スーパー掃除ロボット大戦R of 茶房・風雲庵

スーパー掃除ロボット大戦R(リローデッド)
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〜2004年8月20日〜
TEXT by 木城ツトム


●イントロダクション●


鉄腕アトム誕生の年、昨年2003年に幕を開けた壮絶な掃除ロボット大戦。2度に渡る戦いで傷ついた戦士たちは、安らかなる眠りについた。しかしあれから1年、安息の日々は長くは続かなかった。「掃除ロボット」「全自動掃除機」の威信をかけ、新たなる刺客たちによる戦いの火ぶたが切って落とされたのである!


●米・iRobot社製「ルンバ」の類似品が続出!●


「家庭用掃除ロボット」の先駆けとなった、スウェーデン・Electrolux社製「トリロバイト」やアメリカ・iRobot社製「ルンバ」の世界的ヒットにより、その後も続々と新たなる掃除ロボが世界中で作られている。特に「ルンバ」の大ヒットは、家電の中の「掃除ロボット」というジャンルを定着させるほどのインパクトであった。

そのインパクトを裏付けるのが、「クリーンブー」「おそうじDJ」といった「ルンバ類似品」の出現だろう。大きさや形、付属品などがほぼ「ルンバ」と一緒で、色やボタンまわりのデザインが違うだけの掃除ロボである。これらは中国製のようで、どちらも値段は「ルンバ」の2/3から半額程度

まず「クリーンブー」は別名「くりーん坊」としても売られている掃除ロボで、機能的にはほぼ「ルンバ」と同等と見ていいようである。「ルンバ」よりは直線的デザインで、色もより家電っぽい感覚がある。これもすでに売れ筋商品らしく、ネット上では「品切れ」「売り切れ」となっている場合も少なくない。

もうひとつの「おそうじDJ」は「クリーンブー」とは逆に流れるようなクリーム状で、黄緑色という点も、家電というよりは何か芳香剤の入れ物を彷彿とさせるデザインである。こちらの機能的特徴は、なんと掃除中に「楽しい音楽が流れる」のだという!「ルンバ」と同等の掃除能力ならば、掃除中は相当うるさいと思われるのだが…いったいどのような音楽なのか?掃除中に聞き取れるのか?疑問は尽きないが、有人宇宙飛行を成し遂げた中国の科学力を侮るわけにはいかない。

これら「ルンバ類似品」にも触手が動いたのだが、すでに私は「ルンバ」を所有しているので、さすがに今回は見送りとなった。しかしこれら「類似品」以外にも、まだまだ新たなオリジナル掃除ロボが出回っていたのである!


●“インテリジェント・スイーパー” ROBOSWEEP(ロボスイープ)●


「ルンバ」を成功させた掃除ロボ大国アメリカが放つ、次なる刺客がこの「ロボスイープ」である。「バキューム」ではなく「スイープ」の名の通り、「ただいまそうじ虫」「ロボモップ」と同じ血統の「紙ぞうきん式モップロボ」。価格も3000円前後と極めてお求めやすい価格である。吸い込み式に続いて紙ぞうきん式もアメリカの独壇場となってしまうのか!?


パッケージ内容 / ルンバとの大きさ比較

(左上から時計回りに)パッケージ箱と専用紙ぞうきん50枚パック、(銃夢LO5巻と)「ロボスイープ」本体、バッテリーと充電用アダプター、それに解説書。


パッケージは米国仕様だが、解説書には一応日本語表記もあるので安心できる。とはいえ、本体裏に紙ぞうきんを張り付けて電源スイッチを入れるだけなので、特に難しいことは何もない。解説には「かしこい掃除機が…」「部屋全体をかしこく掃除します」「おもちゃではありません!」などと書かれている。期待が高まる反面、ちょっと悪い予感もするのは気のせいか?

「ルンバ」と比べると、大きさは一回り小さい程度。しかし、そのロボットロボットしたごっついアメリカンデザインとまぶしいシルバー色のため、かなりの大きさに見える。吸い込み機能などは入っていないので、重さは軽い。それにしても底に紙ぞうきんを張り付けて走るだけだとすれば、この、あたりを威嚇するゴツゴツしたデザインは何事であろうか。ロボコップと戦う気でいるのか?本当におもちゃではないのか?


