プリーズの弐拾参

「海の恐怖」

徹鬼 さん

海で泳いでいると、見えない水中から何かがやってきて引き込まれるのではないか、という恐怖を感じたことはありませんか?
私はいつもそうです。そして、これはどーやら、あるトラウマちっくな記憶に関係しているようです。

まだ泳ぎの出来ない小学生以前の頃、ぢーちゃんと海水浴に行ったときのこと。
泳げないので当然、浮き輪に入っていたわけですが、沖の方に行くにつれてだんだん足がつかなくなってきます。
そしてもう、どれほどの深さがあるのかもわからない(実際には2mもないと思う)ところまで来たとき、何かの拍子に浮き輪からするっと抜けて海中に沈んでしまいました。

別に足を引っ張られる感触があったとか、そういうことはありません、たぶん(だから怪談にならなくって申し訳ないのですが)。
とたんに世界は真っ白にホワイトアウトし(あんまりきれいな海じゃないですから)、水中で一回転する自分の姿を、なぜか外から見ていました。
オレは死ぬのか?と思ってもがいていると、波が岸の方に運んでくれたのか、一回転して足がつきました。

ぢーちゃんの方は、突然姿が消えて次の瞬間岸の方に現れたので、わざとやったに違いない、泳げないのに勇気のある奴!と思ったらしいですが、そんなわけないだろ。(^^;)

このときの、自分を外から見ているイメージは今も記憶に焼き付いています。

考えてみると、下の空間から襲われる、あるいは引きずり込まれるというのは、地上ではまずあり得ないことですから怖いんですよねぇ。
この恐怖は、映画「ジョーズ」や「ピラニア」のポスターがよく表現していましたが……。
あんなのを熱心に見ていたからかもしれない。(^^;)
これは新聞で読んだのですが、舟にロープで引っ張ってもらいながら泳いでいた女性が、ダルマザメにかじられて亡くなったという痛ましい話がありました。
ダルマザメは獲物にかみついて肉をえぐりとっていくという独特の攻撃パターンをもった奴です。「気がついたらおなかがなかった」そうです……。

やはり、「下から何かがやってくる」というのは恐ろしい。