[ 番外編 ]

UFOと
宇宙人1




近代UFO史の幕開け


1947年。
第二次世界大戦終結から2年が経過したその年は、別名「UFO元年」と呼ばれている。
その名の通りこの年は「モーリー島事件」「ケネス・アーノルド事件」「ロズウェル事件」などが立て続けに起こり、近代UFO史の幕開けとなった年である。


●ケネス・アーノルド事件


1947年6月24日(この日は特に「UFOの日」に定められている)、米アイダホ州で消火器販売会社を経営する実業家ケネス・アルバート・アーノルドは、自家用飛行機でワシントン州カスケード山脈のレイニア山上空を飛行中、九つの編隊を組む謎の飛行物体を目撃した。まぶしく輝くその物体は、山頂付近を信じられない高速度でふらふらしながら飛行していたという。

この目撃事件はすぐさまマスコミに伝わり、アーノルドは新聞記者に対してこう説明した。
「水平にして投げたお皿(ソーサー)が、川面を飛び跳ねるようにして…」飛行物体は飛んでいた。しかし、それを新聞記者は翌日の新聞の見出しに“空飛ぶお皿”(フライング・ソーサー)と誤って表現した。
これがまず「空飛ぶ円盤」という言葉の始まりとなった。アーノルドが目撃した飛行物体は、実際には三日月のようなブーメラン型だったらしい。


●モーリー島事件


近代のUFO史の幕開けとなった事件は前出の「ケネス・アーノルド事件」であったが、この事件が世に知れ渡った後になって、実はこの事件の数日前にも奇妙な事件が起きていたことが発覚した。

場所は米ワシントン州タコマの近くにあるモーリー島付近で、1947年6月21日(諸説あって定かではない)船に乗っていたハロルド・ダールと彼の息子、他に2人の乗組員が、空に浮遊する6機の奇妙な物体を目撃したのが事の始まりであった。

6機のUFOはひとつが幅が約30メートル・真ん中に約7メートルの穴があいた「ドーナツ型」UFOで、金とも銀ともつかぬ金属色をしており、側部と下部に窓があったという。高度約600メートルのあたりで1機を中心に他の5機が旋回し始めた。真ん中の1機は調子が悪いらしく、数10メートルまで高度を下げたかと思うと、突然爆発し、スラグ(金属の精錬の際に生じるゴミ)を思わせる大きな物質を海にまき散らした。他の5機は飛び去ったという。

この事件を知ったSF雑誌の編集者レイモンド・パーマーの呼びかけで、ケネス・アーノルドが事件の調査に乗り出した。さらに米陸軍情報部将校のW・デヴィッドソン大尉とF・ブラウン中尉の二人も調査に加わった。

タコマにやってきたアーノルドがホテルに部屋を取ろうとすると彼の名前ですでに予約が入っていたり、アーノルドに会ったダールが「MIB」(メン・イン・ブラック、UFO事件に関わる人たちを付け狙う怪しげな黒衣の男たち)につきまとわれていると語ったりと、まるで映画のような展開が続いた後、アーノルドは例の爆発したUFOが残したスラグ状の物体を情報将校の二人に渡し、分析を依頼した。

二人の将校は事件そのものを何かのジョークだと思っていたらしく、物体の分析にも消極的だった。しかし二人はスラグ状の物体が入った箱と共に、専用のB‐25爆撃機で飛び立った。それが彼らには最後のフライトとなった。B‐25は離陸から20分後に原因不明の爆発を起こし、墜落したのである。


●ロズウェル事件


現在でも「墜落したUFOの回収事件」といえばまず筆頭にあげられるほど有名なのが、米ニューメキシコ州ロズウェルで起きたとされるUFO墜落事件である。90年代中頃に日本のTVでも放映されて話題になった「宇宙人解剖フィルム」で解剖されている宇宙人の死体は、このロズウェルに落ちたUFO搭乗員で「グレイ」と呼ばれるタイプということになっている。

事件は1947年の7月2日夜10時ごろ、ロズウェル上空を北西の方角に向かって飛んでいく謎の物体をダン・ウィルモット夫妻が目撃したのが始まりだった。この日の夜は雷雲が空を覆っていたが、ロズウェルの北西コロナ近郊の牧場に、雷鳴ではない何かの爆発音が鳴り響いた。その音を聞いて不審に思った牧場主のウィリアム・W・ブレーゼルは翌日、息子たちと牧場に見回りに行くと、何かの金属片の残骸が広範囲に散らばっていた。ブレーゼルはいくつかの破片を家に持ち帰って調べてみたが、何の破片かは見当もつかなかった。