本体裏面 / 専用クロス取り付け状態 / 掃除中の「ロボスイープ」


裏面は紙ぞうきんを張り付けるため真っ平ら。前方に駆動輪、後方2箇所に補助輪がある。この3カ所の車輪部分に穴があいている専用の紙ぞうきん「マイクロファイバー・ワイプクロス」を使用する。本体裏面の19カ所につけられたマジックテープで紙ぞうきんを張り付ける仕組みだ。
紙ぞうきん式は気楽に使える反面、こういう特殊な紙ぞうきんの入手のしにくさがややデメリットと言えるだろう。一応「ロボスイープ」の専用紙ぞうきんは、ネット上で別売りされている。

数時間充電して紙ぞうきんを取り付け、本体スイッチをオン。ウィィ〜〜ンとモーター音を鳴らして走り始める。紙ぞうきん式だが「ロボモップ」ほど静かではない。しかし部屋でくつろいでいる最中に走らせても、この程度なら問題ないだろう。走行速度は極めてゆっくりで、障害物にぶつかると、横滑りにドリフトしながら向きを変える。この動きは見ていて面白い。しかし方向転換パターンが1種類しかないらしく、何度も同じところをぐるぐる回ったり、簡単に脱出不能に陥ったりする場面も見られた。また落下を回避する機能もついていない。アメリカのインテリジェンスはこの程度なのか!?
(ちなみに「ただいまそうじ虫」は、左右に行けなくなるとバックして窮地を脱出する)


●“RC掃除ロボット” i-Cybot(アイ・サイボット)●


前回の「銃夢LO」の仕事中の出来事。追い込みの合間にカップメン食べながらネットを見ていたゆきと先生、突然「つーちゃんこれ買わなきゃダメでしょ」とモニターを指差した。見ればそれはインプレスのサイト「GameWatch」の記事。そこには奇妙なネコ型ロボットが映し出されている。ま、まさかこれわ!そう、なんと掃除ロボットなのであった。


パッケージ正面 / こ、この絵は… / パッケージ内容


「GameWatch」の記事では、通販大手のニッセンで「i-Cybot」を入手したとある。私はとある事情から、苦労の末、別ルートから入手することに成功した。値段も「GameWatch」記事とほぼ同じ2000円前後。しかしパッケージ写真を見比べていただくとわかるが、「GameWatch」の記事の「i-Cybot」とは別バージョンのパッケージであることがわかる。

箱はかなりの大きさで、表記は英語のみ。これもどうやらアメリカ製だと思っていたのだが…何か、デザインに違和感を感じる。この「ペット風」デザインは日本っぽい感覚もある。メーカー表記らしきものは「HPD」としか書かれていない。「Made in China」となっているが、それを言えば「ロボスイープ」も「ルンバ」も(アメリカの会社で設計された)「Made in China」である。

さらに箱をよく見てみると…何やらとてつもなく日本ライクなイラストが!しかしジャパニメーション旋風が世界中に吹き荒れる昨今、この程度のイラストで、どこの国の製品か判別できるほど時代は甘くない
それよりも問題は、イラストに「My name is i- FRIEND」と書かれていることだろう。確かにパッケージ正面にも「i-Cybot FRIEND」と大書きされている。「i-Cybot」の友だち??ま、まさか…パチモンなのか!?

気を取り直して、本体及び付属品を箱から出してみる。巨大な本体とコントローラー、充電バッテリーとアダプター、バッテリーの代わりに単3乾電池を使用するための電池ケース、コントローラーの電池、そして解説書1枚。
しかしここで驚くべき事実が発覚。解説が中国語である。本体デザインといい箱のイラストといい、どうもアメリカ製品ではないような気はしていたが、まさか完全中国製の掃除ロボットだったとは。

ネット上で調べてみると、箱に書かれていた「HPD」とは「HAIPENGDA TOYS(ハイペンダ・トイズ)」という中国の玩具メーカーであることが判明。この「i-Cybot」は、ハイペンダ社製品の中でも最高峰の性能を誇るマシーンのようである。


「ロボスイープ」との大きさ比較 / 本体後ろ / 本体裏面


思わぬパチモン疑惑が浮上した我が「i-Cybot」。しかし本体を「GameWatch」記事中の写真と見比べてみても、色以外の本体デザインの違いはまったくわからない。裏から見た内部構造も違いはないようである。

大きさは接地面積的には小さいが高さがあるので、「ロボスイープ」などと比べてもボリューム感がある。またコントローラーが私の手にシックリ来るほど大きい。これでは小さい子供にはキツイのではないかと思うのだが。

