世界最大・牛久大仏 of 茶房・風雲庵

世界最大・牛久大仏(うしくだいぶつ)
利根運河〜利根川〜茨城県牛久市
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〜2004年4月23日〜
TEXT by 木城ツトム

首都東京の50km圏内に位置していながら、そのあまりのローカルさ故に「南東北」とまで揶揄されてしまう北関東・茨城。その茨城にあってさらにマイナー色の強いのが、茨城の南東に位置する牛久市である。ほとんどの人は名前すら知らないと思われるこの土地に、実は、世界最大の大仏があるのをみなさんはご存知だろうか。日本最大ではない。世界最大である!(高さ120m、重さ4000t!

この大仏は牛久アケイディアという霊園の真ん中にいきなり建っていて、まわりには寺社仏閣のたぐいはまったくなく、広大な墓所の他には花畑やふれあい動物公園などのなごみ系施設が広がっている。実に奇妙な光景だ。

この大仏は出来上がってまだ10年たらずの「新仏」で、私はその昔バイクで走って見に行った事があった。しかしその時は霊園が開園する直前のことで、外から大仏は見られたものの中には入れずに無念の帰路についた。以来、いつかはリベンジに行かねばならぬと思っていたターゲットであった。

いよいよ「リベンジ」の時は来たれり。我がリカンベント「スティンガー」のツーリングレポのネタにしてくれよう。首を洗って待っておれ牛久大仏!


前回のリカンベント初ツーリングで自宅の流山市から下妻市までの距離60kmを走破した私には、地図上で下妻より近い牛久市は、素人自転車ツーリングの目的地としては現実的な距離だ。しかし問題は、川沿いのサイクリングロードを走った前回と違ってアップダウンの激しい一般道を走らねばならない事と、一般道故に、サイクリングロードのような単純な道順ではないということだった。なお私は極度の方向オンチであり、今来た道を戻って帰れないという特技の持ち主である。はたしてリベンジはなるのか?


写真01:今回の変更点


リカンベント・スティンガーは今回、デフォルトで装着されていたオランダ製タイヤ「VREDESTEIN(ヴレデシュタイン) S-LICS」(20x1.3インチ/420g)から、パナレーサー(パナソニック松下系の自転車ブランド)のタイヤ「パセラ・コンパクト(ケブラービード)」(20x1.5インチ/250g)に変更。これにより足回り重量が軽くなり、さらに太くなって乗り心地の向上に期待が高まる。

なおスポークがブラックになって足下が引き締まって見えるが、これはホイールやスポークを換えたのではなく、スプレーで塗装しただけの「なんちゃってエアロ風スポーク」。おそらく塗装面の耐久性が今後の課題であろう(超意味なし)。


写真02:利根川サイクリングロード


さて決行当日はあいにくの曇天。前日は真夏日のように暑かったのであえて晴天の日は避け、わざわざくもりの日を選んだのだが、徐々に気温が下がってきてえらい事に…よく考えてみればまだ4月であった。寒い日もあって当然である

道順は千葉〜茨城ルートなので、途中までは前回と同じサイクリングロードを通過。そこから一般道に入って小貝川を通り抜け、ダンプがばんばん走る県道を右へ左へ。


写真03:牛久沼


ちょっとわかりにくいが、畑のむこうに広がっているのが牛久沼。ここまで一般道を命からがら必死に走って来たので、途中で写真を撮るような余裕は全然なかった。まぁ写真に撮るような風景でもないが。

国道や県道などと言っても別に広いわけでも路面が平らなわけでもなく、しかも自転車が通る事など微塵も考えていない道も多い。段差も坂もこれでもかと言うほど続く。コケたらあの世行きかと思うと、低速走行時に不安定なリカンベントは危険きわまりない。一応赤い自転車に赤い上着、赤い手袋に赤ヘルメットと赤ずくめで走っていたので、車はみなよけて走ってくれたのは助かった。夜は考えただけでも恐ろしいのでとても走る気はしない。


写真04:大仏接近


大仏まであと数キロ、坂を越えたところで突如前方に大仏が出現。写真では小さく見えるが、肉眼ではそうとう大きく見えるのでびっくりする。途中、天候不順がさらに悪化して雨に降られたが、その間は雨宿りしつつコンビニの牛丼で少し早い昼食。家を出たのが朝8時ごろだったので、ここまでですでに3時間以上走っている。

この後走行中にチェーンが外れるなどの軽いトラブルに見舞われるが、気力で走り続け、12時ごろやっと「牛久アケイディア」に到着。


写真05:大仏全景


まわりに比較対象物が何もないので、写真ではどれほど大きいのかわかりづらい。下に停めてあるリカンベント・スティンガーは長さ1.7m。大仏は人差し指だけで7m。とにかくデカイ。


写真06:駐車場から


まわりに寺社仏閣などの由緒ある建築物がないこともあり、信仰心うんぬんよりは単純に「仏教系テーマパーク」の様相を示している。駐車場ももちろん完備、さらには園内放送でマジックショーやお猿の曲芸の案内が流れている。


