未完作品の系譜〜挫折の歴史
〜1983〜1984年
「気怪」の話題に入る前に書いておかねばならないことがある。
完成した作品ばかり並べていくと、まるでなんの苦労もなく順風満帆だったかのようだが、そんなことは決してない。
ライトな「CABSTON」のストーリーに飽き足らなくなり、自分が短編を描くのが苦手なことへの焦りもあり、何度か「CABSTON」のシリーズを中断して短編を描こうとあがいた時期があった。
一度目が83年の暮れから84年始めにかけての時期。
・「目覚めし時」(45p)'83.12.19
・「グラビティ・ストーム」ver.1(32p)'83.12.26
・「コレクターズ・第1話・2話」(計51p)'84.1.8
・「グラビティ・ストーム」ver.2(31p)'84.1.20
・「WARMEN」(16p)'84.1.27
すべて絵コンテだけで完成にはいたらなかった作品だ。(「WARMEN」だけは1988年にリメイクという形で完成にこぎつけた。ゆきとぴあのSPECIAL STAGEで観ることができます。)
いずれもアイディアそのものは決して悪いものではなかったが、作品として成立させるための他の要素が欠けていた。
特に一度描き直している「グラビティ・ストーム」は特殊相対性理論を使ったトリックが秀逸で世界観も独特なものがあり、気に入っていたのだがどうしても物語として納得のいく形にできなかった。
この失敗でわかったことは、自分には「構成力」がないということだった。
構成力とは物語全体を把握して、最も効果的な形にシーンを配置することをいう。
また、キャラクターも弱いということを再確認させられた。
絵的なデザインとしてのキャラクターではなく、しゃべって振る舞う個性としてのキャラクターである。
どちらも、絵のように肉眼で見てすぐに優劣がわかるものではないから、どうやれば上達できるのかかいもくわからず、途方にくれた。
二度目のあがきが84年の新学期。
・「QUAD」ver.1(38p)'84.5.6
・「QUAD」ver.2(31p)'84.5.13
・「QUAD」ver.3(30p)未完
・「The Voise System」未完
「QUAD」という作品は投稿用の勝負球として描き始めた作品で、ver.3は下書きまでいったものの未完に終わった。映画「トロン」のヴィジュアルイメージに影響されたものだが、独特の星霊界ファンタジーとでもいうべき世界観を持ち、現在でも機会があったらリメイクしてみたいと思っている作品だ。
挫折したのは投稿へのプレッシャーもあったが、表現しようと思っていたイメージが当時の作画技術の枠を超えすぎていたからで、現在のCGの技術を持ってすれば可能であろう。
「The Voise System」は前編セリフが英語の前衛的な作品で、ハイコントラストな絵は後の「灰者」に通じるものがあった。だが意気ごみだけで始めてオチを考えつかなくて未完。
「俺にはやはり才能がないのか…」などと落ちこむことはしょっちゅうだったが、才能がないぐらいであきらめている場合ではない。
自分の未来がかかっているのだ。不器用なら不器用なりの方法を編み出さねばならない。