7日になって町に出かけたブレーゼルは保安官にこのことを話し、保安官は軍のロズウェル基地に連絡。情報将校ジェシー・A・マーセル少佐と、対情報部将校シェリダン・キャベット大尉が金属片の回収に当たった。マーセルによると、残骸は薄く軽いアルミ箔のような物質で、ハンマーで叩いても曲がらなかったという。他にバルサ材のような柱もあり、象形文字のような模様が刻まれていた。それら残骸はマーセルが命令を受け、B‐29でテキサス州フォートワース基地へと運ばれた。

7月8日、ロズウェル基地の広報官ウォルター・ハウト中尉は「空飛ぶ円盤の残骸を回収した」とのプレスリリースを発表。一方フォートワース基地に到着した残骸は、同基地のロジャー・レイミー准将に引き継がれ、マーセルはレイミーから余計な口外はしないよう命令を受けた。レイミーはその場でマスコミに向け、先の円盤回収報道は間違いで、残骸は「気象観測用の気球」だったと訂正発表を行った。レイミーは記者たちをわざわざ基地に招き入れ、気球の残骸の写真を撮影させた。しかし本物の(?)残骸はその後、オハイオ州ライトフィールド(現ライトパターソン)基地に運ばれたという。


以上が大まかな「ロズウェル事件」の経緯だが、UFO回収事件には他にも、19世紀末に謎の飛行船が墜落したという「オーロラ事件」や、ニューメキシコ州アズテックやアリゾナ州キングマンなどアメリカ南部の方々で起こっていたとされている。しかしその中のいくつかの事件はでっち上げだと判明し、「ロズウェル事件」もそれらの事件と同一視され、事件発生から30年以上も忘れ去られていた。

ところが1978年、残骸を回収したジェシー・A・マーセル(元少佐)が「私は1947年にロズウェルでUFOを回収した」と発言し、1980年にはUFO研究家のウィリアム・ムーアと「バミューダ・トライアングル」の著作で知られるチャールズ・バーリッツが共著で「ロズウェル事件」を題材にした著作を発表した。これにより「ロズウェル事件」は再び世間の注目を集めることとなった。

この時のムーアの調査により「ロズウェルの別の場所にもUFOが墜落していた(ロズウェルには破片が落ちただけだった)」「宇宙人の死体を米軍が回収するのを見た」などと主張する人間が現れ、また後に世間を騒がせることとなる「MJ(マジェスティック)−12文書」(※1)が出回るきっかけとなった。

その後の1994年にはアメリカ空軍による「ロズウェル事件」の膨大な調査レポート(※2)が発表され、また前出の通り「宇宙人解剖フィルム」が登場したり、映画の題材(※3)になったりして、常にUFO墜落事件の典型的事件として取り扱われている。


※1…ロズウェル事件をきっかけとして、極秘裏に結成されたという米政府直属のUFO問題管理委員会のレポート。軍や政府の高官、科学者の12人で構成されている。これを記した文書は記載に怪しい点が多く、現在ではUFO研究家の間でも偽書と見られている。

※2…1947年当時、アメリカ軍は遠くソ連で行われているかも知れない核実験を、大気の振動でキャッチする極秘実験「プロジェクト・モーガル」を行っていた。発表されたレポートでは、ロズウェルで回収されたのはその実験で使われた連結気球である、との結論を出している。また前出の「ケネス・アーノルド事件」で目撃された物体も、こうした連結気球であるとする見方が有力である。

※3…米映画『ロズウェル』(’93)。主演のカイル・マクラクランがジェシー・A・マーセル少佐を演じている。





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《 世界10大怪奇・後編 》

参考文献
政府ファイルUFO全事件
(ピーター・ブルックスミス/大倉順二/並木書房)
人類はなぜUFOと遭遇するのか
(カーティス・ピーブルズ/皆神龍太郎/ダイヤモンド社)
エイリアン・ベース
(ティモシー・グッド/斎藤隆央/人類文化社)
ボーダーランド
(マイク・ダッシュ/南山宏/角川春樹事務所)
週間エックスゾーン
(デアゴスティーニ・ジャパン)
世界謎物語
(ダニエル・コーエン/岡達子/社会思想社)
世界不思議物語
(N・ブランデル/岡達子ほか/社会思想社)
世界怪奇実話集
(N・ブランデルほか/岡達子ほか/社会思想社)
世界謎の10大事件
(醍醐寺源一郎ほか/学研)
世界はこうしてだまされた
世界はこうしてだまされた2
(高倉克祐/悠飛社)
最新 異星人遭遇事件百科
(郡純/太田出版)
謎の怪事件ファイルX(日本編)
(並木伸一郎/二見文庫)
宇宙人の死体写真集
宇宙人の死体写真集2
大謀略
(中村省三/グリーンアローブックス)
宇宙人とUFOとんでもない話
(皆神龍太郎/日本実業出版社)