとらわれずに自由に空想する心が必要です。
絵の技術は教えられるし知識は増やせるけど、好奇心、探求心、空想心はどうやら生まれつきのもので、人に教えることはできないようです。

ただ、すばらしいインスピレーションがそう毎回都合よく訪れてくれるわけではありません。
描きたい時にだけ作品を作る芸術家ではなく職業漫画家なので、インスピレーションがなくても毎回の連載は描かなくてはならない。
締め切りはインスピレーションを待ってはくれない。
それでも毎回高いアベレージでアイディアを出し、テーマを決め、シーンを構成し、背景やキャラやメカのデザインを決め、作画して原稿を上げなければなりません。
そこで前回書いたような「仕込んで寝かせた20年もの」の蓄積が生きてくるというわけです。


あと川村君が言ったような意味での「ネタ元」は僕は音楽や本から受けることが多いです。
このゆきと帳では映画やゲームの感想はよく書きますが、本の感想はあまり書きません。
実際は硬軟取り混ぜてたくさんの本を読んでますが、やっぱりおもしろいと思った本でも、
知られると今後の銃夢LOの方向性がバレるかもしれない、と思って秘密にしておきたいという心理がありますね。
「味噌は秘伝」というヤツですか。