デミオ2 of 茶房・風雲庵

2016年〜 マツダ・デミオ

●車内の広さ

運転席と助手席の間隔も広く開放感があり、個人的には必要充分。後席はかなり狭いものの、シートの座り心地は悪くないし、たまに使う程度なら全然問題ない。

肝心のラゲッジルームは、フィットの半分くらいしかないものの、普段の買い物くらいなら充分。リアゲートにひもで吊るされたトノカバーが自動的に閉まる仕組みも良い(笑)。

●実際に走った感じ

demio005.jpgエンジンスタートはプッシュボタン式。マツダのディーゼルエンジン「スカイアクティブ-D」は非常に静かで、ディーゼル特有の「ガラガラ」音はほとんど気にならない。ガソリンエンジンよりはうるさいのだが、音の質がまろやかというか、不快な音ではないのが好印象。加えてディーゼルは低速トルクが大きく、回転を上げずに静かに走れるのもポイント。アイドリングストップ機能もついているので、信号待ちなどでは完全無音にできる。

発進時は若干アクセルの反応が悪いようなもたつき感があるが、ちょっと踏めばググッと前に出るので、慣れればまったく問題なし。ハンドリングは非常になめらかで、コーナーも思い通りのラインをス〜ッと曲れる。道路の段差ショックも、サスペンションがちゃんと丸め込んでいる印象。ある程度の車重があり、車体がガッチリしているため、とにかく車格を感じさせないどっしりとした重厚さがあって安心できる。

そして街中でもアクセルをグッと踏めば、背中からグググ〜ッと押される強大なトルクを味わえる。これぞディーゼルエンジンの醍醐味(1.5リッターディーゼル車で2.5リッターガソリン車並みのトルク)で、これを一度味わってしまうともう普通のガソリン車に戻れない。高速道路でアクセルを踏み込めば、コンパクトカーの次元を超えた加速フィール。時速100kmまで加速してもエンジンは2000回転以下で余力を残している上に、高速でのハンドリングも安定しててまったく不安要素なし。乗り心地もすこぶる良いので、むしろデミオは高速走行でこそ真価を発揮すると言えそう。

★ディーゼルエンジンは、高回転まで回らない(最高速が遅い)が低速のトルク(ダッシュ力)が大きいという性質のエンジン。私は長い間クルーザーバイク(昔で言うアメリカン)を乗ってきたが、その理由のひとつは「最高速は遅いが、低速トルクが大きい」というエンジン性能にある。最高速が300km出るバイクに乗っても、そんな性能を街中で使うシーンなどありえない。それに対し低速域は日常で頻繁に使うため、低速トルクが大きいエンジンの方が絶対に運転しやすいのだ。そんな新型デミオのディーゼル車は、まさにクルーザー的な性質を持っていると言える。


●クリーンディーゼル

メーターで切り替えて表示させる「平均燃費」上では、街中ではリッター17〜8km、高速ではリッター23kmぐらいをマークする。フィットよりも少し上回っている印象。またディーゼル車の燃料となる軽油が、レギュラーガソリンより20円くらい安いのはやはりうれしいポイント。

クリーンディーゼルだから二酸化炭素や窒素酸化物の排出も少なく、日本では余っている(わざわざ外国に輸出している)という軽油を使うので、エネルギーバランス的にもいいとのこと。世界的に見てもガソリンより軽油が安い国というのは、日本を含めそう多くはないとのことで、日本でこそディーゼル車に乗るべきかも知れない。

次に悪い点、気になった点もムリヤリ挙げてみる。ほとんどが気にならないような部分ばかり。

●シャークフィンアンテナ

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マイナーチェンジで変更されたシャークフィンアンテナ。欧州車から始まったトレンドらしく、ドルフィンアンテナとも呼ばれる。空気抵抗はいいのかも知れないけれど、車体全体のデザインが優れているため、余計な出っぱりにしか見えない。ルーフはつるんと何もない方がイイ。

●インテリア

デザイン・質感が高いがゆえに、あと付けのカッコ悪いグッズをつけられない(笑)。

●収納の少なさ

おそらくデミオ最大の欠点と言えるのが、小物収納が少ないところ。ドリンクホルダーは座席の間の中央にふたつ、運転席・助手席のドアにペットボトルホルダーがひとつずつの合計4つ。しかも真ん中のドリンクホルダーは「とりあえずつけました」という感じで、ちょっと使いづらい。ここにはサイドブレーキと「コマンダーコントロール」もあってゴチャゴチャしているので、もう少しレイアウトを考えて欲しかった。

またインテリアとも関連するが、エアコンルーバーなど内装部品がデザインされすぎてて、あと付けのドリンクホルダーがつけにくい。実際運転席ドア側のエアコンルーバーは、ドアレバーが干渉してしまうためドリンクホルダーがつけられない。

●ハンドルの軽さ

コンパクトカーというジャンル上、非力な女性も運転するのでやむを得ない部分もあるが、ちょっと軽すぎる感じ。デミオのディーゼル車はボディがしっかりしてて重厚な乗り味なので、ハンドルももうちょっと重めだったらさらに高級感が出て良かった。今時は電子制御の電動パワステなんだし、将来的にはハンドルの重さなんかも調節できるようになったら面白いと思う。

ちなみに試乗したデミオのガソリン車はさらにハンドルが軽く、ちょっと怖いくらい。その点もディーゼルを選んだ理由のひとつ。

●ラゲッジルーム

荷室は後席シートを倒せばそれなりの広さになるが、フルフラットにはならず、背もたれの厚みでかなりの段差ができる。自転車のようなかさばるものは入らなそう。

●ディーゼルエンジンのオイル交換費用

最後にちょっと切実な問題をひとつ。「スカイアクティブ-D」専用のエンジンオイルは、ガソリン車用オイルの値段と比べると、実に2倍以上も高い。しかもマツダのクリーンディーゼルエンジンは非常に繊細で、定期的な交換が必須、しかも専用のオイル以外は使わない方がいいらしい。マツダが用意しているパッケージサービス「パックdeメンテ」に加入すれば、オイル交換1回の費用が4000円程度に抑えられるが、それでも割高なのは否めず、ショップで自分の好きな銘柄を選ぶこともできない。基本的にメンテナンスは、ディーラーにおまかせ状態だ。

以上長々と書いてしまったが、新型デミオの評価をひと言で言うと「メチャクチャ良い」。新型デミオはカー・オブ・ザ・イヤーも受賞し、世間一般の評価もすこぶる高いが、それも当然のこととうなずける。また私が感心したのは、デミオ自体もそうだが、マツダという会社が非常に高い志を持ってクルマを作ったということ。広島の小さな会社が、世界に先駆けてクリーンディーゼルを作ったのも素晴らしい。もはやすっかりマツダのとりこである。