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怪獣画の時代〜陰影画法の発見 〜1972年ごろ |
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僕が幼稚園の頃のはずだから、1971年か1972年のこと。 当時ウルトラ怪獣が大ブームで、幼稚園児の僕もクレヨンで怪獣の絵ばかり描いていた。ただし正統ウルトラ怪獣ではなく、オリジナルデザインの怪獣であった。 すでにあるウルトラ怪獣を正確に描くには写真などを見ながら描く必要がある。いつも資料が手元にあるわけではないし、参照するのも面倒。ならば勝手に自由に描いてしまえ!という理屈である。 あと特徴的だったのは、ウルトラマンなどのヒーローはぜんぜん描かなかったこと。描くのはあくまで爬虫類的な特徴を持った怪獣ばかりであった。 単に爬虫類/両生類好きが反映しただけだと思うが、もしかすると人間社会的秩序を代表するウルトラマンより、自然的混沌を代表する怪獣によりシンパシーを感じていたのかもしれない。 実際、自分は人間よりカエルに近いと当時考えていた。この話は別の機会にしよう。 題材が異色だったせいか、怪獣画は周囲に好評で、幼稚園で隣に座っていたガキなどはどこで憶えたのか「師匠」などと僕を呼んでいた。近所の人や親戚のおばさんが欲しがるのでどんどん人にあげてしまい、手元に現存する物はほとんどない。 絵の構図は、画用紙いっぱいに一体の怪獣が真正面、あるいは真横から描かれていた。背景や対比物などは一切ない。設計図のようにパースのない絵で、デザイン画に近い。 対象物の形を表現するのに手一杯で、立体的に見せようという考え方がまだない段階の絵である。 父タダマサは時々鋭いことを言うので侮れない。 ある日、壁にはってある真横を向いた怪獣の絵を見てこう言った。 「この怪獣、向こうの手はどうなってるんだ?」 「向こうの手は、手前の手に隠れて見えないんだよー」と僕は抗弁したはずであるが、そう言われてみれば変な感じがする。 しかし、自然に立体感を出すにはどう描けばいいのかなど、当時の僕には雲をつかむようなことであった。 自分でも特に不満だったのは、怪獣の足の爪の描き方だった。 爪は円錐形をしてるのだが、真正面から描くとただの丸になってしまい、ぜんぜんそれらしくない。どうやったら真正面から円錐形とわかる絵が描けるのか。 |
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今でも鮮明に憶えている。 その日、僕は座敷で一人遊びをしていた。新幹線のオモチャを正面から見たとき、ハッとした。障子からの光が新幹線のノーズを横から照らし、反対側に三角形の影ができていた。ご存じの通り、初代新幹線のノーズは先の丸い円錐形をしている。 さっそく、真正面の怪獣の爪に三角形の影を描き入れてみる。 おお!紙の絵なのに立体的に見える!! 大発見であった。 |
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