文・構成 木城ツトム

さらに奥地へと進む

霊山となった現在の恐山も充分すごいが、僧円仁が初めて見た時のこの地は、それこそ想像を絶した異界であったに違いない。冬になれば立ち入ることも出来ないこの地を、霊山に仕立て上げるのは並大抵のことではなかっただろう。


水子地蔵にとまるカラス

おびただしい数の地蔵尊

地蔵と宇曽利湖

ちなみに「恐山」というのは宇曽利湖を中心とした霊場の名称で、「恐山」という名の山があるわけではない。八つの山に囲まれ108の地獄を見ることが出来る霊場、それが恐山であるという。


ここにもカラス

地獄はさらに続く

湖畔に立つ慰霊碑

しかし恐山は本来、地獄の様相ばかり広がっているわけではない。今回は曇天のためにナマリ色の湖水しか見られなかった宇曽利湖であるが、晴天の時はまさに極楽の様相を呈する。ゆえにその湖畔は「極楽浜」という名なのである。


9年前・晴天時の宇曽利湖

9年前の血の池地獄

合掌・霊場アイス

今回見た「血の池地獄」はなぜか池全体が緑色になっていた(苦笑)。水の成分によって色が変わるのだろうか。また9年前に訪れた時に味わった「極楽の味」合掌・霊場アイスは、今回気温が低すぎて店が出ていなかったのは残念である。



さて最後に私は、おみやげをあさる先生を置いてある小屋へと向かった。そこは無料で入れる恐山の「温泉」小屋である。無料とは言っても恐山の入場料がかかるが、温泉自体は何度入ろうがタダ。これは是が非でも入らねばなるまい。私のオカルト魂(?)が燃えさかったのは言うまでもない。

バスタオルを持っていざ温泉小屋へ。温泉はいくつかあり「冷抜の湯」が男湯、隣の「古滝の湯」が女湯で、ほかの小屋は今回は閉まっていた。小屋に入ってみると中はもうもうたる湯煙。簡単な仕切りで脱衣場所があるだけで、そのまま湯船に直行である。

長方形の湯船は大人8人が入れる程度。湯は真ん中で手前と奥に仕切られている。私は後から誰かが来た場合に邪魔にならないよう気を使い、仕切りの奥の湯に入ろうとした。

ところがこの湯が超高温で、我慢して入ろうと試みるものの、叫び声を上げかねないほど熱いのである。しばらく湯船のまわりをうろついていたのだが、何のことはない、仕切りの手前の湯は適温であった。湯船に身体を沈めてやっと一息である。


ただで入れる恐山温泉

湯は黄白色で硫黄泉らしく肌がツルツルしてくるのだが、いかんせん能書きがどこにもない。しかしこの野性味あふれる開放感は絶品であった。時々観光客のおっちゃんらが小屋を覗いたりするが、タオルを用意してないため入れないらしい。ほとんど私1人の独占状態であった。

恐山に行く機会があれば、ぜひバスタオルを1本持って入山することをお勧めしたい。

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