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特別編:トライアンフ ボンネビル・ボバー試乗
茨城県水戸市笠原町 トライアンフ水戸

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2019年3月30日 木城ツトム

さてつくば市から水戸市へは、常磐道〜北関東自動車道を走って1時間ほど。到着した「トライアンフ水戸」はコンビニよりやや大きい程度の店構えだが、店内の床は渋い板張り、古めかしいイギリス国旗柄の革製ソファーに、鉄板をリベット留めした巨大トランクのテーブルなど、さすが英国流のおしゃれな作り。トライアンフの現行車種が並んでなければ、とてもバイクのディーラーとは思えない店内だ。

店員の方に現行車種についての説明などをしてもらい、さっそく外に出て試乗へ。試乗車は、プレミアムモデル「ボンネビルボバー」をさらにメーカーがカスタムした上位モデル「ボンネビルボバー・ブラック」。ボディカラーやエンジン、マフラーをブラックペイントした他、フロントホイール径を16インチにしてディスクブレーキをダブル化、LEDヘッドライトやクルーズコントロールなど豪華装備を標準で搭載する。

クラシカルな外見のボンネビルボバー・ブラックだが、アナログ+デジタルの混成メーターにはエンジン回転数や燃料計まで表示される。店員さんにエンジンをかけてもらうと、腹の底に響くような重低音の排気サウンド!近年、世界的な排ガス規制で排気音量も相当キビしいはずだが、この元気のいい重低音、音の良さはいったいどういうことか。ボンネビルの排気音に比べると、我がハイボールの排気音のショボさに悲しくなってくる(笑)。

スカウト.jpgインディアン・スカウト数年前に試乗会で乗った「インディアン・スカウト」も、水冷2気筒エンジン、排気量1200cc、重量約250kgとボンネビルボバーに近いスペックのクルーザーバイク。しかし水冷エンジンであることを隠さずレトロフューチャー的にデザインしたスカウトに比べ、ボバーは「空冷エンジン風シリンダーフィン」(実際は水冷)「キャブレター風フューエルインジェクション」など徹底的にクラシカルにデザインされている。スカウトのデザインもなかなかカッコいいが、見た目はレトロだが中身は最新式というボバーのテーマには、やはりグッとくるものがある。

さてボバーにまたがってみると、いつも乗っているハイボールに比べてハンドル位置が低いのは当然だが、足のステップ位置が意外と高め。これは地面にステップをこすらないよう旋回性能を上げるためだが、とは言え足が窮屈にはならない、絶妙なステップ位置に設定されている。ちなみにボバーはシート位置を前後に動かして、ポジションを調整できるようになっている。これまでバイクは絶対的に「ライダーがバイクに合わせる」乗り物とされてきたので、こういう「バイクがライダーに合わせる」細かい配慮は大いに評価したい。

ゆっくりと店を出て、ちょっとアクセルを開けてみると「ドドドドド」という力強い鼓動とともに、ググーッと加速する。この力強い鼓動感はハイボールにも負けていないほどで、ちょっと驚いた。また低速から加速していくトルク感もすごい。しかしゆっくりと道を流している時のエンジンフィールは実に穏やかで、ハイボールやファットボブのようなガラガラ感・余計な振動は感じられない。実にジェントルそのものだ。

008.jpg低い位置の一文字バーハンドル、グリップエンドミラーなど個性が光る009.jpgキャブレター式空冷エンジンに見えて、中身は最新式FI、水冷エンジン010.jpg隠されたサスペンションがチラリと見える、ハードテイル風リアサス
012.jpgボンネビルボバー・ブラック。ブラックアウトされたスペシャルモデル014.jpgノーマルボバーに比べて前輪タイヤ幅が太く、ダブルディスクを装着する013.jpg純正ノーマルとは思えないカスタムスタイル。細部の作り込みもポイント

前を走る車との距離が開いたところで、少し加速してみる。「ドドドドド」という鼓動とともに、リアタイヤが地面を蹴る力強さが伝わってくる。この「パワーのある猛獣に乗って操っている感」が非常に楽しい。ちなみにスカウトの場合、トルク感はあるがヒューンとエンジンが回ってしまい、気がつくと100km/h近く出ていた……という感じだった。スピードで言えばスカウトの方が速いかも知れないが、ライディングフィールの楽しさはボバーの方が圧倒的に上だと感じる。

試乗中はとにかくテンションが上がり、思わず道を間違えて試乗用コースから大きく外れてしまった。とにかく無事ディーラーに帰り着くことだけに集中していたので無茶な運転などしなかったが、ゆっくり街中を流しただけでも、充分ボバーのポテンシャルを感じることができた。逆に言うと、ネガティブな部分はほぼ見つからなかった。ちょっと気になるのは燃料タンクの小ささ(9L)だが、燃費がリッター20kmとして150km以上無給油で走れるので、そこまで問題ではないだろう。そしてやっぱりこうして試乗すると、「新しいバイクはいいなぁ〜欲しいなぁ〜」と思ってしまう。