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2008年01月28日 シナリオ作りについて(川村君へのレス)

川村君はウチのアシスタントしていたころから、なにか自分のツボにはまった素材があるとたちまちお話をでっち上げる力がある。
その瞬発力は俺も一目置いていた。
ただ、その段階では「思いつきのネタ」にすぎないので、整合性のあるプロットにまとめていく力は素人だったから、小説版銃夢の時はえらい苦労したがな~。

> 銃夢BBS
> [7302]川村君
> 「整合性のあるプロットにまとめていく力は素人」
> 早くも今年一番へこんだワードとして記憶に刻まれました。
> いやまあ、本当なんですが。
> なるほど、アイデアには絶対の自信があるが、だから俺は一流にはなれないの
> か。
> たしかになあ・・・と思いつつ、どうすべえかと考え中です。投げキャラが打
> 撃で勝てないのは仕方ないのだ、問題はどうその性能でまんべんなく勝ちを収
> めるかよね。


君が「素人」だったのは10年前の小説書いた時の話だからね。
「男子たる者3日会わざれば刮目して見るべし」と言うし、川村君があれからどれだけ成長しているのかは俺にはわからん。
シナリオの先生の下で働いたりもしたそうだから、なんらかの成長はあって当然と思ってる。
ただしプロである以上は、成長の成果は最終的に「作品ないしは製品」として世に問わなければね。

いろいろと他人の作ったゲームのレビューを書きこんでるけど、俺ははっきし言ってなんの興味もない。
俺が興味があるのは、君が作ったゲームだけだよ!

もう10年近く会ってないので、互いに都合が合ったら会ってみたいものだよな。
積もる話もあるし。


思いつきのネタを練り込んで使えるアイディアにし、さらに組み立てて整合性のあるプロットにする。
実際の話、ド素人でも面白いネタの一つや二つは思いつくものだ。
ただの思いつきを思いつき以上のもの…「アイディア」に昇華し、
そしてその鮮度を保ったままプロットにする工程が物語作りの難しさであり、奥深さであり、醍醐味であり、「プロの仕事」の領域だ。
そしてそこには各人の「理想」と「理論」が存在する。
自分の仕事に対し「理想」と「理論」を持たない者はプロとは呼べない。

ネタやアイディアの良し悪しには才能や感性が大きく幅を利かすが、理論は科学的方法論なので他人に教えることも可能だ。
分析的思考力、客観的認識力、大局的バランス感覚、計画的構築力などが求められる。
要するに右脳的思考と左脳的思考をバランスよく使うということだ。
もっと頭を使うんだ。

ま~偉そうに書いたけど、おそらくこんなことはすでに川村君はシナリオの先生とかに聞いていることだろう…。
使っている言葉は違うと思うけど。

2008年01月30日 
> [7305]kawamura君
> 俺は論理的組み立てをしようとするとそっちも強烈なので、自分で論理破綻が
> 許せないためにアイデアの破天荒さを叩き潰してしまう。
> けっこう出来上がると普通になってしまったり。

そういえば君は昔、仕事場で飯当番させて米をとがせたら、30分以上かけてとぎ汁が濁らなくなるまでやったりと、異常に潔癖なところがあったな~。
精神のバランスが悪いのは、強烈な個性となり表現者として大きな武器となりえるわけで、必ずしも悪いことではない。
しかしもう子供じゃないんだから、自分を少し突き放して、客観的にコントロールできなければな。

論理的組み立てをはじめるとそれに夢中になって面白さをつぶしてしまうということは、「最終目標」にきちんとフォーカスしていないためにおこる。
この場合の「最終目標」は「面白いシナリオを作ること」であって、「論理的整合性をとること」ではない。
「最終目標」を徹底的に洗い出し、徹底的に絞り込め。「あれもこれも」はダメだ。
マンガの業界用語で言うと「テーマの絞り込み」ということになる。
俺も駆け出しのころ、トミタさんに徹底的に叩きこまれた。
小説版銃夢を作った時の君との打ち合わせでやったのもこれだ。
面白いアイディアがひとつに絞り込めたら、「論理性」はそれを引き立てるために使うんだ。
面白いアイディアが「主」であって、論理性は「従」でなければならない。
肩に入った力をすばやく抜いて、左右の脳を必要に応じてすばやく切り替えるんだ。
一度に全部やろうとせず、手順を考えてやるんだ。

ま~、すでに川村君はシナリオの先生とかに聞いていることなんだろうけどな。

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