プリーズの弐拾弐

「居るはずのない兄」

オサ・Y さん

小4の頃、家で寝転がってTVを見ていました。

TVの下にはガラス張りのケースがあって、向こうっ側の部屋が良く写って見えてました。
で、夕方そのガラスに兄貴(高2)が歩いているのが写りました。でもTVが見たかったので、そっちを向かずに「兄ちゃんおかえりー」と声をかけました。

兄貴は返事もせず、そのまま二階へあがっていくのが見えました。

母親の「ご飯やでー」の台詞で夕飯なんですけど、食卓を見ると兄貴の分だけ用意されていませんでした。

「兄ちゃんの分は?」
「あぁ、今日から合宿やて、来週までかえってけーへんよ」
「今から?」
「いや、今朝早よーに」
「ウソや、さっき帰ってきたがな!」
「何言うてんの?」

で、僕はすぐ二階の兄貴の部屋や、そこらを探したんですけどやはり居ませんでした。

そして、一週間後兄貴は……五体満足で帰ってきたんですけど、あの日ガラスに写っていたの間違い無く兄貴でした。

ああいうのを“ドッペルケンガー”っていうんでしょうか?