本体後ろ側は、どういうわけかドリンクホルダーがついている。ただプラスチックの台も針金の支えもフニャフニャで、ちょっと心もとない。頭部の後ろ側には電源スイッチとバッテリーケース、ドリンクホルダーの下は掃除の際のダストボックスになっている。

本体をひっくり返して見ると、2本ついている掃除ブラシが前後することで掃除する、独特のシステムであることがわかる。「吸い込み式」でも「紙ぞうきん式」でもない「掃き取り式」である。


コントローラー / 本家「Cybot」 / 掃除中の「i-Cybot」


巨大コントローラーはこれまた独特なデザインだが、握り心地はなかなか良い。人差し指部のスイッチがカチャカチャと安っぽい音を立てるが、値段を考えれば仕方あるまい。中央部にボタンが3つあるが、どうもタダの飾りのようだ(私の勘違いか?)。

ところで「サイボット」と言えば、世間一般では「週刊リアルロボット(デアゴスティーニ刊)」の付録ロボットの方が有名であろう。特に意味はないがツーショットで比べてみた。機能的には当然リアルロボットの「本家サイボット」の方が高性能である。

本体の電源スイッチを入れ、コントローラーで走らせてみる。ものすごいモーター音に続いて、内蔵スピーカーから謎の鳴き声が!「ワンワンッ!ワンワンッ!」な、なんとコイツはネコじゃなくてイヌだったのか!確かに中国語の解説書をよく見ると、本体のことを「電子狗」と書いている。

目をピカピカ光らせながら走る姿は愛嬌があるが、いかんせんものすごくうるさい。この騒音は「ルンバ」以上ではなかろうか。掃除性能もまぁそこそこ、トミーの「So-G」よりはマシ、といった程度。玩具なれば仕方のないところだろう。


●“全自動そうじき” ROBO Q(ロボキュー)●


どうも新製品を取り上げるたびにうさん臭くなってきているこの「スーパー掃除ロボット大戦」。結局、掃除ロボットなんて買う価値ないんじゃないの?と、これをお読みの皆さんもそろそろ思っている頃かも知れない。

しかし結論はまだ早い。今回最後に登場するのは、オーストラリアが国の威信をかけて作り上げた(このフレーズがすでに怪しいのだが)高性能掃除ロボット「ROBO Q(ロボキュー / ROBOVAC RV-9)」である。


パッケージ内容 / パッケージ / 大きさ比較


ROBO Q」などという謎の和名がつけられてしまっているこの掃除ロボは、オーストラリアの人気家電メーカー「LENOXX(レノックス)」社製。「ルンバ」並の高機能を持ちながら、日本での価格は10000円前後という強烈なコストパフォーマンスを誇る「本物」の一品である。

パッケージ内容は本体、充電アダプター、バッテリー、リモコン、リモコン用乾電池、回転スウィーパー部品、解説書、紙ぞうきん3枚。これを見てもわかるように、「ルンバ」との違いはリモコン操縦ができることと、吸い込みと同時に紙ぞうきんを使った拭き取り掃除もできることである。解説書は完璧な日本語仕様。

パッケージの箱も日本語表記で安心。本体カラーは写真のレッドの他、グレーなども選べる。私は所有している「ルンバ」との混同を避けるためレッドを購入した。安っぽいグレーの「ルンバ」と違って、こちらは自動車のボディーのような高級感あふれる深いメタリックレッド。所有欲を充分に満たしてくれること請け合いだ。ただ表面はキズつきやすいかも。

ネット上で「ROBO Q」の写真を見た時は「ルンバ」より一回り小さいのかと思っていたのだが、それは「ルンバ」より厚みがあるための錯覚であった。実際には「ルンバ」と同等の大きさで、厚みはやや上回っている。かの「トリロバイト」ほどの厚みはないにしろ、家庭用掃除ロボとしては最大級の大きさと言えるだろう。掃除ロボットは意外と置き場所を食うシロモノなので、もう少し小振りに作ってもらえればと思う時もある。


本体裏面 / ダストボックス


「ROBO Q」本体裏面。中央部に吸い込み口と、その両脇にゴム製回転スウィーパーがついている。吸い込み口の後ろには紙ぞうきんホルダーがあり、写真のように紙ぞうきんを巻き付けてセット。ゴミを吸い込んだ後さらに拭き取るという二重の掃除機能だ。ただ「ルンバ」のように吸い込み口に回転ブラシがついてないため、吸い込み能力では「ルンバ」より劣ってしまう。しかし代わりに吸い込み機能を停止し、紙ぞうきんだけで掃除を行う機能もついている。騒音が気になる場合には重宝する機能だろう。

