ゆ き と の 書 斎

銃 夢 L O が で き る ま で

■専門用語解説2■

左の用語のタブをクリックすると右に解説が出ます。

・乗算合成


レイヤーパレットで、「背景」以外のレイヤーがあるとき、「通常」と表示されているプルダウンメニューがある。これはレイヤーが下のレイヤーに対してどう見えるかの合成方法を選ぶメニューで、クリックするとたくさん謎の言葉が出てくるが、マンガを作る上ではとりあえず3種類の効果だけ覚えていればよい。
1つめがデフォルトの「通常」。文字どおりなんの小細工もしないで表示するモード。
2つめが「乗算」。言葉はむずかしいが、ようするに下の絵が透けて見えるモードである。100%白の部分は完全に下のレイヤーが透けて見える。もし下に20%グレーの塗りがあり、上に20%グレーのレイヤーを乗算合成すると、計40%のグレーとなって見える、という具合だ。重ねトーンのような表現はこれによって作る。
3つめが「スクリーン」。これは「乗算」の逆で、100%黒の部分が下の絵を透過し、100%白の部分は完全に不透明となる。光の表現に最適だ。

・アンチエイリアス

左:アンチエイリアスなし。  右:アンチエイリアスあり。



パソコンに取り込んだイメージは微小なピクセルの集まりとしてデジタル化され、拡大して見ると階段状のジャギーが出ていることが分かる。このジャギーはデジタル化する以上さけて通れない劣化だが、解像度を充分高くしてスキャン・出力すれば肉眼で見る上でほとんど問題になることはない。
アンチエイリアスというのはジャギーをグレーのピクセルで補完して、低解像度の画像をモニター上などできれいに見せるための技術で、印刷でもオフセット印刷などの高い階調・線数で表現できる方式ならばこれの恩恵を受けることができる。
しかし、ふつうのマンガ雑誌の紙質、印刷品質ではこのアンチエイリアスが逆にアダになってしまう。製版を作る時にグレーのピクセル成分は網点のドットに変換されてしまうため、線が太ってしまうのだ。

印刷後のシミュレーション。



したがって、線をシャープに見せたい主線はアンチエイリアスのない状態にしておかなければならない。
グレーモードのファイル上でもPhotoShopの「イメージ」メニュー→「色調補正」→「2階調化」でアンチエイリアスをとることができるが、ミスをなるべくなくすため、ペン入れ画像はスキャンの段階からモノクロ2階調で取り込むことにしている。

・線数(印刷線数)

網点の1インチあたりの線の数。
市販のスクリーントーンのうち、網点系のスクリーントーンは1桁目が線数をあらわし、2桁目が濃度をあらわす。たとえば、64番のトーンは60線40%濃度という意味(メーカーにより変則的な場合もある)。
この原則を理解していれば、グレースケールのデータを作る際にもあるていど仕上がりの予測が立てられる。

・PowerTone(ぱわーとーん)

Mode社のPhotoShopフィルタソフト。アナログのスクリーントーンをシミュレートしたスクリーントーンパターンを生成する。

・TIFF形式(.tiff)

ファイル保存形式の1つ。OSの種類をとわず広く使われている。圧縮オプションがあるが、jpgなどと違い圧縮・展開しても情報が劣化しないという優れた特徴を持つ。

・アクション

PhotoShop上で行う手続きを記録しておき、一度に再生する機能。決まりきった手順の作業はアクション登録しておくことで大幅に省力化できる。
メニュー階層の奥深くにある単機能も登録してボタン表示しておけば、一発で呼び出せて便利だ。

・「ま○だらけ」

マンガ・アニメ関係のグッズを扱う大手古書店。
倒産したさくら出版から流出した大量のマンガ原稿を、当のマンガ家本人も知らぬまま転売して問題になっている。

参照:「漫画原稿を守る会」http://members.jcom.home.ne.jp/mamorukai/
(注:現在はリンク切れ。)

僕は被害に遭っていないが、昔、角川の雑誌に描いた短編が行方不明になり、賠償裁判を起こしたところ差出し人不明で戻ってきた、ということがあった(初期短編集「飛人」のあとがき参照)。
それゆえ、さくら出版〜ま○だらけの事件は他人事と思えず、「漫画原稿を守る会」に少しばかり寄付をしておいた。

・Adobe Illustrator(あどび・いらすとれーたー)

米Adobe社のベクター型グラフィックソフト。
ベジェ曲線という数学的にレンダリングされるラインを使って図形を描くため、解像度に依存せずジャギーが発生することがない。基本的にカチッとした図形を描くのに向いている。


・ビットマップ

ピクセル情報化された2D画像データのこと。
コンピューター上ではひとくちに「画像」と言ってもさまざまな内部処理のものが混在する。Illustratorのベジェ曲線やゲームのポリゴンなど、リアルタイムにレンダリング計算してはじめて画面に表示される画像と区別して、固定されたピクセルデータをビットマップと呼ぶ。
ゲーム画面もスクリーンキャプチャーしたものはビットマップとして保存される。「コンピュータ内部で扱える写真のようなもの」と考えれば分かりやすいか。

・動線

マンガ独特の表現で、被写体の動きを説明するラインのこと。スピード線のバリエーションと言えるが、バックの効果線とは独立して描くことが多いため、僕は区別してこう呼んでいる。
二本の線のあいだをホワイトで白抜きするのが基本のため、ユキトプロでは「二本セット」などとも呼んでいる。

・Shade(しぇいど)

ExpressionTools社の国産3DCGソフト(ExToolsは倒産し、営業権は2003年4月にイーフロンティアに譲渡された)。
ベジェ曲線をブラウザで管理する独特の仕様で、レイトレーシングによる静止画の品質の高さには定評がある。
90年代後半に1万円を切る価格の廉価版を出し、3DCGソフトの低価格競争を引き起こし、国内シェア1位になったことで有名。しかし1990年頃のShade llは170万円もするあこがれの超ハイエンドソフトだった。
僕が購入したのは価格が10万円ぐらいになったShade lllライトで、1995年頃。チュートリアルは製本されていない紙がドサッと入っているだけのワイルドな仕様でどうやって形状を作ったらいいのかもわからず途方に暮れてしまった。
1997頃にShade R1にバージョンアップし、非常にきれいな製本のマニュアルがつき、チュートリアルも記述が分かりやすく親切で、ようやく使うことができるようになった。
ちょうどこの頃Shadeの解説本がはじめて出て、それらの助けを借りて作った作品が銃夢完全版の表紙のCGイラストである。
余談だが僕は「CG」という言葉は3DCGに限定して使用し、PhotoShopやPainterで描いた絵はそうは呼ばないようにしている。PhotoShopやPainterで描いた絵は「デジタルイラスト」と呼ぶべきであろう。銃夢LOは紙に描いた絵をスキャンして仕上げしているだけなので「デジタル仕上げマンガ」なのである。
いずれにしろ、「CG」や「デジタル」がもの珍しい宣伝文句として通用した時代はもう終わりつつあり、ごく当たり前の概念として受け入られる時代になることは喜ばしい。

・PICT形式(.pct)

Macの標準画像保存形式(MacOS 9まで)。僕はShadeR4を仕事でずーっと使っているので、この形式で保存することになる。最新のShadeは読める画像形式ももっと増えているらしい。

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