[ 夏休みホラーSP ]
ぜっぱんかいしょろく
2004. 7. 23




◎ 怪書対談その3:ふくろう文庫の『怪談』 ◎

←クリックで大画像

写真左:『怪談(ほか)』講談社・少年少女講談社文庫(ふくろうの本)/1972
世界の名作を集めた怪奇小説短編集。小泉八雲の『怪談』の「耳なし芳一」他を中心に
文豪ディケンズの「魔のトンネル」W.W.ジェイコブスの傑作「さるの手」などを収録。


写真中:『怪談(2)』講談社・少年少女講談社文庫(ふくろうの本)/1973
幻想絵画の巨星・辰巳四郎が、表紙絵から挿絵まですべてを手がける。収録作品はポーの
「黒猫」H.P.ラヴクラフト「冷房をおそれる男」小泉八雲「ろくろ首」「雪女」など。

写真右:『怪談(3)』講談社・少年少女講談社文庫(ふくろうの本)/1974
シリーズ3冊目。収録作品はゴーチェ「ミイラの足」マルセル・エイメ「壁をぬける男」
E.T.A.ホフマン「ゲッチンゲンの床屋」上田秋成「きくの日のやくそく」など。



【ゆきと】 では次は…ふくろう文庫の『怪談』か!しかしなぁ、カバーがなくなっちゃったのは残念無念だよ。『怪談(3)』かなんかのカバーのあおりの部分にさ…「怪!怪!怪!世界怪奇名作10本が君を襲う!いけない、その扉を開けてはいけない!!」って書いてあって、俺は「ヒィ〜ッ」って(笑)。本屋で立ち読みしててさ、絶対買わなきゃ!って思って。
【ツトム】 (笑)
【ゆきと】 (『怪談(3)』を見ながら)…ほら「ゲッチンゲンの床屋」の作者はホフマンだよ。 ※ホフマン
ドイツの幻想作家。代表作に「くるみ割り人形とねずみの王様」「砂男」など。
【ツトム】 へぇ〜。
【ゆきと】 えーとまず最初は…。
【ツトム】 『怪談(ほか)』が最初だよ。で『怪談(2)』『怪談(3)』…。
【ゆきと】 (『怪談(ほか)』を見ながら)最初は「魔のトンネル」か。
【ツトム】 ディケンズの。 ※ディケンズ
イギリスの大作家。「クリスマス・キャロル」等で知られる。
【ゆきと】 でも買った順番は違うと思うな、確か。俺はやっぱり辰巳四郎先生の絵にひかれて『怪談(2)』から買ったんだよ。最終的にコンプリートしたんだけど。(『怪談(ほか)』を見ながら)これは挿絵はそんなに怖くないんだけど、このなんか不条理な感じが…。
【ツトム】 「耳なし芳一」…。
【ゆきと】 俺らの先祖が平家だと知った時はショックだったよな(笑)。 ※俺らの先祖が平家
木城家は出自が定かでないため、一族からこのような珍説が出る。確証はない。
【ツトム】 まだ決まったわけじゃないから(笑)。
【ゆきと】 先に「耳なし芳一」から知ったからさ、平家ガニとか(笑)。学校で歴史を習う前に。(『怪談(ほか)』を見ながら)…「さるの手」! ※「さるの手」
知人が海外でもらったという、3つの願いを叶える猿の手のミイラ。強引に譲り受けた主人の一家は、願いが叶うと同時に不幸が訪れる。怪奇短編小説の傑作。
【ツトム】 「さるの手」。さすがにこれは名作ですね。他の本でも見るし。
【ゆきと】 『銃夢』のゲームを作る時に、いろんなアイテムのアイディアを出したんだけど、その中に「さるの手」っていうのがあって(笑)。
【ツトム】 うおぁ〜怖ぇ〜(笑)。
