トライアンフとは?
イギリスから生まれた世界的バイクメーカーのひとつ。「トライアンフ」ブランドの設立は19世紀末でハーレーやインディアンよりも早く、現存するオートバイメーカーとしては世界でもっとも古い。ボンネビル・ソルトフラットで打ち立てたスピード記録やレース大会での優勝、また若き日のマーロン・ブランドやスティーブ・マックイーンといったハリウッドスターが作品の中で乗ったことで人気を博した。しかし1980年代にいったん経営破綻し、商標や生産ライセンスを移行して1984年に立ち上げた新生ブランド「トライアンフ・モーターサイクル」が現在まで続く形となっている。
トライアンフの現在の車種カテゴリーは、荒れ地を走る大型オフローダーの「アドベンチャー」、カウルのないスーパースボーツ(いわゆるストリートファイター)の「ロードスター」、クラシカルな英国風ネイキッドの「モダンクラシック」の3つ。今回試乗する「ボンネビルボバー」は王道クラシックスタイルの「ボンネビル」シリーズを元に、余計なパーツをそぎ落とし「ボバーカスタム」にしたプレミアムモデルだ。
クラシックというカテゴリーとは裏腹に、エンジンは1200ccの水冷SOHC、並列2気筒8バルブという最新のもの。またトラクションコントロール、ライドバイワイヤ(アクセルワイヤーを電気式にしたもの)、スリッパークラッチ(急にクラッチを切った時にタイヤがスリップしないようトルクを逃がす仕組み)、ライディングモード切り替え、ABSなど、最新機能が満載となっている(現行モデルすべて装備)。
ボバーとは?
主にハーレーのようなクルーザーバイクをカスタムする手法のひとつ。髪型の「ショートボブ」「ボブカット」の「ボブ」と同じ( =「短く切る」)で、前後フェンダーを短く切ったり、シートもひとり用のサドルシートにするなど、余計なものをできるだけ取り払うなどの特徴を持つ。同じくクルーザーのカスタムに「チョッパー(ぶった切る)」があるが、チョッパーはハンドルを高くしたりフロントフォークを長く伸ばす、またカラーもハデにペイントする傾向があるが、ボバーはフロントフォークもあまり伸ばさず、前輪タイヤも太めで「太く短く」、またカラーも地味に黒っぽくクラシカルに仕上げる傾向がある(※あくまで筆者による考察)。
ハーレー・ファットボブ余談だが、私が現在乗っているヴィクトリー・ハイボール(2013年式)も、以前乗っていたハーレーダビッドソン・FXDFファットボブ(2009年式)も、カテゴリーで言うと「ボバーカスタム」に相当する。時をさかのぼること2006年、ハーレーは「ストリートボブ」という、現在でも人気が高いロングセラーモデルを発表した。このモデルはハンドルこそエイプハンガー(ライダーの肩くらいある高いハンドル)だが、ひとり乗りのソロシート仕様で、チョッパーほどフロントフォークが長くなかった。またボディーカラーで初めてつや消しブラックが採用されたモデルでもあり、「デニムカラー」(ハーレーつや消し色の名称。つや消しの黒は「ブラックデニム」)として現在も続いている。「ボバー」というスタイルをメーカーがカスタムモデルとして発表して世間一般に広まったのは、このストリートボブからだと思われる。
今やイタリアのバイクメーカー・モトグッツィからは「V9ボバー」、またアメリカのバイクメーカー・インディアンからも「スカウト・ボバー」というモデルが出ている。いずれもつや消しブラックのボディカラー、短い前後フェンダーにファットな前輪タイヤという特徴がある。