す ぱ ら し き ホ ラ ー 映 画 た ち
第 2 回
スポンティニアス・コンバッション
原題:SPONTANEOUS COMBUSTION
1989年 監督・脚本:トビー・フーパー
恐怖度/★★
哀愁度/★★★★

ぞっとする死に方は数々あるが、生きながら焼かれて死ぬというのも最悪の死に方のひとつだろう。

スポンティニアス・コンバッションとは人体自然発火現象のこと。SHCと表記されることもある。
これは昔から現実に起きている怪現象で、日本ではあまり知られていないが欧米諸国ではかなり頻繁に報告されている。特に1951年にアメリカ、フロリダ州で起きたメアリー・リーサー夫人の焼死事件は有名で、FBIによって徹底的な調査がされたが、その原因は謎のままとされる。

このような怪奇マニアならニヤリとさせられる題材を、「悪魔のいけにえ」「スペース・バンパイア」のトビー・フーパーが映画化した。

1955年、ネバダ砂漠の水爆実験場でひとつの実験が行われた。若きベル夫妻は、核シェルター「サムソン」と放射能抗体の被験者に志願する。
実験は成功し、新時代を開くアメリカン・アトミック・ファミリーと讃えられる夫妻。
シェルターの中で身籠もったベル夫人は、8月6日に男の子を出産。
しかしその直後、夫妻は人体発火を起こし、焼死してしまう。
現代。ベル夫妻の息子、サムは両親のことはなにも知らずに成長し、大学の教授となっていた。
彼のまわりで謎の焼死が連続して起き始める。彼自身の腕も火をふきはじめ、やがて彼の人生そのものが邪悪な計画の一部であることを悟りはじめる…。

この映画では、人体発火現象は原子力実験の副作用として描かれている。いわば原子力の「呪いの火」だ。広島に原爆が落ちた日と同じ日に生を受けた主人公は原子力に呪われた宿命を持った超能力者で、彼が激怒した人間は無意識のうちに原子の炎で焼き滅ぼしてしまう。しかしそのパワーはコントロールできず、自分自身の肉体をも焼いていってしまうのだ。
原子力の暴走は、自滅しかない。ラストでそれを体現した主人公に、涙を禁じえない。


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