かなりの数の車が停められる無料の駐車場は、背後にオリエンタルデザインの大きな石造りの建物がそびえている。ここは川崎大師の自動車をお払いする場所だそうで、2006年に建てられたという。バイクを降りて川崎大師へと向かうが、正月三が日も過ぎたというのに道は参拝客でいっぱい。道中には焼き栗やアメの切り売り、また餅つきをする人たちの姿も見られたが、何しろ人が多くてゆっくり見ていられない。さっさと参拝してトイレで用を足しただけで戻ってきてしまった。
駐車場に戻ってくると、道行く参拝客のご老人たちが我々のバイクを見て「へぇ〜すごいねぇ〜高いんでしょこれ〜」とか言いながらのぞき込んでくる。特に大きくてハデなVICTORYのツアラーやインディアンに興味があるようだ。さっそくディーラースタッフがパンフを取り出して商品説明を始めている(笑)。VICTORYもインディアンも品質では決してハーレーに劣らず、プロダクトデザインでは上回っていると言えるので、あとは知名度さえ上がればハーレーの牙城をいくらでも切り崩せるはず。二輪車業界は底辺から少しずつ這い上がってきている時期なので、今年は特にVICTORYとインディアンのブランド名の拡大と躍進を期待したい。
さて参拝をすましたあとは、そのままアクアラインに直行、東京湾を渡って千葉県に入った。館山自動車道を南下して、お昼過ぎに「漁師料理かなや」に到着。海沿いに建っている店なので駐車場から東京湾が一望できるのだが、この日は東京湾上に真っ白な雪化粧の富士山を臨むことができた。こんなに絵に描いたように美しい富士山は、関東にいてはなかなか見ることができない。まさに「初詣ツーリング」にふさわしい、心洗われる雄大な景色だ。
さっそく店内に入って東京湾の海の幸を堪能。新鮮な刺身を味わいながら、こういう機会にほかのライダーの皆さんの話を聞くのも面白くて楽しい。食事を終えて駐車場に集まると、いよいよお待ちかね「インディアン・スカウト」の即席試乗会である。ディーラーの女性スタッフTさんが乗ってきたマットブラックのスカウトを、参加メンバーが乗って「かなや」の前の道をちょっと走ってくるというもの。
排気量1.8リッター車重350kgを超えるインディアンのヘビー級クルーザーラインナップに、排気量1130cc車重253kgというミドル級クルーザーとして登場した新生「スカウト」。もともと「スカウト」とは、軽量なミドルクラスモデルとして1920年に誕生し、数々のレースやバート・マンローによる世界記録に使用されたモデルの名称とのこと(公式サイトより)。
デザインは、これはもうひと目見て「カッコいい!」と言える。クルーザーに伝統的な曲線を使いつつも、タンクやリヤフェンダーの両端を大胆に切り落とし、角をキッチリ立たせることでシャープに仕上がっている。現代的なアルミフレームはひたすら隠しているのに、無骨なメカメカしい水冷エンジンをあえて主張しているのもポイントだろう。水冷のクルーザーというとたいていシリンダーに「ダミーフィン」をつけて、見かけだけは空冷っぽくするものなのだが、それをせずとも違和感なくカッコいいのがスゴイ。単純に「ロー&ロング」とか懐古趣味ではない、頭ひとつ抜けたデザインの良さとギュッとした凝縮感がある。
……で、実物のスカウトを目の前にすると、これが非常に小さく感じる。周りのバイクがデカイせいもあると思うが、一見エンジンが1リッターもあるようなバイクには見えない。エンジンをかけると、これがまた水冷エンジンとは思えない、元気のいい排気音を響かせる。エコーがかかったややスポーツ車っぽい排気音で重低音ではないが、これはノーマルで十分イイ音だ。
いよいよ試乗も自分の番となり、またがってハンドルに手をかけて車体を起こすと、これがまた軽い軽い!普段、自分がいかに重いバイクに乗っているかが良くわかる(笑)。私のハイ坊はエイプハンガーなのでスカウトのハンドルがかなり低く感じるのは当然なのだが、意外にもハイ坊よりステップ位置がかなり前方にあって、乗車姿勢は「く」の字になってしまう。しかし私の身長(170cm)でも十分余裕がある。ただしスカウトに乗ってきた女性スタッフTさんは、ステップ位置が遠くてキツかったとのこと。
いざ走り出してみると、徐行でちょっとアクセルを開いただけでも前に蹴り出すトルクを感じる。さすが水冷DOHCの100馬力エンジン、まるで走りたくてウズウズしている猟犬のようだ。道に出てアクセルを開けると、まったくストレスなくスピードが上がってしまう。気づかないうちに時速100kmなんて超えてしまうので、自制してゆっくり走らないと危ない(笑)。今回の試乗は3分たらずで終わってしまいもっと乗りたかったが(なんならハイ坊のかわりに1週間ほどお借りしたいくらい)、それでも充分に「スポーツクルーザー」だと実感できた。
また良かった点はシートである。後ろに引っかかりのある形状で、鋭い加速でも尻をしっかり押さえてくれる。また(VICTORY車のシートもそうだが)薄いシートに見えて、これがけっこう厚みがあって座り心地がいい。こういう乗り手が直に触れる部分をちゃんと作っているかどうかは実に重要だ。気になる点があるとすれば、かなり前方にあるステップ位置か。長距離でこのステップ位置だと、長時間「く」の字を強いられて腰が痛くなるかも知れない。少しでもステップを手前に持ってくるパーツがあれば、女性にも勧められていいと思うのだが。
「初詣ツーリング」は4時ごろお開きとなり、参加メンバーはそれぞれのルートで帰宅……となったのだが、私はここからだとアクアライン経由のルートしか知らないため、結局ディーラースタッフの皆さんと一緒にディーラーまで帰り、またまたコーヒーをごちそうになって夕方に帰宅。この日はすこぶる天気が良く風が弱めという、絵に描いたようなツーリング日和だった。懸念していた寒さも、かなり日差しが強かったこともあって思ったほどではなかった(……と言いつつ足の指がつったりしたけど)のは良かった。
今回の走行距離はだいたい287km(自宅からディーラーまでを含む)で、2回給油して燃費はリッター20.1kmとまずまず。寒くても案外走れるものだと実感できたのは良かった……が、やはり寒いものは寒い。もうさすがに雪が降る季節なので、春が来るまではしばらくツーリングはお休みである。ともあれディーラースタッフの皆さま、今回は楽しいツーリングをありがとうございました。<(_ _)>