ゆ き と の 書 斎

銃 夢 L O が で き る ま で

詳細解説

*マークのついた言葉は用語解説あり。

6・72dpiグレー*でスキャンして保存。

仕事場のスキャナ。エプソンのES-8500というA3スキャナである。

7・フキダシだけをミリペン*などで別の紙にトレスし、600dpiモノクロ2階調*でスキャン、保存。

フキダシはあらかじめ別に保存しておく。

8・ケント紙*に下書き。

(左)銃夢LO第22回p19(コミックスではPHASE:21、p77)の下書き。3コマ目、牙鼻人の前のガリィは別の紙(右)に分けて描いている。後の選択範囲*の作成をやりやすくするためである。主に0.5ミリのシャープペンに2Bの芯を使用。人物のアップなどには2Bの鉛筆を使うこともある。背景も含めほとんど僕が描く。自分にとっては最も時間がかかり、大変な工程である。

9・下書きを72dpiグレーでスキャン、保存。

スキャナのダイアログ。スキャンした下書きはトーン作業のときのアタリ*に使用するが、たいして精密な絵は必要としないので、スキャン作業の迅速化とファイルサイズを考慮して低解像度でスキャンする。

10・ケント紙にペンいれ。

輪郭線などが途切れないように描く以外は、昔と描き方はそれほど変わらない。枠線はPhotoShop*上で清書するので、ミリペンでのラフなアタリだけですませている。スキャン時の誤差をみこんでハシラ*を細めに描くのがコツ。

11・600dpiモノクロ2階調でスキャン、保存。

それぞれの工程ごとのスキャン作業の前に、ディスプレイクリーナーと専用の布でスキャナのガラス面をきれいに保つ。これだけでスキャン画像のクリーン度は格段に上がる。

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・72dpiグレー
72dpiは解像度、グレーはカラーモードをあらわす。
解像度はスキャンしたりプリントしたりする時に必要になる値で、dpiという単位であらわす。dpiはドット・パー・インチの略で、72dpiならば1インチあたり72ピクセルでスキャン(またはプリント)する、という意味。カラーモードはたくさんあるが、とりあえずマンガをやる上ではRGB(フルカラー)、グレー(256階調グレー)、モノクロ2階調の違いだけ把握していれば十分である。
・ミリペン
文房具屋や画材屋で売っている、0コンマ数ミリ単位での均一な線が描ける精密フェルトペンの総称。インクに水性顔料インク(ピグメントインク)を使っているものは乾くと耐水性になる。サクラの「ピグマ」などが有名。弱点はペン先のチップがつぶれやすいことと、消しゴムかけにあまり強くないこと。
・600dpiモノクロ2階調
ふつう印刷物には300dpi以上の解像度が必要となる。
カラーイラストなどは印刷線数の関係から300~350dpiが適切といわれている。
「水中騎士」ではマシン環境のかねあいから、300dpiでデータを作り入稿していた。「銃夢LO」では倍の600dpiで入稿している。モノクロ印刷のマンガの場合、雑誌の紙質と製版の品質のためにデータ作成にはカラーイラストとは違う注意を払わなくてはならない。なぜグレースケールではなくモノクロ2階調で取り込むのかは、「アンチエイリアス」の項目で解説する。
・ケント紙
製図などに使う高級紙。さまざまなサイズ・厚さのものがあるが、僕は現在はコクヨ製のあらかじめB4に裁断されたケント紙をカートンで購入して使っている。平方メートルあたり157グラムと、かなり薄手のものだ。薄手の紙を使うのは、トレス台で透かしながら原稿の裏にデッサンの直しを入れるという手法を多用するためだ。
・選択範囲
コンピューター上での作業は何をするにもまず選択してからやるものだという。
PhotoShopにおいても画像の一部を「長方形選択ツール」「自動選択ツール(マジックワンド)」「多角形選択ツール(僕はなげなわツールはほとんど使わない)」で囲む事により「アリの行列」と呼ばれる点線のエリアが表示される。ここまではほとんどのペイントソフトでも大昔から可能だったが、ここからの選択範囲の加工と応用の自由さがPhotoShopをペイントソフトの王者たらしめている点である。
マンガのデジタル仕上げの奥義とは、「いかに素早く目的どおりの選択範囲を作るか」だと断言できるだろう。
・アタリ(当たり)
目安。目印。
・PhotoShop(ふぉとしょっぷ)
いわずと知れたAdobe社のレタッチソフト。グラフィックに関わるプロにとってはMac・Winとわずデファクトスタンダードであり、これが使えなければとりあえず話にならないというほどの最重要ソフトである。
僕はPhotoShop2.0英語版から使っている。当時は巨大なバインダーにフロッピーが10枚ぐらいついて圧倒された。シリアルナンバーを半角英数字で打つということすら知らなくて、しばらく使えなかったという記憶がある。
・ハシラ(柱)
マンガのコマとコマのあいだの棒状の区切り部分。