ページ2 of 茶房・風雲庵

不二洞・上野スカイブリッジツーリング
群馬県多野郡上野村

title.jpg

2014年4月25日 木城ツトム

017.jpg洞内の全容を見極めようとして迷ってしまい、戻らなかった者も多いという018.jpg不二洞最大のホール。鍾乳石もあぶくま洞にはかなわないが、不気味な雰囲気が漂う019.jpg大きい石筍(せきじゅん)の「蓮華の塔」。悪の組織の怪物が生まれてきそう020.jpg水に濡れたコンクリートの階段が、いい具合に地下基地の雰囲気を出している
021.jpg有機的な鍾乳石と人工的な電源コードのコラボレーションが非常にSFチック022.jpg仮面ライダーや70年代特撮番組の世代にはたまらない雰囲気。ワクワクが止まらない023.jpg大人がぎりぎり通れるくらいの細い通路。この先になにがあるのかドキドキ024.jpg前後左右だけではなく、上下にも順路が続いている。立体的に入り組んだ洞内

この日はご老人の観光客が団体で来ていてにぎわっていたが、階段の途中で休んでいたり、引き返したりする人がチラホラ見られた。ここの坂道と螺旋階段のコンボは、老人たちには厳し過ぎるのだろう。やっとのことで階段を登り切ると、ちょっとした小部屋のようなところに出た。そこからギリギリ人が通れるような通路があちこちに延びている。通路の先にそれぞれ部屋があるような感じで、鍾乳石に覆われていなければ人工的に作ったのかと思うほど。

しばらく見ているうちになるほどと理解した。ここ「不二洞」の見どころは鍾乳石ではない。壁面のオドロオドロしい鍾乳石と照明のライティング、そして鉄とコンクリの階段によって生まれた、ものすごい「秘密基地」感なのである。それも悪の組織が改造人間を作り、地下の基地で世界征服を企てているといった「悪の匂い」だ。ここに数日留まっていたら、世界征服しなければ!と思うこと間違いない。昔はここで僧侶が修行したそうだが、よく世界征服に走らなかったものだと感心する(笑)。

鍾乳石があるところには名前が付けられているが、坊さんが修行をしていたせいか「三途の川」や「浄土の泉」といった仏教っぽい名前が多い。そのうち順路のド真ん中を、さえぎるように直立する鍾乳石の太い柱が現れた。この柱は「閻魔の金剛杖」と名前が付けられ、7回なでながら願いをかけるとかなうと書かれているのだが、ここでまた音声案内のお姉さんの声が。「(なでると願いがかなうけど)でも、あまり欲張り過ぎないでくださいね」と気が抜ける案内を繰り返している。

025.jpgアーチ型の天井と下に降りる階段。組織の戦闘員が集団で走ってきそうな雰囲気026.jpg「さいの河原」と呼ばれる小空間。小石がたくさん積まれていて河原感を出している027.jpgちょっとオカルティックな雰囲気が漂う、岩の割れ目に差し込まれた一円玉の数々028.jpg私も一円玉を差し込んでみた。決して刺してあった一円を盗んでいるのではない
029.jpg通路に開いたふたつの穴。通路は向こうでつながっているのだが面白い作り030.jpg「空穴」という、ちょうど人ひとり分のスペースが開いたステージ状の空間031.jpg「空穴」の頭上にポッカリ開いた穴。日の光が差し込み、木の葉が落ちてくる032.jpg不二洞の出口。入り口からはるか上、山の中腹の斜面から出る格好になっている

さらに先に進むと、石柱がポコポコと立った「六地蔵」というコーナーがあるが、なぜかここだけびっしりとシダ類?のような細かい植物に覆われている。コケではない植物がここにだけ生えているのも不思議だ。壁にはあちこちに穴が空いていて、通路は相変わらずちょうど人が通れるくらいの大きさ。空間の広さ的には、人が軽く20人くらい住めるような感じだ。足腰はすでにガタガタで全身汗だく、洞内の寒さにさすがに汗が冷えてきたが、このあまりの「秘密基地」っぷりにワクワク感が止まらない。

不二洞で1番大きいホールを抜け、「さいの河原」という場所に出た。小石が積み重ねられ、賽の河原感を演出している。しかし特に見るものもないので戻ろうとしたところ、天井の岩の割れ目から丸いものがたくさん突き出ているではないか。ビックリしてよく見ると、観光客が「1円玉」を岩の割れ目に刺していったものだった。賽の河原うんぬんはともかく、この天井だけはやけにオカルティックな雰囲気だ。私もオカルティックな雰囲気を盛り上げるべく、1円玉を出して割れ目に刺しておいた。

さて「さいの河原」から戻ると、順路の途中に出口があるのだが、洞内はもう少し奥に続いている。奥には人がちょうどひとり立てるような、ステージみたいな穴がポッカリと空いている。足元にやたらに落ち葉が落ちていると思ったら、ステージ状の穴の上から日が射している。天井に小さい穴が開いているのだ。よく石が崩れてふさがらないものだと感心する。