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鋸山・日本寺ツーリング
千葉県安房郡鋸南町・鋸山(のこぎりやま)

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2010年11月30日 木城ツトム

仕事の方の“銃夢LO移籍問題”で3ヶ月もの休みがあったにも関わらず、今年の夏はどうにも気分がモヤモヤしてツーリングに行く気にならなかった。だがさすがにそろそろ走らないと、もう2010年が終わってしまう。愛車ハーレー・ファットボブも車体カバーの下で泣いておろう、ということで目的地を物色。その中で以前から気になっていた、房総半島は東京湾沿いに位置する鋸山・日本寺(のこぎりやま・にほんじ)にターゲットを定めた。

高さ約330mと小ぶりな鋸山は古来より石の産地だったらしく、その山全体を境内とする日本寺では、石切り場の絶景や石仏群が見られるという。それにしても一介の寺の名前に「日本」とはずいぶん大げさな名前である。実に怪しい。

ところで私の住まいがある流山市と、日本寺がある鋸南町(きょなんまち)は同じ千葉県内。一見近いようにも思えるのだが、東京に近い北西部の流山市から南下して房総半島に行くにはゴチャゴチャとした一般道を走らなければならず、えらい時間がかかってしまう。高速でサッと行ける東京や他県より、南房総の方がはるかに遠いイメージがある。

実際グーグルマップの「ルート・乗換案内」で調べてみると、方向が違う首都高に入って東京を通り抜け、神奈川県川崎市から東京湾アクアラインで東京湾を横断して千葉県に戻り、館山自動車道で南下するという「東京・神奈川素通りルート」が最短ルートとして示されるのだ。まあ方向音痴の私でも高速ならわかりやすいし、バイクでアクアラインを走ったことがなかったので、今回は高速ツーリングということでアクアラインルートで行くことに決定。

00000.jpg自作ツールバッグ・サドルバッグ装備完了00001.jpgアクアラインの海ほたるから、木更津方面を望む00002.jpg南房総、鋸南町(きょなんまち)の鋸山に到着00003.jpg東京湾を臨む場所でボブ太郎の記念撮影

晩秋の爽快な好天に恵まれた11月30日早朝8時、愛車ハーレー・ファットボブに火を入れた。今回の装備ガジェットは前回同様、ガーミンのポータブルナペンタックス・オプティオW90のふたつ。ハーレー本体にはウィンドシールドに自作の超大型サドルバッグ、そして私自身は下着にユニクロのヒートテックシャツ、その上にも長袖1枚、そしてアウター・インナー別体式の真冬用ライダージャケットの重装備。さらに下半身もタイツにジーンズでバッチリ防寒。

だが走り出して1時間ほどで不測の事態が発生。今回もデジカメのオプティオで走行シーンを動画撮影していたのだが、走り出して20分ほどでまさかのバッテリー切れ。予備のバッテリーに入れ替えるも、こっちも初めから残量が少ない。どうやら寒さのせいでバッテリーが弱まったらしい。これはウカツだった。やむを得ず単3電池で充電できる充電器にバッテリーをセットし、今回は動画撮影はしないことにした。アクアラインの走行を動画で撮りたかったのだが実に無念。

再び走り出し、いよいよアクアラインに突入。きれいな海底トンネル内をまっすぐ突き進んでいく。今回初めて知ったが、トンネル内はずいぶんと暖かい。風がトンネル内に溜まっているせいなのか、今の季節に走ると実に快適♪

海の下のトンネルを10kmほど走ると、アクアライン名物の巨大パーキングエリア「海ほたる」があるので、ちょいと立ち寄ってトイレタイム。ここは食事やショッピングもできて東京湾の景色も楽しめるが、ガソリンスタンドがないのは要注意だ。この日は平日だったのだが、大勢の観光客でにぎわっていた。ハーレーライダーもチラホラ。

