Q ガリィは、バ−サ−カ−ボディやレ−ス用の機体など、いろいろと体を変えていますが、それによって人格や性格が左右されることはないのでしょうか?
A 変わると思っています。1巻のマカクの言葉やイドのセリフなどに現れています。
ただガリィは人型からはずれたようなボディにならないので、あまりはっきり出せませんでしたが…。
ペシュカブズみたいなボディになれば、ガリィでも「ギッギッ」とか言うんじゃないでしょうか?(^^;

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Q PSソフト「銃夢・火星の記憶」で、ザレムのダストチェンバーにいたデッキマンが、ノヴァやイドのパラシュートを使ったザレムからの脱走を手引きしたそうですが、イドって高所恐怖症のはずでは?
もしかして、それが原因で高所恐怖症になったとか?
A その線濃厚ですね〜。(笑)
ダストチェンバーからゴミに紛れてパラシュート降下、というのは危険きわまりない行為です。
乱気流、巨大ダストとの衝突の危険、コースを外れれば撃墜、着地地点はザレム山の斜面、と、まず助かるのは奇跡といっていいでしょう。
ノヴァの場合は、パラシュート以外の何らかの確実な方法をとったと思われますが…。

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Q そういえばザレムの通貨は「チップ」でしたが、ひょっとしてザレム人のジャンクパーツなんでしょうか?
A うむっ。実はそうなのです。
ザレム人がチップ脳だというアイディアは連載当初からありました。
描かれなかった連載第二話の構想では、イドは独自にチップ脳の秘密を知ってしまって発狂し、本当の連続殺人鬼になってしまい、ガリィに倒される…という筋でした。
一話を描いてみて、イドがなかなかいいキャラになったので二話で殺すのが惜しくなり、結局描かれませんでした。

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Q ザレムって、星間連絡船の実験用に作られたものですよね。
星間連絡船といえば、広大な宇宙を密閉された宇宙船で1隻または複数で長期間、旅をするものだと思いますが、とすると、ザレムの下に山ができるほどゴミを出していいように設計されているのは変だと思いますが?
A ザレムがゴミを出しているダストチェンバーは、メルキセデクが発狂するまでは軌道エレベーターだったので、星間連絡船の実験を行っていた頃はゴミを出していなかったのです。
しかしながら、ザレムは閉鎖社会のシミュレーションではあっても閉鎖生態系のシミュレーションではなかったんですねー。

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Q 「プラズマジェット」ってなんですか?
A プラズマジェットはSF用語でもなんでもなくて、単なる工業技術用語です。
プラズマジェット発生装置はわかりやすく説明すると、強力なアーク放電に高圧ガスをぶつけることにより、数万度ケルビンの高温・高電離プラズマを噴出させるものです。
この超高温で噴出するプラズマがプラズマ・ジェットで、分厚い金属板もみるみる切断してしまうパワーがあります。
ガリィのバーサーカーボディはこのプラズマジェットに加え、拳を電磁的に加速(MHD推進)しているので、マカクの腕を一瞬で破壊したのも当然と言えます。

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Q 「銃夢」の第一話で、イドがガリィに隠れてハンターの仕事をしたとき、イドは殺人嗜好者だったのに、なぜ単行本では普通の人になっているのですか?
A 書き直しや書き換えはしてないので、考えられる可能性としては…。
コミックス1巻の初版では48pの一番下のコマのイドのセリフが抜けてしまっているのですが、そのためではないでしょうか。
第2版以降では修正され、ちゃんとセリフが入っていると思います。
さらに裏話的な話をすると、銃夢外伝「聖夜曲」ではイドはまだ殺人嗜好が表面化していないように描かれ、ハンターという職業は半人前の医者としてのイドがクズ鉄町で生き延びるための手段となっています。
「聖夜曲」ラストで一人前のサイバネ医師となったイドはもう生活のためにハンターをやる必要はなくなったのですが…。
やはりキャロルとのエピソードが大きくイドの人生に影を投げかけ、人望の厚い医師としての昼の顔と、変質的なハンターとしての夜の顔に分裂していったのではないか、と思われます。

