特別寄稿の壱
「巨大クサガメ」 木城 ゆきと |
僕が小学校5年生頃、千葉県柏市に住んでいたときのことです。
日がとっぷりと暮れようとしている時間帯でした。 生活排水が流れ込む溜め池(10×3メートルぐらいの大きさ)を見下ろす道のガードレールに寄りかかり、ふと下の水面を見ると、カメがいます。 カメは甲羅の前半分と頭を水面から出し、コンクリの壁と水面の喫水線に群がっているイトミミズをのんびりとついばんでいます。カメの目の後ろから首筋にかけて走る黄緑色の線で、それが見なれたクサガメという種類であることはすぐにわかりました。 大きすぎるのです。 僕のいるガードレールから溜め池の水面まで2〜3メートルの高さがあります。 「家に走っていって、網を取ってくるか!?」 しかし、ここから家まで、駆け足でも10分はかかります。 躊躇しているうちにも、どんどん日は暮れていきます。もうすぐ暗くなって、カメを視認することもできなくなるでしょう。 結局僕は、網を取りに家に走りました。 |