柴又帝釈天 of 茶房・風雲庵

柴又帝釈天
江戸川サイクリングロード〜東京都葛飾区柴又
013.jpg
〜2004年6月22日〜
TEXT by 木城ツトム

前回の「江戸川プチサイクリング」の時に、サイクリングロードを北上する私に対して南下するルートを走って来たリカンベントライダーのN氏。氏は私との別れ様にこう言って走り去って行った。「今日はちょっと帝釈天まで

家に帰ってから地図を見れば、なるほど葛飾区柴又は、私の住む流山からわずか20数kmの距離である。これはうかつ!休みだった関宿博物館なんか行くんじゃなかった。しかし行ってしまったものは戻せないということで、今回のターゲットは葛飾区柴又・帝釈天に決定。


写真:今回の新装備010203


毎回恒例の今回のリカンベント新装備だが、前回のサイクリング時に気になる部分はほぼ取り替えてしまったため、今回の変更箇所はただ一点、ペダルのみ。前のマウンテンバイク用平ペダルから、プロ御用達・ビンディングペダルへの変更である(写真01)。シマノ・PD-M520Lという廉価版ながらも評価の高い一品。

ビンディング(binding)とは「縛る」という意味で、このペダルはペダルとシューズを機械的に結合し、脚力の伝達を限りなく高めようというシステムのこと。ペダルと足をひもで縛るのは自転車素人の私でもなんとなく知っていたのだが、今は機械式で固定してしまうんですな。しかしそんなことをして大丈夫なのだろうか…??自転車素人なら誰でもそう思う。

しかしこのビンディングペダル、長距離を走るなら今や必須のアイテムだという。ツーリングが主な目的である私としては、さけては通れない道である。ならば是非もない。ビンディング道など踏みならして平らにしてくれるわ!

さてこのビンディングペダル、シューズも専用品が必要で、シューズの底にクリートという接合金具をつけなければならない。シューズはSIDIというイタリア製をチョイス(写真02)。裏面はプラスチックでカチカチのツルツル。足の拇指球にあたる部分に金属製のクリートを取り付ける(写真03)。クリートには前後にツメがあり、メカメカしいペダルのバネ仕掛け金具が引っかかるという仕組み。はずす時は足首を外側にひねる。

効果は絶大と言われるこのビンディングペダル、話によれば、初心者は3回は立ちゴケを経験するという…ただでさえリカンベントなどという衆目を集めるマシンに乗ってて立ちゴケなどしようものなら、顔から出るバーニングファイヤーで周囲1kmは焼け野原確実。果たして柴又の平和は誰が守るのか!?


写真:江戸川サイクリングロード010203


前日21日の台風ストライクは終焉を迎え、22日決行当日は台風一過の超晴天。しかし台風の余力か、強烈な南風が吹いている。恐怖のビンディングペダルはかなりの効果を発揮しているようなのだが、いかんせんこの強烈な向かい風の中では、効果はスピードとして表れない。江戸川の水面に波が立つほどの強風であった。


写真:寅さん記念館柴又住宅地帝釈天に到着


埼玉県側の江戸川サイクリングロードを南下して東京都に入ると、途中公園があり、階段を下りると「寅さん記念館」入り口に続いている。柴又と言えばイコール「フーテンの寅さん」と言うわけで、要するに男はつらいんである。

私は特に寅さんファンではないのでここは通り過ぎて、案内に従って路地裏を進めばすぐに帝釈天にたどり着くのだが……例のビンディングペダル用クリート金具が、歩くたびに「カツーン!カツーン!」と音を立てる。しかもすべりやすくメチャクチャ歩きにくいため、つま先を上げたペンギン歩き状態。明らかに挙動不審である。周囲の通行人の視線がイタイ。

そのままアンドロイド歩行で歩いていくと、いきなり帝釈天の山門前に出てしまった。江戸川サイクリングロードから行くのは裏道で、京成線・柴又駅から参るのが本筋らしい。


写真:参道商店街帝釈天に接近


どうもいきなり帝釈天に入ってしまうのでは、参拝の雰囲気が盛り上がらない。なのでぐるりと回って柴又駅の方から歩いてみた。初詣ににぎわうような寺社仏閣だと参道商店街が長々と続くが、ここのは500mも続かない。ちょっと歩くとすぐに帝釈天山門にたどり着く。


写真:帝釈天・二天門01020304


帝釈天の山門(二天門)は、彫刻、彫刻、彫刻のオンパレード。彫刻フェスティバル。門自体はさほど大きくないが、この気合いの入り具合はすさまじい。


写真:帝釈天・本堂境内010203


境内にしろ建物にしろ、大きすぎず小さすぎず、バランスが良い感じ。それでも建物は風格があり、しかも山門と同じくそこかしこに彫刻旋風が吹き荒れる。境内ははじめ狭く感じるが、実は奥に庭園があり、ぐるっと見て回れる。


写真:帝釈天・彫刻ギャラリー彫刻ダブルドラゴン0102帝釈天絵馬


山門や本堂の彫刻にも驚いたが、奥へ行くとさらに「彫刻ギャラリー」というのがある。有料だが庭園めぐりとセット料金なので、400円払って入ってみた。

古い仏像が何体か並んでいてありがたい解説があるのかと思いきや……なんと本堂の外側の壁面にびっしり透かし彫りの彫刻が!!彫刻彫刻彫刻彫刻……まさに彫刻サファリパーク。写真も撮ったのだが、このスゴさはとても写真では表現しきれない。実際に行って見ることをお勧めする。

特に中段のマス目の透かし彫りは、一マスがひとつの仏教説話を表現していて見応えがある。大正末期から昭和初期に彫られたというこの彫刻は、物語によって作者が違うのだが(ちゃんと名前が入っている)どれを見ても圧倒される出来である。この一マスだけでも相当な製作時間がかかったと思われるのだが、外壁は上から下まですべてこんな感じ。さらに柱ごとにいちいち龍や獅子の彫り物がくっついている。

途中に昭和初期の絵馬というのが飾られていた。写真右上、黒服に白マスクの怪しい人物が帝釈天である


写真:庭園めぐり謎の石猿柴又駅前の寅さん像


彫刻ギャラリーのあと、渡り廊下をぐるりと回って庭園へ。大きな屋敷があり、彫刻の下絵などが飾られていた。さらに進むと、渡り廊下で庭園を回って堪能できると言う仕組み。途中、謎の石彫りの猿が奉られていた。当たり前な地蔵や仏像じゃないところにまた味わいがある。

さて帝釈天を出て寅さん像があるという柴又駅前へ。狭い駅前の真ん中に立つ寅さんのブロンズ像。歩いたとかしゃべったとかいう怪奇な噂はないのかと家に帰ってから調べてみたが(不謹慎)、今のところそのような噂はないようである。


帰り道の江戸川サイクリングロードは、強烈な南風が追い風となってさぞ快適かと思いきや、時速30km前後で巡航すると完全な無風状態となり、しかも風が熱を帯びていたため、直射日光との相乗効果でテリヤキ状態に陥った。あまりの暑さのため頭痛がしてきたほど。

ちなみに今回の走行距離は往復で約50km。ビンディングペダルの効果か足に全く疲労は残らなかったが、あれ以上走ってたら命に差し支えたであろう。コケてバーニングファイヤーすることはなかったものの、危うく脳がハードボイルドされるところであった。皆さんも夏場の運動には充分注意してもらいたい。