2016年まで乗っていたクルマ of 茶房・風雲庵

〜 2016年まで乗っていたクルマ 〜

●スズキ・ジムニー(1994年)

旧・銃夢の仕事から身を引いて、一時的に実家に戻っていた94年ごろ。実家のとなりに住んでいた父親の兄、通称「裏のおじさん」が「ツトム、平日なら乗っていいぞ」と貸してくれたのが軽の本格4WD車、ジムニーだった。きれいなブルーメタリックのターボ車だったので、おそらく2代目のJA71型というタイプと思われる。

親友だった市村(高校の同級生でクルマ好き)を乗せてよく走ったが、その時に市村から、F1ドライバーのアイルトン・セナの事故死を聞かされた。特にF1ファンではなかった私でも、セナの死は衝撃だった。「セナよりも俺たちの方が(事故死する)確率は高いよなぁ」と市村と話したことを覚えている。

ジムニーは550ccの軽自動車だったが、アクセルを踏み込むとすぐにターボランプがついて、ギュイーンと豪快に加速した。当時、ガソリン代は親のカードで払っていたので気にしなかったが(笑)、燃費は相当悪かったに違いない。

その後ジムニーは「裏のおじさん」が運転している最中、横から別のクルマに突っ込まれて横転し、そのまま廃車になったという。幸いにもおじさんは軽傷で助かった。

●三菱・ジープ(1994〜95年)

ジムニーの次に私の足となったのは、父親が親戚からもらってきた三菱のジープ。米ウィリス社のライセンスを受け、日本の三菱が生産していたクルマである。親戚が農作業に使っていたもので、年式は不明だがこれもけっこう古かったと思う。

茶色のメタリックという珍しいボディカラーに、ビニール窓がついた「布製の幌」と、ゴツゴツとした「下駄タイヤ」をつけた純正仕様だった。このままでは乗り心地が悪すぎるので、父親がタイヤやシートなどを交換し、乗り心地がいい街乗り仕様に生まれ変わった。

車体が大柄で一見すると乗りにくいように見えるジープだが、車体が四角形で車両感覚がつかみやすく、また見晴らしが良くバックもしやすい、見た目とは裏腹に実に乗りやすいクルマだった。

驚くべきは、フロントガラスの高さが40cmほどしかない(!)こと。しかしフロントガラスが顔に近いので、特に問題なく運転できた。エアコンなんかついてないし、あちこち隙間があいていて寒いとか不便な点もあるが、走るだけでワイルドなキャンプ気分が味わえる楽しいクルマだった。

このクルマの最期は、前出の市村が買ったクルマを引き取りに、2人で街中を走っていた時だった。クラッチを踏んだところ、突如クラッチオイルがダダ漏れして走行不能になってしまった。すぐさま自動車屋に引き取られ、そのまま廃車に。

●スズキ・ワゴンR(2003〜05年)

wagonr001.jpg現在の「軽トールワゴン」の元祖となった、初代のワゴンR。もともとは木城ゆきとが自分用のクルマとして、90年代の中ごろに新車で購入したもの。電動サンルーフがついた「Loft」仕様車だった。木城ゆきとはしばらくワゴンRに乗ったあと、次にクライスラー・PTクルーザーを購入。ワゴンRは仕事場の買い出し用としていたが、さらに買い出し用途のホンダ・ザッツ(これも軽トールワゴン)を買うことになり、あまったワゴンRを私が引き取ることとなった。

そのころから千葉県に住んでいた私はバイクを用足しに使っていたのだが、当然のことながらワゴンRが来るとすこぶる便利。すでにだいぶ古いクルマだったが、近所の買い物などの用途にはぴったりのクルマだった。

wagonr002.jpgところが2003年9月、「父親がクモ膜下出血で倒れた」という連絡が入る。私はあわててワゴンRに飛び乗り、常磐自動車道を走って茨城県の病院を目指した。まだ蒸し暑い残暑の時期だったのだが、エアコンをつけるとガクンとパワーが落ちて、スピードは70kmぐらいしか出なくなってしまう。しかもエアコンが全然涼しくなくて、逆にエンジンの熱風が吹き出す始末。さらにサンルーフがUVカットではなかったのだろう、直射日光が太ももに当たって、焼けるように熱い。ジーンズの上から当たった日光で熱いのだから、相当な温度だったに違いない。太ももの上にタオルを敷いて何とか凌いだが、この一件が次のクルマに買い替えるきっかけとなった(幸い父親の方はさほどの後遺症もなく回復した)。

その後ワゴンRは知り合いのところに引き取られていったが、現在でも使われているかは不明。

●ホンダ・フィット(2005〜16年)

fit001.jpgワゴンRは普段使いなら問題ないものの、イザという時(特に暑い時期)にキツいと知って、2005年ごろ新車を買うことを決意。軽では高速道路を快適に走れない、とは言え大きなクルマは必要ないので、普通車ではもっとも小さい「コンパクトカー」クラスから選ぶことに。

しかし今までクルマに興味がなかったので、どの車種にするかは迷いに迷った。コンパクトカーはかわいらしいクルマばかりなのでデザインは置いておくとして、とにかく荷物が大量に積める「ユーティリティ性」を第一に考えた。最初はトヨタのファンカーゴにしようと思ったが、当時モデルチェンジすると言われていたので(後のトヨタ・ラクティス)これを見送り、第二候補のホンダ・フィット(初代)に決めたのだった。

fit003.jpg当時はまだ珍しかったカードキーやオートエアコンなど、豪華装備を満載したスポーツグレードの「S」の1.5リッター(AT)をチョイス。ホンダ独自のセンタータンクレイアウト(燃料タンクを薄くして床下に配置)のために中は広々。車格が違うクライスラー・PTクルーザーと同じくらい車内は広かった。パワーも必要充分、燃費もいいし乗りやすく、普段使いから小旅行くらいまでなら最高に便利なクルマだった。

反面、乗り心地はガタガタでロードノイズがうるさい、インテリアがひと昔前の軽自動車のように安っぽい、あちこち目につくコスト削減の跡も気になった。当時フィットユーザーの間では乗り心地改善のために、サスペンション上部のマウント部に、ドーナツ型に切り抜いたゴム板をはさみ込むという「お手軽DIYチューニング」が流行っていた。私もやってみて確かに乗り心地は良くなったのだが、こんな部品までコストを削っていると知って愕然となった。安いクルマと言えばそれまでだけど、設計思想まで安っぽいのはいただけない。

いろいろ悪い面も述べたが、フィットはなんだかんだと10年も乗り続けて愛着もある。自動車のことを知るきっかけにもなったし、友人知人を乗せてあちこち行った思い出があるので、やはり今まで乗ったクルマの中では一番思い入れのあるクルマだ。