ゆ き と の 書 斎

気まぐれゆきと帳過去ログ一覧

近況 2009年

2009年04月19日 銃夢LO13巻制作裏話など。


皆さんお久しぶりです。4月最初の書きこみです。

ここ最近、マンガがらみのニュースがやけに多いですね~。
某作家さんが原稿料を公開して話題になったりとか、某人気作家さんに脅迫メールを送って逮捕とか…。
いいことか悪いことかわかりませんけども。


> BBSのレス
> Ivanさん
> ゆきとさんが考える「良い物語の条件」(悪い物語の条件)にはどんなものが
> ありますか?

そうですね~。
僕とツトムが中学~高校生ぐらいのころ、傑作・名作といわれる作品の法則性を見つけ出そうと、様々なパターンを抽出・分析していた時期がありました。
見聞が浅い未熟な学生の頭ではありますが、そこで出した結論は「傑作の法則化は不可能」というものでした。
ある特定の傑作を分析して、そこから物語の骨子やパターンを抽出することはできます。
しかしそのパターンを理論化してそこから新しく作った物語が傑作になるかというと、なりません。(無難な作品にはなるかもしれませんが)
理論化・パターン化した段階で、なにか重要な「物語の生命力」のようなものが失われてしまうため、単に機械的に再構成しても、傑作にはならないのです。
僕はこのときの思考実験と、その後実際に作品を試行錯誤しながら描いた経験から、「素の」物語それ自体はそれほど重要ではないのではないかと考えるようになりました。
重要なのは、最初の設定や着眼点、世界観となる「コンセプト」と、物語と読者のインターフェイスとなる演出、「語り口」なのではないかと。
つまらない物語を面白く見せる語り口もありますし、せっかくの面白い物語が語り口ひとつで台無しになることもある。
この語り口、演出とは、物語や登場人物の言動のどこに焦点を当て、どこを省略するかということ。
この焦点、フォーカスの流れが「テーマ」となります。「テーマ」のない演出というのはあり得ない。
以上の理由から、僕の見解では演出の良し悪しは言うことはできても物語の良し悪しは言うことはできない…となります。


> ちまきさん
> xbox360オススメソフトを紹介します。
> 「Gears of War」(ギアーズ・オブ・ウォー)です。

実を言うと、「Gears of War」は買ってやりました。
でも体調が悪かったかなんだかで続かず、途中でやめてしまいました。
「オブリビオン」もやりましたが、最初の城を出るまでに3D酔いしてしまい断念。
初代Xboxの「ヘイロー」は面白かったです。僕がクリアした唯一のFPS。でも「ヘイロー2」は途中で投げてしまい、その後のシリーズはやってません。
現在「MORTAL KOMBAT vs DC UNIVERSE」という格闘ゲームをやっています。(日本国内では未発売。輸入ソフト)
カルトな人気を誇るモーコンのキャラがバットマンやスーパーマンといったDCコミックスのヒーローたちと戦うという、冗談のようなソフトです。
今年の初めに手に入れていたのですが、「スト4」や「バイオ5」など新作ラッシュが続いていたため一時オクラになっていました。
モーコンファンのつーちゃんに見せるために久しぶりに起動してみたらおもしろさにはまった。日本の格ゲーに比べるとものすごく大味なんですけど。
現在、ロシア発のアニメ風美少女アクションゲームとして話題の「Xブレード」を予約中。
以前もここで書きましたが、ウルジャンの作家はXbox360所有率が非常に高いらしいです。

Xboxじゃないけど「MadWorld」やりて~。日本でも発売してくれよう~。(これは日本のメーカー製ですが)
「GODS of WAR3」が出たら、いよいよ僕もプレステ3を買わねばなるまい。
これはSCEオブアメリカ製のソフトなので、他のプラットフォームで出る可能性がない。よって僕にとって唯一のプレステのキラーソフト。

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さて、やっと銃夢LO13巻と表紙・ピンナップの掲載されたウルジャン5月号が発売されましたので、裏話みたいなものを書いておこうと思います。(ネタバレはありません)

・銃夢LO13巻「ZOTT対金星戦」

皆さん楽しんでいただけましたでしょうか。(^_^)
僕は、今回のエピソードでは自分の非力さを思い知りました。orz
自己採点では、100点中30点ぐらいです。
高望みしすぎたのかもしれませんが、描く前に自分の脳内にあったイメージを30%ぐらいしか実現できませんでした。
特にオランプはもっと可愛く!エロく!なければならんのですが、僕にはあれが限界でした。orz
これが現在の僕の実力だと認めざるをえないです。

