ゆ き と の 書 斎

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レビュー(本)

2007年07月26日
『怪異実聞録 なまなりさん』

・『怪異実聞録 なまなりさん』
中山市郎 著

実話怪談の新時代を切り開いた『新耳袋』の著者の一人、中山氏がひとつのエピソードに丸々一冊を費やした、「実話怪談」。
同時期に新耳のもう一人の著者・木原氏の『隣之怪』という本も出たのだが、アマゾンのレビューではこちらのほうが星の数が多かったので、こちらを先に買って読んだ。

…で感想をハッキリ言わせてもらうと、「これは実話なのかっ!?」
いや~面白いことは面白かった。違う意味で。

まず、超短編である『新耳袋』とは違い、話者のプロフィールや登場する人たちの外見や人となり、人間関係などが細かく語られる。
ところが、登場人物が美男美女ばっかり。
この話の話者(主人公)となるプロデューサー業の男性からして、アメリカ人とのハーフで昔は米軍海兵隊に在籍、湾岸戦争にも従軍した猛者で副業は退魔師。
そして超グラマーで色気ムンムンの美人姉妹がポルシェとフェラーリに乗って現れる!!

…おいおい、今どきマンガでもこんな非現実的なキャラ設定はねーべ。
もし「本当にこういう人たちが実在するんだ」というのなら、僕は幽霊や呪いが実在することよりも不思議だと思う。
僕は幽霊やUFOやUMAよりも「絶世の美女」の実在の方が疑わしいと思っている男だから。

この後、プロデューサーの男性の仕事仲間の善男善女のカップルに美人姉妹がすさまじい嫌がらせをして、カップルの女性が耐えきれずに自殺。
その後美人姉妹に呪いと祟りのコンボが降りかかり、話者の男性は退魔師としてこの事件に関わってゆく…という流れ。

呪いにさいなまれる一家の描写などは、さすが長年実話怪談の収集に携わってきた中山氏の経験が生きて、生々しい臨場感がある。
しかしキャラ設定がコレなので、「実話」怪談としては信憑性に疑問符がつき、いまいちのめりこめなかった。
しかし新しいタイプの冒険小説としては面白い…かも知れない。
「黒豹スペース・コンバット」ならぬ「黒豹心霊コンバット」だ!
ぜひシリーズ化してもらいたい。

(注)『黒豹スペース・コンバット』門田泰明 著
日本の誇るスーパーエージェント・特命武装検事・黒木豹介の活躍するビックリ冒険小説。ICBMをベレッタで撃ち落としたりする。
上中下巻の大部だが、奇天烈本好きとしては外せないタイトルだ。


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