絵コンテ「RAINMAKER」(1)
〜1989年

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舞台はサイボーグ犯罪が吹き荒れる近未来の都市。
最愛の恋人を惨殺され廃人同然となった男ボックス・ゴドーはある組織からスカウトされ、
警察の対処しきれない犯罪者を狩る武装サイボーグ・エージェント、コードネーム「RAINMAKER」となる。
恋人を殺した仇敵、「ワーウルフ」と呼ばれる犯罪者を立体墓地に追いつめた彼はボロボロの心を抱えたまま、最後の戦いに挑む…。
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確か「RAINMAKER」の初稿は上記のようなあらすじだったと思う。
設定そのものはありきたりでなんの新味もないが、この作品の主題は現在進行形の事件にリズミカルに回想シーンを挿入して情感を盛り上げる演出にあった。
これは映画「ハイランダー」の影響である。
またストーリーにはQueensrycheの「Operation:mindcrime」からの影響を強く受けた。今日ヘヴィメタル史上永遠の名盤のひとつと言われるコンセプト・アルバムである。
タイトルにもなっている「RAINMAKER」とは雨乞い術師のことであるが、これはKANSASの「In The Spirit of Things」というアルバムの中の同名の曲に強く感動したことからつけた。
ストーリーの中では、乾ききった砂漠のような都市に慈悲の雨を降らせますように…という願いがこめられた名前となっている。
後の「銃夢」に流用されたキャラクターに、ビゴット局長やシュミラ(「RAINMAKER」ではフィリスという名前)がいる。
さて、この「RAINMAKER」初稿を、当時週間少年サンデーの編集者だったO氏に持ちこんで見せたところ、すごく反応がよかった。
もう少しリファインしてくれ、と言われたので、第2稿を描くことになる。
…白状すると、この「RAINMAKER」はあまりにたくさんのバージョンを描き、それぞれ少しづつ設定やストーリーが違うため、僕の記憶が混乱してしまっている。絵コンテも切り張りして使い回ししたため初期のバージョンは原形をとどめていない。そのため細かい事実や時系列が違うかもしれないが、どっちみち当事者しか知らないことなので簡単にはしょって書き記す。
久々に褒められたことでがぜんやる気を出した僕は、設定をいじり回し、初稿で簡単に触れているだけだった人物の描写や設定などを付け加えていった結果、長編になってしまった。
そこで途中までの話を一話あたり20数ページで3〜4話分描き、再びO氏に持ちこんだ。
この連載バージョンの「RAINMAKER」第2稿はさらにO氏に大好評。「これならどこに出しても恥ずかしくない」「上層部に(連載を)かけあってみる」などと言うので、僕も「ついに俺も連載マンガ家かぁ!?」と舞い上がった。
しかしサンデー編集上層部の返事は「連載不可」。
確か理由は「内容が少年誌向きではない」ということと、雑誌の中のSF作品のポジションが埋まっていて空きが無い、ということだったと思う(当時サンデーでは「パトレイバー」が連載していた)。
O氏は申し訳なく思ったのか、サンデー増刊号に短編をひとつ描いてくれと言ってきた。
そうして描いたのが「大・摩神」である。(初期短編集「飛人」収録。)