[ 夏休みホラーSP ]
ぜっぱんかいしょろく
2004. 7. 23


木城ゆきとが怪奇系書物フリークであることは、よく知られた事実である。
今回は、木城ゆきとが所有する膨大な怪奇系蔵書の中でも、すでに絶版となって
しまった「幻の」名作怪奇系書物を、ツトム@管理人との対談形式で紹介・解説する。




◎ 怪書対談その1:思い出の児童書シリーズ ◎

←クリックで大画像

写真左:『怪奇ミステリー』佐藤有文・著/学研ジュニアチャンピオンコース/1973
70年代定番児童書シリーズの中の、怪奇系の一冊。著者は怪奇・心霊書の大御所、佐藤有文。
幽霊屋敷などの心霊系、テレパシーなどの科学系、四谷怪談などの古典系など多岐にわたった
内容で、また挿絵も充実した、まさに児童怪奇書の最高峰と言える一本。


写真右:『世界妖怪図鑑』佐藤有文・著/立風書房ジャガーバックス/1973
ジュニアチャンピオンコースと並んで定番の児童書シリーズ。日本以外の悪魔、妖怪を迫力の
カラー挿絵で紹介。この本でしか見られない創作妖怪が多いのも見所のひとつ。



【ゆきと】 じゃあまず思い出の一冊からいきますか。
【ツトム】 思い出の一冊ですか。
【ゆきと】 この超考古学的な『怪奇ミステリー』から。ジュニアチャンピオンコース。佐藤有文先生の…この落書きは誰がやったんだ?(笑)これ確かもらったんだよな、買ったんじゃなくて。松戸のおじさんから、一度に『ゲゲゲの鬼太郎』とか…みんな怪奇モノ(笑)。 ※松戸のおじさん
千葉県松戸市に住む母方の親戚の伯父さん。仏具屋を営む。
【ツトム】 へぇ〜。
【ゆきと】 松戸のおじさんの息子の蔵書を譲ってもらったんだよ。俺が確か小学校3年か4年ぐらいの時に。
【ツトム】 これあれか…後ろがないんで奥付けとかわかんないか。
【ゆきと】 まぁとにかく俺が、こづかいで(本を)買うより前かもしれない。もっとも初期の本。小学校3年…もっと前かもしれんなぁ。とにかくつーちゃんが幼稚園に上がる前だもんな。
【ツトム】 んー。
【ゆきと】 で、こういう世界があるということに俺は目覚めて、ウヒョーってなって本屋に入り浸るように(笑)。(本を見ながら)挿絵の一個一個が怖くてよぉ…。
【ツトム】 とにかく、絵が超気合い入ってますねぇ。内容のバラエティさもすごいけど…。
【ゆきと】 (本を見ながら)この「ゴートム館」が怖くてよぉ。どうなってんのかな…今でもあるのかな? ※「ゴートム館」
「ゴートム館の女主人」。廃墟となったゴートム館で起こる怪現象。自警団が乗り込むが、女主人の亡霊に頭をかじられ、脳みそをすすられて死ぬ。最後の一人だけ命からがら逃げ出すという話。
【ツトム】 まぁそこは佐藤有文先生ですから…(創作も多いだろうと)。
【ゆきと】 ははっ(笑)。(本を手に取って)…これ取れちゃってな。本の後ろなくなっちゃった。
【ツトム】 まぁしかしあれだよね、文芸的なものから伝説的なものから、一通り(怪談話を)網羅してますからね。なんかヒバゴンまで書いてあるし、妖怪の話もあるし…。 ※ヒバゴン
1970年代に広島県比婆山中で目撃された猿のような怪獣。
【ゆきと】 「かんばり入道」を追い払う呪文とか、必死に覚えたよ俺(笑)。円山応挙もこの本で覚えたし。…しかしあれですな、小学校低学年にして科学の基礎…じゃない(笑)、怪奇の基礎を(この本で)叩き込まれたという感じですな。 ※呪文
かんばり入道は便所に出没する妖怪。大晦日の晩に「かんばり入道ホトトギス」と唱えると出なくなるという。
※円山応挙
江戸中期の画家。円山派の始祖。幽霊画で有名。最初に「足のない幽霊」を描いたといわれる。
【ツトム】 …これはちょっと、絵の迫力がモノを言ってるんで…。
【ゆきと】 昔のこういう児童書っていうのは、イラスト描いてる人も一流どころをそろえて、力入れてるよな。
【ツトム】 ねぇ…今見てもすごいもんねぇ。コドモダマシじゃないところがすごいっスね。
【ゆきと】 じゃあ次いきますか。
【ツトム】 うん、次は…。
【ゆきと】 『世界妖怪図鑑』。これも佐藤有文先生。ジャガーバックス…伝説の(笑)。これは俺が自分で買ったやつな。つーちゃんも一緒に『日本妖怪図鑑』を買ったんだよな。…(落書きを発見)これ誰が描いたんだ?(笑)こりゃあつーちゃんの絵だな。
【ツトム】 (となりの絵を指して)これは兄キのだよ(笑)。
【ゆきと】 立風書房…そんな名前の出版社だったんだ。今なくなっちゃったのかな?
【ツトム】 うーん?
【ゆきと】 (内容の)ほとんどが佐藤有文先生の創作だという話だけど…(笑)。
【ツトム】 (笑)
【ゆきと】 (本を見ながら)これな、この「地獄の図」。地獄の下の「抜け穴」からどうやって抜けるか、いつも考えてたよ(笑)。
【ツトム】 (図の説明を読む)「地獄に堕ちても、運が良ければ抜け道から再び地上に出てこられるものと信じられていた」…この本もあれですね、やはり絵の迫力がすごすぎて…とてもとても創作だとは見抜けませんでしたね(笑)。
【ゆきと】 (本を見ながら)こういう妖怪に出会ったらどうしよう!?って思ってビビリ上がって…「なんとかしないと!」と思って…。で、たまにあの、なんだっけ…「どくろ天使」だっけ?(笑) ※どくろ天使
銀色の光を発しながら墓場を徘徊し、その光に触れた妖怪は魔力を失うという。
【ツトム】 ああ、あの「イイ」妖怪ね(笑)。
【ゆきと】 「50年に一回しか現れない」という…現れてくれないかなーと思って(笑)。
【ツトム】 (「どくろ天使」を見ながら)なんのことはない、ただのガイ骨の絵なんだけど(笑)。
【ゆきと】 解剖学の絵だよな。(ページをめくって)「がい骨さがし」…会っちゃったらヤベェーって思ったよ(笑)。「投げ捨て魔人」…最高っスよ…これはイイ妖怪だよな。凍死した人を返してくれるという。
【ツトム】 死体を投げ捨てて返してくれるという…。
【ゆきと】 「牛鬼カルフ」…おいしそう(笑)。
【ツトム】 まぁ創作なんだけど、キャラの作り方がうまいよね(笑)。
【ゆきと】 (巻末ページを見ながら)このへんの「悪魔の系譜」っていうのは、ちゃんと元(になる資料)があるんだよな。ただ載ってる図柄は全然関係ないのが混じってるけど(笑)。
※元(になる資料)
原典は19世紀フランスの悪魔学者コラン・ド・プランシーによる著作『地獄の辞典』。

[ 次のページ ]
[ 恐怖プリーズに戻る ] [ ゆきとぴあTOP ]