特別寄稿の参

「筑波へ向かう巨大UFO」

木城ツトム

我が木城家の実家は、筑波山を一望できる茨城県の南西部に位置している。
とりわけ二階の私の部屋は、小窓から風景画のように筑波山を望める良好な環境であった。
冬場には、筑波山から登る朝日を目にすることができる。

ある夜のこと。

机に向かっていた私を、外から呼ぶ声がする。
何だろうと思って小窓を開けて下をのぞくと、隣の家に住む親戚のおじさん、通称「裏のおじさん」がいるではないか。きょとんとしている私におじさんが話しかけてきた。

「つとむ、あれなんだ!?」

ふいにおじさんは天を指さした。へ?と思って夜空を見上げると、家の屋根のすぐ上に(夜なのでそう見えた)、タテ2列、等間隔にまっすぐ並んだライトが音もなく横切っていた!
ライトは8〜10個、端から端までの長さは腕をのばして30cm以上はあった。その光の列は一定のスピードで筑波山の方角へ流れている。

「兄キ、UFO、UFO!!」

私が隣の自分の部屋にいたゆきと先生を呼ぶと、瞬時に駆けつけてきた。が、その時にはすでに光の列はかなりの距離まで遠ざかっていた。
わずか30秒たらずで筑波山までさしかかったかと思うと、見えなくなってしまったのである。

裏のおじさんは「いいモンが見れたろ?」と言うと笑いながら平然と立ち去ってしまったが、我々兄弟は呆然としていた。

問題は、その怪物体の巨大さとスピードである。
等間隔に並んだライトは、おそらくひとつの巨大な飛行物体を表していると思われた。それが音もなく飛び去った速さが尋常ではない。
同じようなルートを(ただしはるか高空を)自衛隊の戦闘機がよく飛んでいるのだが、例の怪物体も同じぐらい、むしろ戦闘機より速いくらいのスピードであった。

唯一まともな説明ができるとすれば、すごいスピードで飛び去った飛行船という説明である。だが、ジェット機なみのスピードで飛ぶ飛行船というのも、ちょっと想像がしにくい。

そして家の上空を飛行船が通過する姿を、私は一度も見たことがないのである。