【ゆきと】 普段は何もできないんだけど、ゲームオーバーになった時に一回だけコンティニューできるとか(笑)。そういうアイテムだったんだけど…(ゲーム制作スタッフに)却下されてしまった。冗談のわからないヤツラだ(笑)。
【ツトム】 (読み進めて)うぉあっ…やっぱ絵が超怖いっスよ。
【ゆきと】 『怪談(2)』…(表紙を開いてカラー口絵を見る)ヤベェーッッ!!(笑)
【ツトム】 辰巳四郎先生、イキナリ「ろくろ首」(笑)。 ※辰巳四郎
日本屈指の幻想イラストレーター。『怪談(2)』の挿絵は怪談挿絵の白眉と言っても過言ではないだろう。2003年11月に惜しくも亡くなられた。
【ゆきと】 ヤベェェ…(裏表紙を向けて)後ろこれだし(笑)。
【ツトム】 (悶絶)これは普通の人間なんだよな?…あれ、違うのか?
【ゆきと】 これは何だ?(「ろくろ首」に出てくる)坊さんか?ろくろ首か?まぁとにかく辰巳四郎先生が描くと普通の人間でも怖いからな(笑)。
【ツトム】 普通の人間と妖怪の違いがわからない(笑)。
【ゆきと】 極限の恐怖というものを味わったよな…「冷房をおそれる男」!(挿絵を見て)いきなりこれだもの(笑)。誰だよこれ(笑)。
【ツトム】 (悶絶)この挿絵のせいでラヴクラフト最高傑作という…。 ※ラヴクラフト
アメリカの怪奇作家。太古の昔に異形の神々が地球を支配していたという「クトゥルー神話」の創始者として有名。他の作家もこの神話をベースに作品を発表している。
【ゆきと】 あのさっきの方に(『怪談(3)』)「ダンウィッチの怪」が載ってるけど、「ダンウィッチの怪」全然面白くなかったもんな。で、後になってラヴクラフトの「クトゥルー神話」の代表作だって知ったけど、どこが面白いんだって思って。あの「ダンウィッチの怪」ひとつ読んだだけで俺は「クトゥルー神話」全部読んだ気になってて、(クトゥルー神話って)「つまんねー!」って感じちったから。
【ツトム】 (「冷房をおそれる男」を読み進めて)「ミュニヨス博士」か…(博士の挿絵登場)ウワァ〜〜!
【ゆきと】 アァ〜〜!俺、怖くてこのページめくれなかったよ(笑)。
【ツトム】 これは、博士の普通の状態…(笑)。
【ゆきと】 普通の状態でこれなんだよ。まだ健全だった状態(笑)。溶ける前。
【ツトム】 (溶けていく挿絵)アァ〜〜!
【ゆきと】 ジャジャトムのモデルだよね(笑)。
【ツトム】 なんかこの話自体、辰巳先生のためにあるような…。
【ゆきと】 うんあの、映画では溶けるっつーと本当に、文字通りドロドロと溶解人間みたいに溶けて、単なるゴミみたいになっちゃうんだけど、(挿絵を指して)なんかこれはもう「別の生物」だよな!(笑)別の生物に変貌しているという感じが怖くてさ(笑)。 ※映画
ラヴクラフト原作、B.ユズナ他監督のオムニバス映画『ネクロノミカン』(93)。「冷房をおそれる男」を原作にした一話がある。
※ポー
エドガー・アラン・ポー。アメリカの文豪で推理小説の父。「モルグ街の殺人」「アッシャー家の崩壊」等。
【ツトム】 (読み進めて)ポーの「黒猫」。まぁ『怪談』に収録されるだけあって、ポーの作品の中ではちゃんとしたホラーというかね。…いやーもう何が書いてあるかじゃなくて、辰巳先生の絵が怖いですよ(笑)。
【ゆきと】 「ろくろ首」…これは坊主が主人公なんだよな。(挿絵を見て)これは普通の坊主(笑)。妖怪じゃない(笑)。
