そしていざあぶくま洞の洞内へ。中はせまく水がしたたって床がビシャビシャだが、意外にも寒くはない。入り口から壁は鍾乳石に覆われているが、照明が少なく、暗くて細部がよくわからない。適当に周りを見ながら奥に進んでいく。
途中にはすでに奇妙な形の鍾乳石もあるのだが、先に進めば進むほど通路がどんどんせまくなっていく。したたる水の量も増えてきて、気をつけないとカメラにかかってしまう。頭上にも容赦なく鍾乳石が張り出し、行けども行けども同じような鍾乳石のせまい通路が続いている。いつまでこの通路が続くのかと思っていると、いきなり受付のような机があって職員のオジサンが座っている。
「ハイ、チャレンジコースの方は右へ行ってください。一般の方は左ね……」
別料金を払って行くことができる「チャレンジコース」の分岐点だった。私は一般コースだったので左に進み、これまたせまくてスベリやすい金属製の階段をひいこら登って行くと、さっき分岐点にいたはずのオジサンが先にいるではないか。どうやらあちこちに職員用の通路があるらしいのだが、オジサン以外にもちらほら職員がいて案内をしているようだ。こんな湿気の高い場所にずっといて、体調を崩さないのか他人事ながら心配になる。
もうだいぶ洞内の奥まで進み、そろそろ終わりなのか?と思わせたところで、唐突に広い空間に出た。ここがあぶくま洞最大の見せ場である「滝根御殿」で、天上までの高さは約30mもある大空洞である。その空間の中にこれでもかというほどの奇怪な鍾乳石の数々。スケールがわかりにくいが、鍾乳石ひとつひとつがデカい。ライトアップ効果と相まって、地球上とは思えないような光景になっている。
ここあぶくま洞の洞内はカメラ撮影OKなのだが、なるほどこの光景は、写真や動画では伝えきれない見事さだ。特に関東から行ける鍾乳洞としては、ここあぶくま洞の規模は随一と言っていいかも知れない。ちなみに秋芳洞(山口県)竜泉洞(宮城県)竜河洞(高知県)の3つを「日本三大鍾乳洞」と言い、これに福島県のあぶくま洞と沖縄県の玉泉洞を加えたものが「日本五大鍾乳洞」(というのがあった気が…)で、私は沖縄県を除く4つに訪れたことがあるが、洞内の美しさでは竜泉洞とあぶくま洞が頭ひとつ抜けている感じがする。