最初の金縛りと2回目の金縛り


ウルトラジャンプ編集部・木城ゆきと担当
「i」さん(男性)東京都在住

 地元は京都です。五重の塔で知られる東寺(とうじ)のすぐ近くになります(おそらく昔は敷地内だったであろう場所。他に高校や、日本一小さな大学として知られる種智院大学なんかが、同じく敷地内だったであろうエリアにあります)。舞台としてはそんな感じです。

 かつての実家は木造二階建てでした。隣家と壁がくっついている、長屋街のような町内。二階は二間になっていて、奥が僕の部屋でした。襖を挟んで、隣は母の部屋。両方和室です。

 15歳で祖父が亡くなり、その翌年だったと記憶しています。1980年代後半ですね。夜中に目が覚めてみると、体が動かない。『うしろの百太郎』を読んでたので、

「あ、これ、金縛りだ…!」

と思いました。
 とにかく「お約束として、何か出てくる…。ヤバイ…」
と怯えまくって、体が動かないか必死で試すも、やはりお約束として動きません。

 なぜか視界は360度あります。これも怖い。顔は上がらないのに、足元が見えます。で、仕方ないので周囲を見ていくことに。まず枕元を見る。何もなし。左脇。何もなし。足元。何もなし。

 ふう、あとは右脇だ、と気が緩んだところ、視界に飛び込んできたのは

 深緑色の、真っ裸の老人。

 僕に背中を向けて、ふとんに尻をのっけてあぐらをかいてます。どうやら、こちらに気付いてないような様子で…。
 叫び声を上げたはずですが、やはりお約束として声も出ません。

 しばらく母に助けを求めようともがきましたが、動かない、声出ない。で、仕方なく深緑色の老人をおそるおそる観察。気付かないで…とか思いながら。

 よくよく体格を見ると、何となく祖父に似ているような…。
 うわぁ、この時間いつまで続くんだ…。そう思った瞬間、深緑が振り向きました。

 心臓が飛び出るかと思うくらい驚いたら、深緑も驚いた様子で、お互いに「びくっ!」としあった次の瞬間、深緑は特撮みたいにスウッと消えました。顔はのっぺらぼうみたいな感じでした。

 同時に金縛りもとけて、布団から飛び起き、隣室の母の様子を確認すると、余裕で熟睡中でした…。冬だったんですが、汗ダラダラでした。

 それから2〜3日後くらいだったか…。
 また、金縛りにかかるハメに。症状は前回と同様です。で、まず右脇を見ました。何もなし。枕元、左脇。何もなし。最後に足元を見ると…。

 深緑。

 しかし、前回と様子が違います。何が違うって「サイズが違う」。
 小さい!
 小さい深緑がたくさん(10人くらい?)、あぐらをかいて車座になっています。デッサン人形のような、つるんとしたフォルム。クレイアニメのような、表面の感じ。そんなやつらが、車座で、高い声で(でも囁くようなボリュームで)何かを話しあって(?)います。

 目を奪われていると、せわしなく会話していた声がぴたっと止みました。で、全員が一斉に、ゆっくりとこちらを振り返りました。

 また、お互いに驚いた次の瞬間、小さい深緑どもは、ものすごいスピードで、押入れの襖の隙間にシュン!と逃げ去りました。で、金縛りが解けました…。

 ガバッと飛び起きてみると、また冬なのに大量の汗。しかし今度は怖いというよりは、気味が悪い。おそるおそる押入れの襖を開けてみましたが、変わった様子はありませんでした。

 あれは何だったのか…。当然未だに謎ですが、両方に共通してるのは、その後、まったく眠れなかったこと。夢だったんだろうなあ、と思ってるんですが、それにしては妙に細部まで覚えてたりするし…。

 後日、上岡龍太郎がテレビで
「金縛りとか、心霊現象で、その後知らぬ間に寝てる場合は夢だと思う。自分の体験から言うと、本当に見た時は、怖くて全く眠れなくなる。睡眠不足の時ですら、眠れなくなる」
と話していました。だとしたら…?とは思います。

 唯一の救いは、ビジュアル的にも現象的にもそれほど怖くないやつだったことでしょうか。

※本コーナーに登場する人物名は、すべて仮名です。
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