【ツトム】 「雪女」…なんかすごい話が多過ぎて、「雪女」が全然印象が薄い(笑)。
【ゆきと】 「壁の中のアフリカ」も怖かったなー、絵が(笑)。…「ふしぎな足音」これも怖かったな。
※「壁の中の〜」
アメリカのSF作家レイ・ブラッドベリの近未来ミステリー。
【ツトム】 これアガサ・クリスティーの。
【ゆきと】 アガサ・クリスティーなのかこれ。すげぇな。そうか、俺はアガサ・クリスティーの本はこれしか読んだことないかも知れん(笑)。話自体はおとなしい感じの、なんかほのぼのとした話なんだよ確か。そんな人を怖がらせるような話じゃないんだよ。絵が怖えぇーんだよこれは(笑)。
【ツトム】 あの溶けた山のようなおじさん…。
【ゆきと】 (おじさんの挿絵登場)これこれ(笑)。『銃夢』なんかにも相当影響与えてるよこれ。
【ゆきと】 『怪談(3)』。これはどっちかっていうとおとなしい話…「ミイラの足」。…「壁をぬける男」。…「ゲッチンゲンの床屋」! ※「ゲッチンゲン〜」
ある嵐の夜、ゲッチンゲンの町の床屋に謎の男が現れる。その男のひげは針金の様で、カミソリはすぐ痛み、そってもそってもすぐ生えてくる。赤く光る男の両目が床屋の主人をにらみつける…。翌朝主人は、意識不明で倒れているところを発見される。
【ツトム】 (笑)
【ゆきと】 「どんどん濃くなるひげ」(笑)「ふしぎなひげでした」(笑)。ここのセリフよく覚えて、つーちゃんもやらないと(笑)。
【ツトム】 (笑)「ふ、ふ、おやじ、俺のひげは床屋泣かせといってな…」どういう客だよ(笑)。
【ゆきと】 これであの、ドイツのゾーリンゲンってのを知ったんだよ。 ※ゾーリンゲン
刃物で世界的に有名なドイツの工業都市。カミソリの代名詞としても知られる。
【ツトム】 これで知ったんだ?(笑)
【ゆきと】 んー。創作かと思ったけど、ちゃんとあると知って感動したよ。それならやっぱり「ゲッチンゲンの床屋」もあるだろうと思って(笑)。
【ツトム】 (この話は)床屋のおやじが死ぬわけでもないし…特に怪奇現象は起きないけど(笑)。
【ゆきと】 しかし男なら、こういう風に床屋を困らせてみたいだろうと(笑)思ったんだけど、俺はひげが濃くならなかったんで(笑)夢のまた夢だったんよ。
【ツトム】 男なら一度はやらないとダメですか(笑)。
【ゆきと】 男のロマンでしょう(笑)。
【ツトム】 ロマンかぁ〜(笑)。
【ゆきと】 この「ゲッチンゲンの床屋」と「壁を抜ける男」以外は…ちとパワーが落ちてる感じがする。
【ツトム】 「菊花の契り」とか?これで初めて読んだんだけど。
【ゆきと】 子供の俺にはちっとわからなかったな、意味が。「どこが怖ぇんだ?」と思って(笑)。
【ツトム】 別に怖い話じゃないし(笑)。
【ゆきと】 で、ケツを占めるすっげー長い「ダンウィッチの怪」は全然怖くないし。まぁ「ネクロノミコン」とかこれで知ったんだけどさ。怪獣が出てくるとか…こんなの「ウルトラ怪獣じゃあるまいしヨォ!」と。 ※「ネクロノミコン」
アラブの狂詩人アブドゥル・ハザードによって書かれたとされる伝説の魔道書。

[ 前のページ ] [ トップ ] [ 次のページ ]
[ 恐怖プリーズに戻る ] [ ゆきとぴあTOP ]