本体前方には障害物回避用バンパー、その内側の3つのミゾには落下防止用センサーが内蔵されている。紙ぞうきんホルダーの両脇に駆動輪、前後に補助輪を持つ。重さは「ルンバ」よりやや軽め。

上側本体中央には、位置的にわかりやすいダストボックスが入っている。容量は「ルンバ」より大きめでゴミも落としやすいが、フィルターも「ルンバ」よりはるかに大きく、ここについたゴミを取るのが少々厄介だった。
それと細かい点だが「ルンバ」には持ち運び用の折りたたみ式取っ手がついていて、これが非常に便利なのだが、「ROBO Q」にはそれに相当するものがついていないのが残念だ。


掃除中の「ROBO Q」 / リモコン操縦


掃除中の「ROBO Q」。本体にある3つのボタンのどれかを押せば、掃除が始まる簡単操作。気になる騒音の大きさだが「ルンバ」よりはやや静か。回転ブラシがないためか、音質がソフトな印象がある。欠点としては、紙ぞうきんを併用しているせいなのか「ルンバ」より走破性能が低いこと。台所下の敷物に乗り上げると走行不能に陥ってしまった。「ルンバ」なら無理矢理にでも走り切ってしまうのだが。

さて「ルンバ」にはないもうひとつの機能、リモコン操縦。しかし実際使ってみると、あまり操作性が良くない。全然使えないということはないが、これはリモコンが家電用っぽいデザインなのが原因だろう。「i-Cybot」のコントローラーのような両手が使える本格派操縦機であれば、より使いやすくなると思う。今後の掃除ロボットリモコンのデザインは、もう少し熟考してもらいたいところである。


●スーパー掃除ロボット大戦・オールスター頂上決戦●


そして最後はやっぱりお約束のこのコーナー。総勢7台のマシンによる、生き残りをかけた壮絶なバトルが今幕を開ける!!

●掃除ロボット・オールスター7台がバトル前のにらみ合い!
(ルンバから時計回りに、i-Cybot、ロボスイープ、ROBO Q、So-G、そうじ虫、ロボモップ)
●バトルスタート!全者一斉にバラバラに走る!
●ロボスイープがi-Cybotにアタック!その奥でSo-Gが立ち往生!
●強烈なルンバのアタックで、なぜかロボモップのボールが吹っ飛んだ!
●「我関せず」のマイペースROBO Q!So-Gはまだ立ち往生!
●戦闘不能のロボモップに追い討ちをかけるルンバ!So-Gは窮地を脱出!

つーかもう最近、掃除ロボットで足の踏み場がなくなってきました


●各掃除ロボット比較データ(2004.08)●

Roomba ROBOSWEEP i-Cybot ROBO Q
大きさ
(長さ×高さ)
約35×8cm 約28×8cm 約22×27cm 約35×9cm
掃除方式 吸い込み方式 紙雑巾方式 掃き取り方式 吸い込み方式
紙雑巾方式
回避能力 障害物回避
落下回避
障害物回避 なし 障害物回避
落下回避
電 源 ACアダプター
12時間充電
ACアダプター
(単3乾電池)
ACアダプター
(単3乾電池)
ACアダプター
12時間充電
騒 音 ★★★★★
(うるさい)
★★
(やや静か)
★★★★★+
(超うるさい)
★★★★
(ややうるさい)
交換品 専用フィルター 専用紙雑巾 なし 専用フィルター
紙雑巾
定 価 オープン
(39,800円)
7,800円 5,000円? 39,800円
実売価格 3万円前後 2千円台 2千円前後 1万円前後
長 所 ・確実な掃除力
・簡単操作
・走破性・回避能力
 など高性能
・音が静か
・気軽に使える
・近未来デザイン
・リモコン操作
・愛嬌がある
・楽しい
・二重の掃除機能
・簡単操作
・リモコンが付属
・回避能力など
短 所 ・大きな騒音
・収納場所を取る
 大きな本体
・走破性が貧弱
・同じ場所を回転
・近未来デザイン
・うるさすぎる
・安っぽい
・掃除能力が低い
・自走しない
・走破性が低い
・吸い込みが弱い
・収納場所を取る
 大きな本体


※データは2004年のものです。