この日はご老人の観光客が団体で来ていてにぎわっていたが、階段の途中で休んでいたり、引き返したりする人がチラホラ見られた。ここの坂道と螺旋階段のコンボは、老人たちには厳し過ぎるのだろう。やっとのことで階段を登り切ると、ちょっとした小部屋のようなところに出た。そこからギリギリ人が通れるような通路があちこちに延びている。通路の先にそれぞれ部屋があるような感じで、鍾乳石に覆われていなければ人工的に作ったのかと思うほど。
しばらく見ているうちになるほどと理解した。ここ「不二洞」の見どころは鍾乳石ではない。壁面のオドロオドロしい鍾乳石と照明のライティング、そして鉄とコンクリの階段によって生まれた、ものすごい「秘密基地」感なのである。それも悪の組織が改造人間を作り、地下の基地で世界征服を企てているといった「悪の匂い」だ。ここに数日留まっていたら、世界征服しなければ!と思うこと間違いない。昔はここで僧侶が修行したそうだが、よく世界征服に走らなかったものだと感心する(笑)。
鍾乳石があるところには名前が付けられているが、坊さんが修行をしていたせいか「三途の川」や「浄土の泉」といった仏教っぽい名前が多い。そのうち順路のド真ん中を、さえぎるように直立する鍾乳石の太い柱が現れた。この柱は「閻魔の金剛杖」と名前が付けられ、7回なでながら願いをかけるとかなうと書かれているのだが、ここでまた音声案内のお姉さんの声が。「(なでると願いがかなうけど)でも、あまり欲張り過ぎないでくださいね」と気が抜ける案内を繰り返している。
さらに先に進むと、石柱がポコポコと立った「六地蔵」というコーナーがあるが、なぜかここだけびっしりとシダ類?のような細かい植物に覆われている。コケではない植物がここにだけ生えているのも不思議だ。壁にはあちこちに穴が空いていて、通路は相変わらずちょうど人が通れるくらいの大きさ。空間の広さ的には、人が軽く20人くらい住めるような感じだ。足腰はすでにガタガタで全身汗だく、洞内の寒さにさすがに汗が冷えてきたが、このあまりの「秘密基地」っぷりにワクワク感が止まらない。
不二洞で1番大きいホールを抜け、「さいの河原」という場所に出た。小石が積み重ねられ、賽の河原感を演出している。しかし特に見るものもないので戻ろうとしたところ、天井の岩の割れ目から丸いものがたくさん突き出ているではないか。ビックリしてよく見ると、観光客が「1円玉」を岩の割れ目に刺していったものだった。賽の河原うんぬんはともかく、この天井だけはやけにオカルティックな雰囲気だ。私もオカルティックな雰囲気を盛り上げるべく、1円玉を出して割れ目に刺しておいた。
さて「さいの河原」から戻ると、順路の途中に出口があるのだが、洞内はもう少し奥に続いている。奥には人がちょうどひとり立てるような、ステージみたいな穴がポッカリと空いている。足元にやたらに落ち葉が落ちていると思ったら、ステージ状の穴の上から日が射している。天井に小さい穴が開いているのだ。よく石が崩れてふさがらないものだと感心する。