オムデュフーの幼少期のエピソード(PHASE:75)は、最初ネームのシナプスの段階ではもっと長く詳細な話を考えていました。
オムデュフーが研究所から不適格品として廃棄され、廃棄された道具生物たちのスラム「クズ肉町」にたどり着き、様々な経験を積む。
その後巨大な金星樹を登り、金星杯を制して栄冠をつかむ…というものです。
しかしストーリー理論的には間違っていなくても、長すぎて単行本2巻ぐらいになってしまう恐れがあったので、〆切の迫る中ズバーッと変更して現在の形になりました。

オムデュフーの手足となる怪獣たちも、以前に作ってあった設定は本番直前になって捨ててしまい、大幅に変更しました。
ネームの直前にウルトラ怪獣図鑑の復刻版を手に入れていたので、「やっぱ変な変化球で行くよりも、大怪獣だよな!!」ということに。
怪獣の名前はフランスの妖怪なのですが、一部スペルがわからず、イトウさんの知人のフランス人の方に調べてもらったりもしました。
怪獣を描くのは楽しかったですが、作業は大変でした。

空手軍側のメンツも、前巻の「カラテ大戦争!!」のエピソードで前から予定していたメンツとは違うキャラが入ってきたりしたので、殺陣の組み立てには苦労しました。
打ち合わせでは、ジョジョやデスノートばりの心理戦をやろうか、という案もあったのですが、実際にやってみたら自分の頭では無理だということがわかったので(汗)、自分の得意な方向の殺陣で組み立てました。
空手軍全員の見せ場を作るのは当初の予定にはなかったんですが、BBSの書きこみを見て気が変わり、全員に見せ場を作ることに。
ただ決勝戦に残すキャラは決めていたので、上手くリタイヤさせる方法に苦労しました。

最後の方、バラの花を描かなければならなくなり、僕はそれまでまったく描いたことがなかったので、イトウさんに資料写真や少女マンガなどを送ってもらい参考にしながら四苦八苦して描きました。
p176~177の見開きのバラは、完成までに三回描き直してます。
最初に描いた絵はキャベツみたいになってしまいました。(^-^;)
何回も描いてるうちにだんだん構造が理解できるようになって、最後の方は資料を見ないでもそらで描けるようになりました。
資料の本を見て、一口にバラといっても品種によって色も形も様々なのに驚きました。
世の中僕の知らんことばかりだな~。


・コミックスカバー/ピンナップイラスト「カラテメタル」

空手軍のメンバーでバンドをやっているところを絵にする、というアイディアは一年ぐらい前からありました。
ただ、あまりにも手間がかかりすぎることが予想されたので、画集を出すときの描き下ろしイラストにするという案が有力でした。
「ZOTT対金星戦」のエピソードも大詰めを迎え、13巻の刊行スケジュールを考えなければならないころになって、カバーイラストのモチーフをどうするか、という問題に気づきました。
13巻ではガリィはわずか3ページしか出てこないことが確定したので、ガリィをモチーフにするのは内容との乖離が甚だしすぎるような気が。
(世の中には内容に無関係にずっと主人公の顔のアップをカバーに使っている作品とかもいっぱいありますが…)
ここで「カラテメタル」をモチーフにするという案が復活。
2008年は公約通り連載を一度も休まなかったので、一回休みをもらい、その間にイラストを描くということで編集部と話がつきました。
ピンナップは僕の方から言い出したのですが、これはバンドのステージを絵にするという構図上、横長の構図の方がちゃんと収まるという考えからです。
作画時の苦労については、そのうちサイトのギャラリーページの解説文に載せます。

・ウルジャン5月号表紙カバー

「カラテメタル」の作画作業が長引き、残り日数4日間ぐらいしかない中で作業に入りました。
「モチーフはガリィ」「ラフなタッチを生かした絵」ということだけを決めて、スケッチブックにラフを何点か描いてみたものの、決まらず。
あせる中、Painterでタブレット直描きでいくつかぐにぐにラフを描いたうちの一つがなんとなくよかったので、そのまま手とかを加えていって、いつもとは違う色つけ技法で着色して、一夜で完成。
その日は無我夢中だったんですが、一晩寝て起きて冷静になって見てみると「これでよかったのか~!?」という迷いの念が。
さんざん迷ったんですが、もう時間もないし、自信はズダボロで描き直ししてももっといいものができる確信が全くなかったので、このまま提出。
評価は読者の皆さんにゆだねたいと思います。