写真07:大仏入り口


やはり拝観料を取られるが、動物公園とセットで800円!ちと高すぎ。


写真08:1/1000 大仏頭部模型


順路の途中にある大仏の縮尺頭部。後ろは本物。本物が見える位置に小さいのがあっても意味がないような。


写真09:正門


ここをまっすぐ行くと大仏の足下にたどり着く。一生懸命ありがたみを演出しようとする努力が感じられるが、いかんせん歴史が浅くモノが真新しいので、ありがたみより建築費の方が気になってしまう。いかんいかん、この機に汚れた魂を浄化してもらわねば。


写真10:横超(おうちょう)の橋


大仏の足下まで行く途中にちびっこい石橋があって、写真のような説明書きが。脇には小さい池があり、ちょろちょろと申し訳なさそうに水が流れている。きちんと由来も記して欲しい所だが、こういうのを見ると、素直に見本にそって渡ってしまう自分も悲しい。ビバ日本人


写真11:大仏足下


大仏の足下にたどり着いても、大仏内部への入り口はぐるりと回った裏側。「ここから見上げると大迫力です」などといらぬおせっかいな看板が立つ。で、つい見上げて写真を撮ってしまう悲しい自分


写真12:大仏内部入り口


大仏背後にある入り口。いきなりズカズカ入れるわけではなく、土足厳禁の演劇ホールのような入場口。ちなみに駐車場にはけっこう車が停まっていたのに、ここは閑散としていた。中に入ると真っ暗な8畳ほどの部屋に突き当たり、おごそかなBGMとともに大仏内部の施設の案内音声が流れる。そして前方の扉が開くと…。


写真13:1F「光の世界」


ゴーヂャスなイルミネーションに飾られた、高級ホテルのような近代的内装(笑)。外観とのあまりのギャップに笑い転げそうになるが、私一人だけだったので恥ずかしいから我慢した。このある種極まった装飾の数々は、まさにバブル期を象徴する大仏であると言えよう。


写真14:2F「知恩報徳の世界」


壁際にはたくさんのライトテーブル(トレース台)と座布団が並ぶ。ここは写経する場所らしいが、さすがに平日とあって写経している人はいなかった。


写真15:阿弥陀様へのおたより


大仏様の絵馬があったので、ここは私もひとつあやかっておかねばなるまい。ま、ありきたりな願い事ではあるが、生きてツーリングを終える事ができたので良しとしよう。


写真16:牛久大仏・建設記録
写真17:頭部の鉄骨模型
写真18:左手の鉄骨模型


こんな大事業がひそかに行なわれていたことが、だいたいショックである。建築に10年かかったというから、始まった当初は、私はまだ茨城の実家にいたことになる。全然知らなかったのだが。

こんな巨大で複雑な物体が、台風や地震でよく崩れないものだと…あらためて現代建築技術の高さを思い知る。しかしこういう大事業は、大昔ならば信仰心の表れと素直に感じることができようが、現代においては「バブルの塔」と思われるのがオチであろう。あまりやりすぎると逆効果かも知れない。


写真19:エレベーターを待つ


ここからはエレベーターで一気に5階まで登る。エレベーターを待つこと5分。あちこちに案内係のお姉さんやおばさんがうろうろしているが、お坊さんは全然いないので、今ひとつおごそかな気分に浸りきれない。まぁ仏教系資料館と思えばいいのだが。


写真20:4F・5F「霊鷲山(りょうじゅせん)の間」


写真はおそらく大仏の背中側に開いている穴。あいにくの曇天でせっかくの景色もよく見えない。


写真21:5Fフロア展示


なんか金ピカの仏像やら釈迦の絵巻やらが並ぶが、やはり真新しすぎてありがたみは今ひとつ。


写真22:5F、メインの大仏展望台
写真23:外界を見る


大仏の胸に開いている3本の縦窓。3つの窓どれから外を見ても、同じ景色が見えると言う。そりゃそうだ。ここまでが最上階の地上85mで、残念ながら頭までは登ることができない。エレベーターで5階まで登る仕様といい、何故階段で頂点まで登れるようにしなかったのか疑問だったが、よく考えてみれば、客の対象年齢は昇天間際の高齢者(失礼)なわけで、まさか大仏様の中で昇天させるわけにはいかないとの配慮であろう。


写真24:3F「蓮華蔵世界」


4階からエレベーターで今度は3階へ。至るところ金色の仏像、仏像、また仏像。仏像百連発。正確には3000体もの仏像があるという。仏像には下に名札が貼ってある。小さいので30万円、大きいので100万円を払って、中に遺骨を納めているらしい。


写真25:壁には…


誇らしげに飾られているギネスの認定証。世界一の大仏の証明。しかし大仏と言えば普通は座っているもので、立ってるのは反則だろうと思いきや、銅製の建造物としても世界一なのだとか。そしてここでもタマちゃんは人気者だ。


おまけ:「日々のおつとめ」


大仏内で売られていたグッズのひとつ。DVDほどのパッケージだが「カセットテープ」とあるので、お経か何かのテープが2本入っているのだろう。と、何気に手に取って思わず爆笑。こんな仕事してるのかセガ!


この後は用事もあったので、25kmほど走って、つくば市にあるユキトプロの仕事場に到着。しかし計75km走った疲れと、夕方に天候が悪化し雷雨になってしまったので、そのままその日は仕事場で一泊し、翌日帰宅。帰りは流山まで距離35kmで、合計にして110kmのツーリングとなった。一般道は危険だし疲れる。次はもう少し考えねば。