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Q PSソフト「銃夢・火星の記憶」のことですが、ラストが非常に残念でした。
それまでのストーリーが盛り上がっていく中で、あのラストは手抜きのように感じられたのですが…。
A う〜む、そうですか。
実は僕が書いた最初のシナリオでは、原作どおりザレム墜落→ガリィ復活という「しみじみエンディング」もあって、宇宙編での「スラップスティック・エンディング」とあわせて、ザレムでシナリオが分岐するマルチエンディングの予定だったのですが、容量の問題でばっさり切られました。
宇宙編での「スラップスティック・エンディング」は、ノヴァが宇宙編であまり活躍していなかったから最後に爆発させてやりたかったのと、ガリィが元気に駆けだしていくところで終わりたかったのでああなりました。
そのため、宇宙編の続編を作る予定はありません。(^^;

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Q ケイオスの「サイコメトリ−」という能力ですが、彼は自分の意志で情報を読みとっているのですか?
それとも自然に頭の中に入ってくるのですか?
A 実在の超能力者がどうなのかはわかりませんが、いちおう銃夢世界では次のように考えてます。
対象物の「記憶」には「強さ」の違いがあり、ある一定の識閾値以下の記憶の強さのときにはケイオスは無意識サイコメトリーはしない。意識的に集中してサイコメトリーしなければならない。
ある一定の識閾値以上の記憶の強さの対象物の時は、無意識サイコメトリーが働いてしまう(違法無線でラジオが勝手に鳴るような状態ですね)。
非常に強い記憶の場合は、サイコメトリーしないようにブロックすることは難しい(精神力の強さに比例)。

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Q PSソフト「銃夢・火星の記憶」で「メスメル流」というのが出てきますが、メスメルとは何者ですか?
A え〜、フランツ・アントン・メスメル(1734-1815)というのはオーストリアのお医者さんで、「動物磁気」という理論で治療活動を行い、現代では一般に催眠術の祖として知られています。
メスメルが考えた「動物磁気」というのは物理学での磁気とは無関係で、生命力に関係する流体エネルギーのごときものであったといいます。この点、東洋における「気」とほとんど同じものと考えていいでしょう。
メスメルはこの動物磁気を操って患者をトランス状態に導き、多くの病気を治したため、当時のフランスで大流行したそうです。

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Q 銃夢の単行本5巻20ページ(完全版3巻316ページ)でガリィが言っていたハンス・ヘニー・ヤーンて誰ですか?
A ハンス・ヘニー・ヤーンはドイツの人で、マイナーな作家みたいです。
僕が初めて「十三の不気味な物語」を読んだのは高校の図書室でだったのですが、その後本屋で売っているところを目撃したのは一回しかないです。
今手元にある本は、白水社の白水uブックスという文庫シリーズで、種村季弘という人が翻訳した「十三の不気味な物語」1991年第6刷版です。
ハンス・ヘニー・ヤーンはほかに「岸辺なき流れ」という大作を書いているらしいですが、これについては日本で翻訳出版されているかどうかもわかりません。

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Q 銃夢では、色々な格闘技が登場しますが、パンツァークンスト、マシンクラッツといった実際には存在しない格闘技の技を作る時に、どんな格闘技を参考にしているのですか?
A 機甲術は、ジャンプ系やキック系の技はオリジナルですが、手技の部分は実在の格闘技「ジークンドー」を参考にしています。
ジークンドーはブルース・リーが創始した格闘コンセプトで、「バーチャファイター」のキャラの技としてえらく有名になってしまいましたが、バーチャで使われているのは実際のジークンドーとは似ても似つきません。
単行本2巻44p(完全版2巻18p)、6巻102p(完全版4巻290p)等でガリィがやっているのがジークンドー(正確には詠春拳が起源)のトラッピング・テクニックです。
6巻156p(完全版4巻344p)ではフィリピン武術「カリ」のブレード・テクニックを使っています。
技を参考にしているだけではなくて、機甲術はジークンドーから発達したという設定になっています(その辺のくだりがゲームの宇宙編シナリオにも登場します)。
僕は銃夢を描くはるか前、1985〜86年頃、「生身・素手でサイボーグと戦うにはどうしたらよいか」「無重力状態における格闘とはどんなものか」などをつらつらと考えていた時期がありまして、それらの下地が銃夢で開花したようです。
ジャシュガンの両腕グラインダーのデザインもこのころに考えたキャラが元になっています。
実際には、僕は銃夢を描くまでは格闘技のことは無知で、せいぜい「北斗の拳」と梶原一騎の漫画を読んだ程度の知識しかなかったのですが(若い人は知らないかもしれないので解説すると、梶原一騎とは「明日のジョー」「巨人の星」「空手バカ一代」などの原作者、故人です)、銃夢が始まってから本を読みあさって今ではすっかり格闘技おたくになってしまいました。(^^;