缶コーヒーで一服したら再び出発。ここからは海底トンネルから海の上に抜け、海上の直線道路を気分よく走り抜けてゆく。海の眺めが素晴らしくトンネル内より走ってて爽快だが、さすがに海の上だけあって風が強い。しかし強い海風もまたツーリングの醍醐味。

00004.jpg日本寺東口の無料駐車場。騒がしいと思ったらサルがいた00005.jpg日本寺東口。この他に4ヶ所も入り口がある00006.jpg鋸山を望む。空の青さと木々の色彩が美しい00007.jpg紅と黄のコントラストが目にまぶしい

ほどなくアクアライン千葉県側の木更津市に入り、館山自動車道を南下して目的地の鋸南町・鋸山に10時半ごろ到着。鋸山にはロープウェイもあるのだが、今回は通りすぎて、ふもとの表参道入り口よりさらに裏手にある東口の無料駐車場へ。紅葉の季節は過ぎたのに、山はまだ黄色や赤のカラフルな色彩を残している。バイクを停め、ここで宇宙服のようにクソ重い冬用ライディングジャケットを脱ぐ。このジャケットには別体式になっているインナージャケットが組みになっていて、軽いインナージャケットだけで着て歩けるようになっているのだ。これから山をのぼることになるので、インナージャケットだけで身を軽くしておこうという作戦だった。だがしかし、私はこの鋸山・日本寺を完全に甘く見ていた。まさかこの先に地獄が待っていようとは……!!

拝観料600円を払い、パンフレットと入場券をもらって東口からいざ突入。いきなり古い大黒堂がそびえ立っているが、道が左右に分かれていてどっちにいけばいいのかわからない。順路というのがないみたいなので、とりあえずヤマカンで左に歩いていく。石をくりぬいて作られた古いお稲荷さんや、苔むした石碑が目を引く。進んだ先には海底から引き上げられたという古い釣り鐘があるが、その先は出口らしいので来た道を引き返す。

00008.jpg大黒堂。かつて空海が彫ったという大黒天を祀る00009.jpg石をくりぬいた穴にお稲荷さんがある00010.jpg苔むしたおきつね様。かわいらしい00011.jpg石に彫られた不動明王
00013.jpg大仏広場に鎮座する巨大な日本寺大仏00012.jpg磨崖仏としては日本一。さすがの大迫力00014.jpg羅漢エリアの五百羅漢像。一体一体微妙に違う00015.jpgときどきこういう「中ボスキャラ」がいる

最初に見た大黒堂を通り抜けると、木々の紅葉と黄色いイチョウの美しさが目に染みる。こういう色彩を美しいと思ってしまうのは、私もトシを取った証拠なのか。そこから石段を登っていくと開けた場所に出た。その広場の奥にドドド〜〜〜ンと鎮座ましますのは、高さが31mもある超巨大な「日本寺大仏」。奈良の大仏の大きさが約18mというから、その迫力が伺い知れよう。石を掘って作られた磨崖仏としては日本最大だという。まさかこんなところに日本最大の石仏があるとは、千葉生まれの私も知らなかった。なんという灯台下暗し!

広場からはまた道がふたつに分かれていて、一方は急な石段で上にのぼっている。ここは体力があるうちに上にのぼった方がいいと判断して石段を選んだが、のぼり始めて5分で後悔した。角度が急な上に、段差が高く足の踏み場がせまいという参拝者泣かせの階段なのだ。しかもつづら折りに続いていて先が見えず、のぼってものぼっても終わらない石段地獄。ただでさえ運動不足の私の老体は汗ダラダラ、足ガクガクの瀕死状態でヨロヨロとのぼっていく。実はこの石段が1番長くこの山最大の難所だったのだが、別ルートの石段からのぼっていって、こっちの石段で降りた方が楽だったかも知れない。とにかく一度のぼり始めてしまったからには引き返すこともできず、ゼェゼェ息を切らしながらゾンビのように歩を進めていった。