大黒海釣り対決!! of 茶房・風雲庵

大黒海釣り対決!!
大黒ふ頭・大黒海釣り公園(神奈川県横浜市鶴見区)

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2009年4月25日 木城ツトム

前回から実に4年も経ってしまったが、ふたたび海釣りに挑戦する機会がやってきた。
首謀者はもちろん、前回私を海釣りに誘った友人のカッペさんである。

私も一時期つとめいてた某Bプロダクションで主力アシスタントとして働くカッペさんだが、珍しく大型連休が取れるとのことで、さっそく私にお呼びがかかった。また今回は他の人も巻き込もうと画策し、以前BプロダクションにつとめていたTさんが加わることとなった。このTさん、歳は我々よりかなり上なのだが気が小さく、体格もひょろっとして頼りない。いつも冗談なのか本気なのかよくわからないことを口走り、酒が入ると陽気にでかい態度を取るという無邪気な独身貴族である。気兼ねなく付き合えるとても愉快な人だ。

しかしそんなTさんは見るからにインドアタイプ。大自然と戯れるようなアウトドアなイメージはまったく浮かばない。私も釣りに関しては相変わらず超初心者の域を出ておらず、今回も一抹の不安がよぎるわけだがまあ仕方ない。予期せぬ好天に恵まれた4月22日、我々3人はフィットに乗り込み一路「大黒海釣り施設」を目指して出発した。

01.jpg海釣り施設入口02.jpg施設内の釣り場へ

「大黒海釣り施設」は前回行った「本牧海釣り公園」のほんのちょっと先、場所的にはほとんど変わらない。第三京浜から首都高・湾岸線を走って1時間足らずで到着した。

「本牧海釣り公園」と同じく1人900円払って入場。平日にもかかわらず、やはり釣り客は数十人ほどはいるようだ。釣り場はベイブリッジを臨む「内側」と東京湾側の「外側」があるが、我々はまず人が少ない「外側」に陣を取る。さっそくエサをつけただけの「ぶっこみ釣り」で開始。しかし東京湾側から強い風が吹くせいか、頑張って竿をふってもなかなか遠くに飛ばない。

03.jpg今回もウキウキのカッペさん04.jpg海釣りは初挑戦というTさん05.jpgしかし全然釣れない…06.jpg釣れるのはヒトデばっかり

しかし釣れない。まったく釣れない。全然釣れない。昼ごろ海釣り施設に入って、3時すぎてもまだ釣れない。どうにも針が海底の岩場に引っかかりやすいので、場所をベイブリッジ側の「内側」に移動するものの、そこでも釣れない。まわりの釣り客を見てみても、やはりまったく釣れている様子がない。普通、まわりの人のクーラーボックスをのぞけば小魚の1匹や2匹は入っていて当然だが、それすらも見当たらない。「昨日雨ふったんだから釣れるはずなんですけどねぇー」とカッペさんも首をかしげるばかり。

そのうち、我々の反対側(外側)で釣っていた兄ちゃんたちが、イカを1匹釣り上げて大騒ぎ。しかしそれ以外では釣ってる様子がない。釣り針の上にオキアミを入れた小さい網袋をつけて釣る「サビキ釣り」でカッペさんが釣り始めるが、これもまったく反応なし。前回の「本牧海釣り公園」では、いくら釣れないと言ってもコチやハゼの稚魚ぐらいはかかっていたものだが、今回の東京湾は完全にダンマリを決め込んでしまっている。この調子では、今回の釣りは丸坊主(ボウズ=釣果なし)で終わってしまうかも……という一抹の不安がよぎる。

結論から先に言うと今回、私とTさんは最後までまったく1匹の魚も釣れなかった。イカもタコもカニも釣れなかった。前回は夕方になってからイワシタイムに突入し、ちっちゃいイワシが大漁に釣れたが、今回はそんなサービスタイムもなかった。東京湾相手に完全敗北と言っていいだろう。このままでは私のレポートネタにできないではないか……。

だがしかし、そんな絶望的窮状をひとり救ったのは、四国の大自然が鍛えた野生児・カッペさんであった。周囲の釣り客もあきらめムードに陥っている中、カッペさんの類いまれなる野生の嗅覚が、ついに大物を捕らえ、仕留めたのである!ではその時の様子を解説しよう。

