ページ2 of 茶房・風雲庵

本革ツールバッグ製作記

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2009年9月9日 木城ツトム

006.jpgベロパーツを仕上げ、側面パーツの周りをを黒く染める007.jpg側面パーツの内側にベロパーツを縫い付けた状態005.jpgやはり2.5mm革で2cm幅のベルトパーツを切り出す008.jpgコバと裏面を黒く仕上げ、穴を開けたベルトパーツ

続けてそのまま細かいパーツから仕上げていく。革の仕上げ方は、まずヘリ落としで戴断面の角をけずってヤスリで丸く整え、次に染料で革の断面や裏面を染めたあと、CMCという粉を溶いた透明な糊を断面・裏面に塗って乾かす。そこをコバ磨きやウッドブロックでこすると、毛羽立ちが抑えられ光沢が出てなめらかになる。これで仕上がり完了。

その要領でベロパーツを仕上げたら、側面パーツ内側の真ん中にゴム系接着剤を塗り、ベロパーツを張り合わせ、ヒシ目打ちで縫い穴を打ってナイロン糸で縫い合わせる。今回、糸は黒い革に映える赤色を、また擦れに強いナイロン製をチョイス。

次に、2cm幅で切り出した各ベルトパーツの形を切り整え、黒く染めてコバと裏面を仕上げる。ついでにフタに付けるベルト止めパーツも新たに切り出し、コバを仕上げ、フタパーツと合わせて縫い穴を開けておく。

ここまでは特に難しいこともなくサクサクと進んでいった。

009.jpg本体パーツにベルト(長)を縫い付ける011.jpgベルト(短)を差し込み、裏からカシメで留める010.jpgフタパーツのふちを縫い、ベルト止めをつける

しかしここからは、完成時のイメージに直接影響する作業なのでだんだん難しくなってくる。本体パーツとフタパーツを何度も丸めて重ね、完成時のベルトの位置を見定める。位置を決めたら慎重に必要な穴を開け、コバ・裏面を仕上げる。本体にはまずベルト(長)を縫い付けるがカシメは打たず、バックルのついたベルト(短)を穴から通し、ベルト(短)、本体、ベルト(長)を3つまとめてカシメで打って留める。

これが金属製品だったりしたら1mmのズレも大変なミスになってしまうが、革の場合は柔らかく延びるので、少しぐらいのズレは吸収してくれるのがありがたい。作業中についた革表面のキズなども、味として見逃せる大らかさが初心者にはうれしいところだ。

さてフタパーツにはベルトの位置に合わせ、ベルトを通すベルト止めを縫い付ける。さらに見た目と強度を考え、両側にカシメを打った。また強度とは関係ないが、フタのふちを縫い、赤いステッチでオシャレに仕上げてみた。

012.jpg接着剤で本体パーツと側面パーツを張り合わせる013.jpgこの状態でしばらく我慢……014.jpg仮組みでフタパーツをかぶせてみる015.jpgフタパーツはまだ縫い合わせていない

次にいよいよツールバッグ製作の最大の山場、本体パーツと側面パーツの縫い合わせ作業に入る。ここはツールバッグの形が出来てくる基礎部分であり、完成時の仕上がり具合に大きく影響する部分なので緊張してしまう。なにしろ私のこのやり方で、きちんと完成する保証などどこにもないのだ。

しかしビビってても始まらないので、まずは本体と側面パーツの縫い代にゴム系接着剤を塗り、ベトつかなくなったら慎重に位置を定めて強く押さえる。そのままクリップなどではさんで押さえ、乾燥するのをじっと待つ。

接着剤だけでもかなり強力にくっつくため、とりあえずフタパーツをかぶせてベルトを通し、仮組みしてみた。ついに完成時のツールバッグが姿を現した。本当にできるのかどうかハラハラしたが、大きさも手ごろでなかなか良い感じではないか。

しかしここで難問が持ち上がった。本体と側面パーツ縫い合わせる作業なのだが、ふたつのパーツの縫い穴をどう開けて、どう合わせるかが問題なのである。なにしろ形が円筒形で革の厚みもあるため、パーツごとにヒシ目打ちで縫い穴を開けても、丸めて合わせた時に穴がズレてしまう。しかし接着剤で張り合わせてしまうと、下から台で押さえられず、ヒシ目打ちで打てなくなってしまうのだ。

016.jpg側面パーツを縫い合わせ、コバを磨いて仕上げる017.jpg強度不足にならないよう、底の革を二重にしてみた018.jpg本体後ろ側。フタパーツの縫い穴が開けてある019.jpg本体はほぼこれで完成

結局やむを得ず、本体パーツの縫い代に縫い穴を開けておき、張り合わせてから、ひと穴ずつキリで側面パーツにまで穴を貫通させるという、実に手間のかかる方法を取った。それからナイロン糸でチクチクと縫うわけだが、縫い穴が小さいため針に抵抗がかかり、いちいちラジオペンチを使って引っこ抜くような手間を強いられる。そのため針が根元で折れる折れる。(T_T)

意識もうろうとなりながらも側面パーツを縫い終わり、続いて本体・側面パーツの合わさったコバを、ヤスリやサンドペーパーでけずって形を整える。しかし側面パーツの縫い代が小さすぎたため、いささかコバがデコボコになってしまった。通常通りCMCで仕上げてもデコボコのままなので、コバスーパーというウレタン塗料を何度も重ね塗りし、さらにコンパウンドで表面を磨き、やっとある程度なめらかになった。一応それなりの仕上がりとなって満足しているが、こういうところの仕上がり具合がプロと素人との差なのだろう。

ついでに製作途中、3.5mm革の本体パーツだけでは強度的に型くずれを起こす気がしてきて、底にさらにもう1枚、3.5mm革をカシメで固定してみた。二重底とすることでかなり強度が増し、これで型くずれの心配はなくなった。