皮 つ き 都 市 伝 説
◆ 第1食:特選!人毛ショウユ ◆



いよいよ製造開始。まずは髪の毛を水でよく洗う。切ったばかりの髪の毛にはけっこう
ゴミが混じっていてキタナイので、水でよく洗い流す。

続いて電熱コンロに水を張った手鍋をセットし、お湯で温める湯煎の準備をする。ビーカーに水200cc、塩酸20ccを入れて10%の塩酸水溶液を作り、ビーカーを手鍋の水に入れる。コンロのスイッチを入れ、いよいよ煮沸開始だ。(手鍋の中のアルミの覆いは、ビーカーを倒さないための支え)


髪の毛ジャブジャブ

煮沸セッティング完了

12時間経過

ここはマスクをしての作業だが、それでも胃液のような酸っぱい臭いがあたりに充満する。もちろん窓を開け換気をしなければ、とてもやってられない程の臭気だ。自分はメガネをしているせいで目は大丈夫だが、しばらく鍋の様子を見ていると、塩化水素ガスのためか胸焼けがしてくる。

煮沸開始から
12時間が経過。髪の毛入りの塩酸水溶液は、すでに2/3は蒸発。残った液は薄茶色になってきた。途中寝るために中断したせいか、やや進行が遅いようである。塩化水素ガスのきつい臭いも気にならなくなった(慣れただけ?)。

さらに煮沸開始から
24時間が経過。髪の毛はドロドロのヘドロのような状態でインクのように真っ黒。両手いっぱいにあった髪の毛は、途中相当のロスがあったとはいえ、今やビーカーの底の方にちょっと残っているだけとなってしまった。だがうかつにマスクをせず近づくと、未だ塩酸のキツイ刺激臭が鼻を突く。いいかげん液体分が蒸発して乾燥しそうなので、この辺で火を止める。

次にカセイソーダ(水酸化ナトリウム)を水に溶かす。しかしこのカセイソーダも劇薬で、容器に「カセイソーダ」「水」の順に入れないと
沸騰して吹き出してくるらしい。5gのカセイソーダに50mlの水を加えると、シュワシュワと音を立て、容器が熱くなってきた。やはり劇薬だ、こんなもの食えるか!とも思うが仕方がない。塩酸に水酸化ナトリウム水溶液を少しずつ加える。すると線香のような煙がユラユラと立ち上る…とても調味料を作っているようには思えない。ナメたら舌に穴が開いたりしないだろうな?

なかなか中性にならずチョボチョボと水酸化ナトリウム水溶液を足しているうち、黒かった塩酸の色がこげ茶色にまで薄まってしまった。四苦八苦しつつリトマス試験紙を何枚も使ってなんとか中性に近づけたので、コーヒーフィルターを使ってろ過する。しかし髪の毛がドロドロのヘドロ状なので、紙のコーヒーフィルターは相性が悪いようだ。ガーゼなどの方がやりやすいと思われる。


24時間経過

ヘドロ状の髪の毛

フィルターでろ過


いよいよ完成に近づいた「人毛ショウユ」だが、色がまだダシツユのように薄いので、再び容器ごと湯煎して煮詰めてみる。この状態で煮詰めると、確かに
ソバツユのような匂いがしてくる。しかしどうも食欲がなくなるような、少し甘ったるい変な匂いだ。

そしてついに完成。一昼夜のうちに出来た、自分の髪の毛から作った「
人毛ショウユ」である。煮沸に使った水200mlに対し、出来たショウユの量はわずか30ml。まともに作るのであれば水1リットル、髪の毛も相当の量が必要だろう。まあわざわざそんな量を作って、本気で調味料として使うのもどうかとも思うが。

さて味見である。まさかなめてみて舌に穴が開く事はないと思うが、色からしてウマそうには見えないし、もろに
薬品の味がしそうで怖い。おそるおそる箸につけてなめてみると…こっ、こっ、これは!(笑)ちゃんとしょっぱくて、確かに「醤油系」の味がする!正直ものすごく安っぽい味で決して美味くはないが、若干コゲたような苦味と、わずかに「味の素」を加えたような風味を感じる事ができる。これをもっと濃くすれば「醤油」として通用してしまっても不思議ではない。思わず笑ってしまった。


右が完成した人毛ショウユ

本物(左)と色を比べる

ショウユと言えばコレ


本物の醤油(キッコーマン特選丸大豆醤油)と比べてみると、まず香りは比べ物にならない。「人毛ショウユ」は若干のコゲ臭と甘ったるい匂いが混ざって、頭が痛くなるような匂いだ。何しろ原料が原料だから仕方がないが、しかしこれは液が薄いことも原因かも知れない。本物の醤油は、もちろんツンと来る醤油独特の醗酵した匂いである。

次に味は、これはそれなりに近いと言っていいだろう。今回の「人毛ショウユ」をうんと濃くすれば、かなり本物に近づきそうな予感がする(
あくまでも予感だが)。しかし、寿司のような食べ方で使うと馬脚を現し、本物との味の違いがはっきり出てしまいそうだ。「人毛ショウユ」を実際に使うとしても、弁当のシュウマイにかけたりするぐらいが限度かと思われる。

最後に色だが、本物の醤油は光に透かしてみると「濃い赤色」なのがわかる。それに対して「人毛ショウユ」はあくまで「
コゲ茶色」だ。これはやはり、アジア人種の髪の色がそのまま出ていると考えていいだろう。限りなく黒に近い茶色である。

理屈ではどんな人種の髪の毛からも作れるのだから、金髪や銀髪、赤毛などを使ったショウユもできるわけだが、やはり醤油と言えば「黒」。それを着色料などいっさい使わず再現した「人毛ショウユ」のアイデアには驚かされる。何しろ「水分」「塩分」「アミノ酸」そして「黒色」と、醤油の醤油たる最低のラインを「髪の毛」「塩酸」「カセイソーダ」のわずか3つでクリアしているのだ。

一般の人がにわかに信じられず、思わずこの「人毛ショウユ」が「都市伝説」化してしまったのも無理からぬところであろう。そしてこの事は、「髪の毛」というものに対する
呪物的な意味合いが、我々日本人の無意識下に深く根付いている証拠と言えるのかも知れない。


★★★


というわけで、このコーナー1回目の「
人毛ショウユ」、実際に作る事はできるのに、成り立ちと製造法の怪しさ故に「都市伝説」化した話ということがおわかりいただけたと思う。次回は、日本人なら誰もが知っている伝説の「ミミズバーガー」にチャレンジする。次回も伝説にかぶりつけ!


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