07.jpgあきらめムードが漂う08.jpgついに大物ゲット!!09.jpg魚を飲み込む海鳥

午後4時を過ぎたころ、海釣り施設のおじさんがノートを手に釣果を聞きに回ってきた。施設ではどんな魚が釣れたか、チェックして記録に残しておくのである。「どうですか、釣れてますか?」と私に聞いてきたが、私は頭をかいて「いやぁ、ぜ〜んぜんダメですよ」と苦笑いする他ない。他の釣り客もそうだったのだろう、おじさんはうなずきながら、となりのカッペさんの方に移って釣果を訊ねた。

カッペさんも小魚1匹釣れていないので、サビキの竿を片手におじさんに向かって「いやー釣れないっすねぇー」とボヤいた途端、「おっ、おぉおーーーっっ!??」と叫んで突然サンマのような魚を釣り上げた。だがサンマの時期は秋のはず。何事かと思っていると、施設のおじさんが「こりゃあサヨリだよ、サヨリ。これは大きいねぇ!」「刺し身にすると最高だよ!」と教えてくれた。姿はサンマによく似てるが、下あごが長く伸びてとがっている変わった魚である。おじさんがメジャーで測ると約40cmあった。サヨリとしては最大級の大きさらしい。

前回の「本牧海釣り公園」では、トイレに行ってる間に置いた竿に30cm級のカレイがかかったカッペさん、今回もよそ見している間に40cm級のサヨリを釣り上げるという、まさに野生児の本能のなせるワザで面目躍如となった。さすがである。

10.jpg夕暮れの海にたそがれる私11.jpg昼寝するカッペさん12.jpg東京湾の夕暮れ

その後、施設営業時間終了の6時までねばったものの、釣果は先のサヨリ1匹だけ。大物が1匹釣れただけよかったが、それにしても今回の東京湾は手強かったと言わざるを得ない。我々はリベンジを誓って東京湾を後にしたのであった。

その後は前回と同様、横浜の中華街に足を運ぶ。まず「世界チャンピオン」とか銘打った店で小さめの肉まんを食べ、次にコース料理が安い店に突入。テーブルに並べきれないほどの料理に舌鼓を打つ。適当に選んで入った店だったのだが、そこはやはり中華街、出てくる料理はうまいものばかりである。この街の一角にこれだけ中華料理店が集まっているのだからレベルが高くなるのもうなずけるが、中華料理店ばっかりでやっていけるのも不思議だ。まあうまいものが食べられるのだからいいことなのだが。

13.jpg横浜・中華街へ14.jpg豪勢なコース料理

おいしい中華料理ですっかり満足した後は、フィットで国道を走ってのんびりと帰途へ。

さっそくBプロダクションの仕事場で、サヨリの刺し身をいただくことにした。Tさんは「焼いてもいいんじゃない」と言うが、私には海釣り施設のおじさんの「刺し身が最高だよ!」という言葉が脳裏から離れなかったのである。釣った魚を刺し身で喰う。これぞ男のロマンではないか!……と言いつつ運転で疲れていた私は、魚を捌くのはカッペさんに任せて(←ひどい)ドキドキワクワクしつつ出来上がりを待つ。

15.jpgカッペさんが腕をふるう16.jpgこれがサヨリの刺し身!

仕事場の切れない包丁に悪戦苦闘しつつ、カッペさんががんばってサヨリの刺し身を完成させた。小骨が取りきれず、肉はブツ切りのまさに「漢の料理(ただの素人料理)」だが、食べてみると、肉は柔らかいのにすごい弾力!コリッコリしてて実にうまい。特に骨がなく、脂がのったわずかな部分は絶品。3人して「うわっ、ウマッ!」と叫んでしまうほどだった。これぞ野生の味、釣りの醍醐味!(釣ったのはカッペさん)あっという間にたいらげてしまったが、実に天晴れであった。サヨリよ、我らの血肉となって成仏めされよ。(−人−)

結局自分では全然釣れなかったのが残念だが、海を見ながらのんびり過ごすのもいいものである。またいずれ、別の場所で海釣りに挑戦したい。