本牧海釣り対決!! of 茶房・風雲庵

本牧海釣り対決!!
本牧ふ頭・本牧海釣り公園(神奈川県横浜市)

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2005年5月24日 木城ツトム

私の知人に井ノ内貴之(いのうちたかゆき、通称カッペさん)という人物がいる。この御仁、つい最近まで週刊少年チャンピオンで『輪道(りんどう)』という自転車漫画を連載していた(現在は連載終了)人で、私を自転車趣味に誘い込んだ張本人でもある。

で、このカッペさん、大の釣り好きらしい。「ツトムさん、釣りに行きましょうよ釣りに!」とかねてから何度も誘われていたのだが、私の方は本格的な釣りは未経験である。どうも今ひとつ「釣り」っていうのも地味で退屈そうな印象しかない。一匹も釣れなかったら退屈で死んでしまうのではないか?しかしそう考えてみると、生きるか死ぬかをサカナと競い合うハードスポーツにも思えてきたので(錯覚)、今回あえて誘いに乗ってみることと相成った。

ちなみにカッペさんは、子供のころから自分で釣りの仕掛けを作り、故郷・香川県の川に通っていたという「野生児」。四国山中で鍛えられたネイチュアボーイっぷりが炸裂すると手に負えなくなるが、私も万歳塾塾長として負けるわけにはゆかない。野生のカンを取り戻し、危機センサー(by.『藤岡弘、探検隊』)を働かせる時が来た!


写真:本牧海釣り公園同公園から東京湾を望む

カッペさん自身、東京に来てから釣りに行ったことがないとのことで、ターゲットは近場の有料(!)釣り場、横浜の「本牧海釣り公園」に決定。東京・世田谷から車で1時間ほどかかったが、距離的にはかなり近い。

有料駐車場の先に2階建ての建物があり、そこから釣り専用の足場がLの字に伸びている。建物を通らないと足場に行けないので、有料釣り場として成り立っているわけだ。ちなみに場所は本牧ふ頭なので、まわりは工業地帯である。

大人ひとり900円(!)も払って、イザ入場。平日だというのに、軽く100人ぐらい釣り人がいるようだ。収容人員は最大で700人も入るらしいので、それほど混み合っているという印象はないが、これでは休日は恐ろしいことになりそうである。この日は天気も良く、波もおだやかで絶好の釣り日より。これで釣れなかったら(900円も払ったのに)悲劇としか言いようがない。私の危機センサーが早くも警報を発する。


写真:セッティングにいそしむカッペさん気合いの一投!「釣れないなぁ…」

前日に自らの手で仕掛けを作ってきたというカッペさん。久しぶりの釣りに、平静を装ってはみても顔はニヤけっぱなし。私の竿もセッティングしてもらい、エサのイソメだかなんだかの虫の付け方も伝授される。しかし虫がウネウネ動き回って、どうにも針に刺しにくい。虫も針を突き刺されると痛いのか動き回るので、体液が出て手がベトベト。すべっちゃって余計に刺しにくくなる。マトモに刺せるようになるまで20回ぐらいかかったか。

今回は「ぶっこみ釣り」というウキを使わない投げ釣りと「サビキ釣り」という仕掛け釣りの2本立てで、狙うはキスという小型のサカナ。投げの方は昔、剣道をやってた経験が生きたのか「ツトムさんはまっすぐ投げますねぇ」とカッペさんに感心される。がしかし、何も釣れずにダラーリと時間が過ぎていく。海を見てると退屈しないのが救いだが、場所が池や沼だったら退屈のあまり入水しそうである。

開始から1時間ほどしてビギナーズラックが炸裂したのか、私の竿にキスが初ヒット。しかしその後はサッパリ。「俺やばいなぁ〜」と言いながら苦笑いのカッペさんも、徐々に余裕がなくなってくる。やっと釣れたかと思うと、コチやハゼの子供ばかり。食えなさそうな魚は海に帰すのが、この釣り公園のオキテである!


写真:こんな大物も…カンを取り戻すカッペさんキスに続いてカレイをゲット!

その後もヒトデだの海草だのと、あまりの爆釣(ばくちょう)ぶり(もちろん皮肉)にあきらめムードが漂い始める。私の方も他人が海底に残していったサビキの仕掛けを釣り上げたり(後でこの仕掛けを再利用)、写真のようなズワイガニ系の子ガニを釣ったり(もちろん海に帰した)と、初めての東京湾相手に混乱していた感は否めない。

しかし開始から3時間ほど経過したころで、やっとカッペさんもキスをゲット!(結局キスはこの2匹しか釣れなかった)続いてまったく反応がなかったサビキ仕掛けで、小さいイワシが釣れ始める。いよいよカッペさんが野生のカンを取り戻し始めた!危機センサーバリバリの私も自分で釣り上げたサビキ仕掛けを使ってイワシヒットを狙う。

カッペさんがなくなったエサを買いに行ってる最中に、カッペさんの竿にイワシが大量ヒットし、続いて30cm級のカレイを見事ゲット!(写真カレイの上、左の茶色い魚がキス。カレイの下の魚がイワシ)野生児の面目躍如と相成った。
ついでにサカナとエサの虫を扱ったベタベタの手で、平気でポッキーをボリボリ食うカッペさん。そのあまりの野生児っぷりに私の危機センサーは鳴りっぱなしであった。

この後、午後3時ぐらいからイワシタイムに突入し、サビキ釣りでイワシばっかり連続ヒット(しかしここでデジカメが無念の電池切れ)。「入れ食い」とまでは行かなかったが、夕方までにふたりでイワシを50匹ばかりゲット。懸念していた雨も降らず、この日は充分元を取ったところで終了となった。


帰りは道沿いの横浜・中華街にて夕食。私もカッペさんも中華街は初めて、調べもせずに来たのでどこの店に入ったらいいものかしばらく迷ったが、路地裏の小さな店でコース料理を食べてみた。酢豚とか棒々鶏とかたまごスープとか、中華ではどれも見慣れた料理なのだが、やはり基本的に味が違ってて全然ウマイ!コース最後の杏仁豆腐も「いかにもゼラチンで固めました」的ではなく、本当に豆腐っぽくて至極美味だった。さすが全国にその名を知られた中華街のことだけはある。

その後、カッペさんが所属する(私も以前お世話になっていた)バディプロダクションに帰還し、電気無煙魚焼き器でイワシとキスの姿焼きをバディスタッフに振る舞った。なかなかワイルドな経験ではあったが、魚の生臭さにはさすがに閉口した。人に釣らせて自分が喰うのが一番いいと思った今日この頃であった。