 | 先日近所で起きた水難事故を目撃して一つ思い出した話。
図らずも憑依現象にも関するものです。
先日出先から地元に戻ると、近所の橋の上に人だかりができているのが目につきました。車の窓を開けると、ヘリコプターの大きな音が聞こえ、あまりに大きな音だったので反射的に窓を閉めました。
ヘリコプターは、川のすれすれまで降りているものが１台、上空を旋回してるものが２台ほど目に入りました。
私の地元ではこのような光景は、頻繁というほどではありませんが、とりわけ珍しい光景でもなく、数年に一度は同じような光景を目にするので、取り立てて気にはなりませんでした（事故の頻度は単純に私がその時に遭遇しないだけで実際はもっと頻繁に起こっているのかも知れませんが確認もしないので正確な頻度は分かりかねます）。
"川に人が落ちて捜索ヘリが出動する"
そう聞くととりわけ何でもない水難事故のように聞こえますが、昔からこの土地に住んでいる私がそれを聞くと、地元にまつわるある”話”を思い出し、事故と妖異世界との関係を想像せずにいられません。
私たちの街には大きな川が流れていますが、その川は高い堤防に挾まれ、ごく限られた場所を除いて、土手側から川へ降りることはできなくなっています。堤防は歩道側からは160cmほどのコンクリートの壁の上にさらに鉄の柵が乗せられ、余程の意欲がなければ乗り越えようとは思わない作りになっております。またその柵を乗り越えても、堤防の向こう側は川の水面まで何メートルもあり、飛び降りるのも這い上がるのも困難な構造になっています。それでも希に川に下り、小さな川原（数メートルの小さなものが点在する）で釣りをする人がおり、そのような人が水難事故を起こすのだと思われます。
"あの川に降りてはいけない"
現在では降りたくても容易には降りれませんし、降りても目に見えて危険なので降りようなどと思ったことは一度もありませんが、私はそのように聞いて育ちました。理由は…
"川に近づくと動物霊にいたずらをされる"
私の年代でこのような話(教訓?)を知っている人間はほとんどいないはずですが、私の実家の寺にそれを裏付けるエピソードが残っておりますのでご紹介致します。その話というのは以下のようなものです。
当時、私の祖母は妹とある一人の僧と３人でよく寺の客殿の縁側でお茶を飲みながら話をしておりました。３人は集まってお茶を飲む前に本堂に上がり、本尊に手を合わせてからその日の会談をはじめるようにしておりました。そんなある日、本堂から戻った祖母の妹の様子がおかしいことに気がつき、その僧が経文を唱えると、祖母の妹は突然男性のような野太い男性の様な声を発し乱暴な口調でこう言ったそうです。
「俺はそこの川に住む狸だ。冷蔵庫にお前の息子が今朝買ってきた上等なマグロの刺身が入っているから、それと旨い酒を一緒にして川まで持ってこい。きっとだぞ。」
…と言って消えたそうです。
冷蔵庫を開けると、そこには確かにマグロの刺身が入っており、３人はそのマグロと日本酒を持って川に行き、お盆に乗せて流したそうです。
この話は、その狸と称するものが、祖母の妹の口から語ったことを、その場にいた祖母が一部始終をノートに記録したものを読んで知りました。ノートには他にももう少し会話のやりとりがあったような気がしますが、今はもう覚えておりません。
また、祖母がなぜその会話を記録をしたか(できたか)というと、祖母の妹の口を借りて霊が何かを語ったのはその時が初めてではなく、それ以前にもしばしば同じような事が起きたので、祖母は常に筆記用具を用意していたそうです。
その僧は日蓮宗の僧で（うちの寺は真言宗）、日蓮宗は憑依現象を祓うことを生業とする寺が多いとも聞きますので、このような憑依した霊を出現させ、語らせる術を身につけていたのでしょう。
また、ノートには動物霊から過去に死んだ人間の霊、時には土地神と称するもののまで様々なものが登場し、様々な会話が綴られておりました。（会話内容は主に成仏できない理由や死後も気になっていること。またそれについて頼み事をするものもいれば、単に恨み言を言って消えてしまうもの、様々でした）
祖母はそのノートを私が成人するまで保管し、私に見せたら焼却しようと決めていたそうでした。
が、結局私が見た後もそのノートは焼却する気になれず、どこかに預けたと言っておりました。
先日の水難事故に遭われた方の安否は不明ですが、上記のような理由により、そのような事故が起こると、その人は何か恐ろしい体験をしたのではないかと思わざるを得ません…
おしまい。 |
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