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Q モーターボール編で、エドが一本に打ち直したダマスカス・ブレ−ドをラム・ダオから受け取る時に「タッチ・アップには超高圧水流か超音波を使わなきゃだめだぜ」と言ってますが、超音波で金属を研ぐというのはどういうことですか?
A 僕もよくわかりませんが(オイオイ)、たぶん研ぎの最後の仕上げに超音波で分子レベルのタッチアップを行うのでしょう。
ほとんど目に見えないぐらいの精度だと思います。

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Q ガリィやイドは、一度死んだあとノヴァのナノテクノロジーで蘇ってますが、両者とも死ぬ前までの記憶を持ってきちんと再生してました。
ということは、ノヴァが記憶を移植する装置でちゃんと移植したということなのでしょうか?
A 人間の記憶が脳のどこに、どんな形で保存されているか、ということは現在の科学ではまだよくわかっていません。
脳の記憶形態に関する仮説のひとつに「ホログラフィー仮説」というものがあります。
ホログラム写真を記録したガラス板は、粉々の破片になってもそれぞれの破片から画像の全体像を再生できるそうです(解像度は荒くなるそうですが)。
脳の「ホログラフィー仮説」はさまざまな臨床例から、記憶もホログラム写真のように、脳の全体に散在して記憶されているのではないか、という仮説です。
ノヴァの脳修復技術の論拠はこの「ホログラフィー仮説」に拠っていて、ナノテクで脳の仕組みと記憶の構造を完全に把握しているノヴァは、脳の一部分から記憶の全体像を再現できる、という理論になっています(低解像度の画像から高解像度の画像を補完して作り出すようなものですから、その情報補完技術にはノヴァ独自の高度なものが要求されるでしょう)。

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Q 銃夢・コミックス5巻で、バーサーカーザパンと戦ったときガリィが使っていたあの拳銃はなんという銃なのですか?
A 劇中に出てきた銃はS&W・M610です。
大型のNフレームにオート用の10ミリカートリッジをハーフ・ムーン・クリップで装填します。色はつや消しシルバー。1990年に6インチモデルが五千丁だけ限定生産されました。
劇中に登場したモデルはリヤサイトが取り外され、ハンマーの親指をかける部分が削られるなどの改造が施されています。

懐から取り出して至近距離で狙いを付けずにダブルアクションで撃つことを目的にしたものと思われるが、こうした改造は本来小型の携帯性に優れたリボルバーに行うものです。
大型のNフレームの銃で携帯性を重視するとは、前の持ち主はよほど大柄だったのでしょうか?

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Q 銃夢・コミックス9巻169ページ、宇宙空間で陽子のボディを破壊して「ニィッ」と笑う影が出てきますが、あれは結局何者なのでしょうか?
A あれは通称「笑う男」とか呼ばれていますが、PSゲーム版「銃夢〜火星の記憶」の宇宙編に登場する「ガルエデ」というキャラクターです。
ゲームをプレイしていない方でも、銃夢・完全版2巻の巻末付録「ガンムワークス」でスケッチを見ることができますのでご確認ください。<(_ _)>

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Q 英語版の銃夢ではガリィの名前が「アリタ」になってますが、これはなぜですか?
A ガリィ(GALLY)を英語に訳すと「不毛」とか訳されてしまいます。その他「GALL」にも「苦い」とか「あつかましい」といった悪い意味がありまして(^^;、銃夢の英語版出版の話が来たとき、アメリカ出版元のViz(http://www.viz.com/)が「ガリィではイメージが悪いからアリタにしないか」と言って来たのが始まりです。

ウチの先生は「海外には海外の銃夢があっていいんじゃないか」というスタンスで、すぐにOKを出しました。

ちなみに英語版・銃夢のタイトル「バトルエンジェル・アリタ」は
B
attle Angel Alita
と「A」で韻を踏んでいるそうです。また「アリタ」という名前はちょっと東洋人ポイのかも知れませんね。

ちなみに銃夢コミックス9巻のウロボロスの中に登場する「アリタ」は、英語版から「逆拝借」した名前です。

(ツトム@管理人) →質問コーナートップ