ゆ き と の 書 斎

す ぱ ら し き 映 画 た ち

第 5 回

コナン・ザ・グレート

1981年アメリカ 監督:ジョン・ミリアス 脚本:オリバー・ストーン
主演:アーノルド・シュワルツェネッガー

シュワルツェネッガーのメジャー映画デビュー作として知られる「コナン・ザ・グレート」が20世紀フォックスからDVDで発売された。映画はユニバーサルで作られたはずで、どのような経緯があってフォックスから出ることになったのかは知らないが、めでたいことである。
さて、世の中には数多くのすばらしい映画がある。
どこを切ってもおいしいという映画もあるが、中には、ただ一つのセリフ、ただ一つのシーンによって輝きを放つというタイプの映画もある。
「コナン・ザ・グレート」は僕にとって後者の映画の代表である。
時代はアトランティスが沈んでから後の暗黒時代。
冒頭で刀匠である父親が幼いコナンに鋼(ハガネ)の由来についての神話を語る。
大地の神・クロムから巨人族が鋼の秘密を盗んだ。怒った神々は巨人族と戦争し、討ち滅ぼす。
戦場に置き忘れられた鋼を見つけたのは、小さな人間達だった。
父親は言う。「男も、女も、獣も信じるな。ただ鋼だけを信じろ。」
その後、双頭の蛇の紋章をかかげた騎馬軍団の急襲にあい、コナンの村は滅ぼされ、両親も惨殺される。
奴隷業者に売り飛ばされたコナンは筋骨たくましい男に成長し、自由の身となり、弓使いの盗賊サボタイ、女剣士で恋人となるバレリアなどの仲間と共に都の邪教の塔から巨大な宝石を奪うことに成功する。
だが成功に浮かれた彼らは油断し、捕らえられてしまう。
オズリック王はコナン一味の盗みの罪を放免するかわりに、邪教の信徒となった娘を奪還するよう依頼する。
「宝石や黄金などはいつか輝きを失い、王宮すらも牢獄に変わる日が来るものだ。そのとき残るのは親子の情愛だけだぞ」
邪教の塔にあった紋章から、邪教の教祖タルサこそが追い求めていた両親と一族の仇であることを知ったコナンは、仲間の反対を押し切り、単身教団の本拠「力の山」に潜入する。
無表情で穏やかともいえる風貌をした教祖タルサは、コナンに「鋼の謎を解いたのか」と問われ、女性信徒を一声で投身自殺させる自らの影響力を誇示し、「これこそが力だ。鋼の剣も、それを使う者に劣る」と語る。
戻った仲間達と共に首尾よく王女を奪回したコナンだったが、その代償は恋人バレリアの死だった。
巨石遺構に陣を張り、サボタイと二人で邪教の騎馬軍団を迎え撃つコナン。
この戦いを前にして、コナンは自らの神、クロムに語りかける。
「クロムよ。
俺は祈ったことがない。
祈りの言葉すら知らぬ。
(中略)
俺達は二人だけで邪教の者と戦う。命を捨てて立ち向かう。
この俺の勇気をほめてくれるならば、力を貸してくれ。
復讐を遂げさせてくれ!
もし守ってくれなければ、…二度と拝まんぞ!!」
僕がこの映画でもっとも好きなシーンだ。日本語吹き替え版のセリフを元に再現している。
素朴ともいえる神への信仰と、その神に祈るときですらけっして卑屈にならないこの傲慢さ。
コナンのキャラクターをよく表しているセリフだ。
男として生まれたならば、誰しも一度はこのようなセリフを吐いてみたいであろう。
デジタルSFXなどない時代のことであり、たまにあるSFXシーンは稚拙ともいえるが、金のかかったセットによって豪華な映像が作られている。全体にセリフは少なく、演出は抑えが効いていて重厚な大人の雰囲気が醸し出されている。
ベイジル・ポールドゥリスによるテーマ音楽も名曲である。最近ではK-1でジェロム・レ・バンナ選手が入場曲に使っているので耳にした方も多いだろう。
続編が作られているが、こちらは重厚な雰囲気のかけらもない子供向けの作りで、観る価値はない。